エックスモバイルの運営する「もしもシークス」は、異例づくめのMVNOだ。代理店を使った販売モデルや、「iPhone」や「Xperia」の白ロムをセット販売で扱うという大胆な戦略で、話題を振りまいている。ISPやインターネット事業者が多いMVNOの中で、“専業”という立ち位置を貫いているのも、珍しいと言えるだろう。
それだけに“中身”がしっかり見えず、不安も出てくる。運営体制はどうなのか、回線や端末はどのように調達してきているのか――こうした疑問を感じるユーザーも少なくないはずだ。実際、もしもシークスがiPhone・Xperiaの白ロムの取り扱いを発表したことについて、賞賛する声が上がる一方、端末の出どころがはっきりとしないことなどに対する批判の声も少なからず聞こえてくる。
誤解のないように強調しておくと、白ロムの調達は決して違法ではない。エックスモバイル自体が古物商の認可を得ている上に、販売にあたってもその旨は明記されている。ただ、このビジネスモデルには継続性はあるのか、という疑問もわいてくる。
このような批判や疑問の声に、エックスモバイルはどう答えるのか。マレーシア在住中、エアアジアXに影響を受け、モバイル業界の経験がまったくない中でMVNOを立ち上げたという異色の経歴を持つエックスモバイル 代表取締役社長の木野将徳氏。彼を直撃し、話を聞いた。
―― 最初に、MVNOを始めた経緯を教えてください。経歴を拝見すると、パティシエをやられていたり、マレーシアに住んでいたりと、かなり特殊なようにも見えますが……。
木野氏 私は27、8歳のころ、マレーシアに1年間ぐらい住んでいました。その時は胡蝶蘭のショップをやっていて、日本国内に輸出する仕事をしています。マレーシアにはエアアジアXという会社があるのはご存知ですよね。当時はまだ日本に進出していませんでしたが、アジア圏にものすごい勢いで進出していました。当時のマレーシアの平均月収は5万円以下で、エアラインに乗ろうと思ってもなかなか乗れません。ところが、エアアジアXなら、誰でも乗れるわけです。
その様子を見て、トニー・フェルナンデス氏(エアアジアXの創業者)の勉強会や講演にも行きました。僕もチャレンジをしたいと思っていたからです。ただ、何にチャレンジすればいいのか、その時はまだ「これ」というものが見つかっていませんでした。先進国以外はインターネット環境が脆弱で、携帯を持っている人も意外と少ない。低コストで通信を提供すると、たくさんの人が使えるようになります。それが実現すれば社会的意義があることと、漠然とは考えていましたが、具体的な何かがあったわけではありません。私は携帯業界の経験者でもないですし、MVNOという言葉も知りませんでした。
―― その木野さんがMVNOを始めようと思ったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。
木野氏 最大のきっかけになったのが、マレーシアから日本に帰る便の中で、ある通信事業者の執行役員の方が隣に座っていたことです。最初に彼は僕のことをシンガポール人だと思っていたみたいですが(笑)。親切に、日本語のメニューを英語で説明してくれたことが、話し始めるきっかけになりました。彼は当時、前職の携帯電話事業者を辞められた直後で、日本の携帯業界はもっとこうしたらいいということを、僕に語ってくれました。それが、マレーシア生活でボンヤリと考えていたこととマッチしました。
端末は中古で、SIMカードの販売を中心に、インターネットを主に使って――こんなことを、日本に帰る6時間の間でずっと話していました。もちろん、帰国してからもお会いして、一緒にビジネスプランを組み立てていきました。運命のようなものですが、こういう巡り合わせで、今に至っています。
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