「まだ超絶赤字」だけど「撤退します、以上」はありえない――エックスモバイル木野社長MVNOに聞く(3/4 ページ)

» 2015年06月04日 17時00分 公開
[石野純也ITmedia]

日本人もXiaomiやMeizuなどのスマホを持つべき

―― 次に、端末について伺っていきます。海外版の「Xperia Z3 Tablet Compact」を並行輸入したり、ドコモ版のiPhone 6を取り扱い始めたりと、話題を呼んでいます。まず、Xperia Z3 Tablet Compactを販売し始めた理由を教えてください。

木野氏 Xperia Z3 Tablet Compactは、香港で初めて触った時、「これはすばらしい」と思い、それがきっかけで取り扱うことにしました。この軽さで画面も大きく、なおかつ電話もできる。なぜ、日本で売ってないのかと思いました。日本にあるのは、Wi-Fi版だけですからね。

 そこで最初は、欧州のサプライヤーから調達しました。技適を通っているかの確認もして、日本語のマニュアルをつけ、ACアダプターを日本のものに変えて販売しています。全国で通信テストもしてみましたが、特段問題がなかったのでそのまま販売しています。

photo 現在、もしもシークスでは、「iPhone 6/6 Plus」「Xperia Z3 SO-01G」「Xperia Z3 Compact SO-02G」「Xperia Z3 Tablet Compact(香港版)」をSIMとセットで取り扱っている
photophoto Xperia Z3 Tablet Compactを手にする木野氏(写真=左)。もしもシークスでの端末セットは、オリジナルの梱包(こんぽう)箱に丁寧に入れて購入者の手元に届く(写真=右)

―― なるほど、ご自身が興味を持たれたのがきっかけだったんですね。

木野氏 私自身、スマホは500台程度保有しています。何か新しいものが出たら、基本的には買う。そして、それを2年なり3年なり使ったらどうなるかを想定して、販売するものを決めています。他社のMVNOはASUSのZenFoneや、HuaweiのAscend、honorが出て、その中から選択をしていますが、そういう考え方はしていません。ありとあらゆる端末を吟味して、「これはいいな」と思ったものを取り扱います。

 国内外での端末の調査スピードは、圧倒的に当社が勝っていると考えています。Xiaomi(シャオミ)も、話題になる前から私自身がユーザーでしたし、今でも全機種持っています。特に「Mi3」はいいですね。このコストで、この軽さで、このUIですから。

―― ご自身も、相当なスマホ好きですね(笑)。

木野氏 創業する時に、山根さん(香港在住の携帯電話研究家・山根康宏氏)のブログを見て、すぐにアポを取ってみました。そしたら、なんと山根さんが会ってくれるということになったので、即香港に飛びました。その時、最初に見せていただいたのが、Xiaomiのスマホです。山根さんはそのよさを1時間ぐらいずっと語ってるわけですが(笑)、自分でも買ってみて、こんなに違うのかと思いました。

 日本人だとiPhone、Xperia、Galaxyで「以上」、となってしまいますが、世界はそうではありません。すごいのXiaomiだけではなく、ほかにも「Meizu(メイズ)」「OPPO(オッポ)」「Yota(ヨタ)」など、非常にたくさんのメーカーが存在します。これからは、日本人もこういう端末を持つべきだと強く思いました。

 ただ、技適の問題をはじめとする、レギュレーションがあります。これは1つ1つクリアしていかなければなりません。手っ取り早いのはXiaomiなり、Meizuなりと交渉して、技適を取ってもらうことですが、今日明日でそれができるわけではありません。ですから、まずはコツコツとお客様を増やしていき、第2段階、第3段階でキーになる端末を投入したいと思います。ソフトバンクがiPhoneを集中的に販売してきたように、我々もおもしろい端末をぶつける自信があります。

iPhone、Xperiaの取り扱いに“問題”はない?

―― あえて直球の質問をしますが、Xperiaについては、ソニーさんから何かクレームがついたりということはなかったのでしょうか。

木野氏 まったくありません。そもそも、仕入れさせてくれなかったですからね。グループ会社にお伺いは立てていますが、当時は弊社がまだ設立間もないころでしたし、ソニーさんでもSIMフリー版を日本で出す予定がないということで、難しいという結論になりました。ほとんどすべてのメーカーに話を聞きに行っていますが、反応は同じです。私たちの会社の信用がないですし、そもそもMVNO市場をどうすればいいのか分からないメーカーさんもいます。

 その一環で、アップルストアにも相談に行きました。MVNOをやるので、リセラーになりたいとも言いました。そしたら担当の方がものすごくよくしてくれて……。ですから、iPhoneの販売も、アップル側のアグリーは取っています。

―― なんと。そうだったんですか。てっきり、勝手に白ロムを調達してきて売ったのだとばかり……。大胆なことをするなぁと思っていたのですが。

木野氏 さすがにアップルさんと関係が悪くなると、私たちも困ってしまいます。ぜひ扱いたいと言ったら、どうぞとなりました。将来的には、SIMフリー版を扱わせてくださいと常に相談もしています。

―― そのルートがありながら、現状がSIMフリー版ではないのはなぜでしょうか。

木野氏 SIMフリー版を独自ルートで調達して売ることもできましたが、それはさすがに怒られてしまいますので、ドコモ版の白ロムを販売しようということになりました。テストもして、テザリングもできるし問題がないということで、封を開けていないものを集めて販売しています。

 SIMフリー版は、アップルジャパンが直で売っています。我々もご依頼をいただければアップルジャパンに代理店向けの見積もりを取り、こちらにいったん納品してもらって、フィッティングしてから送るということはやっています。この流れを作ってくれたのも、先にご紹介したアップルストアの担当者の方です。

―― iPhone、Xperiaと反響は大きそうですが、実際、売れ行きにはつながっているのでしょうか。

木野氏 つながっています。iPhoneは割賦(分割払い)ができず、それなりの金額になるのでたくさん出ているわけではありませんが、安定しています。よく出るのがXperia Z3 Compactで、これは週に3ケタは売れています。

 Xperia Z3 Tablet Compactもよく出ていて、週に2ケタは出ています。以前買ったお客様の追加も多いですね。あとよく出るのがルーターです。

―― そのXperia Z3 Compactや先ほどのiPhoneは、ドコモ版の白ロムです。在庫が安定して持てないという心配はないのでしょうか。

木野氏 端末は、当社独自の調達ルートから仕入れています。在庫に関しては、当面は大丈夫ですね。

―― その独自ルートをもう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

木野氏  日本国内に10数カ所の買取屋があり、そことネットワークを組んで在庫状況を常に把握しています。品切れになっても問題なく調達できるよう、環境を整備してきました。そこからドコモ版の白ロムで、新品だけを買うようにしています。

―― なるほど。つまり、いわゆる新古品を調達しているということですね。ただ、白ロムだと市場に出回っている総数は限られています。それが切れる心配はないのでしょうか。

木野氏 いずれはあると思います。ただ、それだけの成長力と販売力がついているならば、そここそが海外メーカーの端末を独自に調達できるタイミングです。月間の純増が1万まで持ってこれれば5万台なりの数字をコミットできますからね。

―― つまり、白ロムはそれまでのつなぎということですね。

木野氏 はい。これからは、中古スマホにも力を入れていきたいと考えています。iPhone、Galaxy、Xperiaを中心にして、自社で修理して、バッテリーやモニターを交換したものを、整備品として売ることも検討しています。

 また、ソフトバンクのiPhoneを持ってきてもらったらドコモのiPhoneに交換するという下取りプログラムのようなものも、今考えています。

―― そ、それは……(笑)。

木野氏 興味はあって、値段が安くなることが分かっていても、いろいろな壁があります。それを1つ1つ崩していきたいと思います。

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