―― 昨年10月に開業されていますが、何を売りにしたMVNOにしようと考えていたのでしょうか。
木野氏 MVNOがすでにたくさんあった中で、最初は特に特徴もありませんでした。開業するだけで必死でしたからね。そもそも、SIMカードが仕入れられない、端末もない。設立1年目の会社だったので、ほとんどの会社に取引を断られました。これは困った、ということで、総務省にも相談に行っています。このままSIMを仕入れられないと詐欺師になってしまうと思って必死になりました。
―― 開業間もないころから、「ドン・キホーテ」や「サークルKサンクス」など、大手企業の店舗で「もしもシークス」のプリペイドSIMカードが取り扱われています。何か特別な経緯があったのでしょうか。
木野氏 これは本当に巡り合わせですね。ドン・キホーテさんは、創業したてのころに専務にお会いしていて、開業のあかつきには、ぜひ販売してください、とお願いしていました。サークルKサンクスについては、叔父が勤めていて、親戚の7回忌で会ったときに「置いてみないか」と言ったら興味を持ったのがきっかけです。
―― 本当に偶然なんですね(笑)。
木野氏 ただ、プリペイドSIMも結構な数を出してきましたが、このままでは厳しいと思います。引き合い自体はかなりいただくのですが……。航空会社や旅行代理店などから(プリペイドSIM取り扱いの)お声がけはいただくのですが、今は(厳しい)状況をお伝えして、ルーターのレンタルを逆提案している状況です。
―― 厳しいというのは、収益的な話でしょうか。
木野氏 日本の周波数が、海外の端末の周波数と異なることが多いからです。そこでクレームが店舗に届いてしまうのですが、対応が難しい。ドン・キホーテで売ったとしても、ほとんど対応できないですから。こちらにコールを飛ばしてもらったりということはしましたが、やはりクレームは一定数出てしまいます。わずか数百円の利益を考えると、ちょっと厳しいですね。
―― ということは、今は契約者のほとんどがポストペイドということになりますね。
木野氏 はい。99%がポストペイドです。端末の付帯が70%ぐらいですね。
―― 端末のセット率が高いですね。それは、「iPhone」や「Xperia」を取り扱ったからでしょうか。
木野氏 それ以前から付帯率は高かったですね。我々は代理店制度を敷いていて、それが約520社あります。その人たちがお客様に、(もしもシークスに)切り替えるとこうなるという提案をしてくれます。客層が、自分でSIMカードを差し替える人ではなく、一般層なんですね。
―― 代理店が520社というのも、すごい数ですね。開業間もない中で、どう開拓したのでしょうか。
木野氏 開業前から開拓してきました。いわゆる携帯電話の販売店が1割弱で、あとは地元で事業をやっている不動産関連や、葬儀屋、太陽光発電の会社など、さまざまです。うどん屋、バス会社、タクシー会社、学校と、ありとあらゆる業種があります。あとは携帯電話の買取をやっているところや、インターネット関連の会社ですね。
別の本業がある代理店さんは新規事業の一環としてやってくださっていますし、すでに携帯の販売をしているところは、MVNOがこれから大きくなると思い始めているようです。募集をかけた時は、まだ事業自体が始まっていなかったので、これからこういうことをすると言って代理店を募っていきました。
―― 営業力がすごいですね。
木野氏 人にも恵まれていると思います。
代理店は、今後も増やしていく方針です。店舗そのものも増やしていきます。今は3つのカテゴリーがあり、1つが当社の直営店で、これが博多、久留米、鳥栖、宮崎、佐賀にあります。もう1つがうちの専売店、あとはサテライトショップです。サテライトショップは、フランチャイズをやっている本部と協業して、例えば、携帯電話の修理屋さんの半分がうちのショップという形ですね。修理をして、そのままSIMカードも買えるわけです。
店舗はまもなく100箇所程度になりますが、北海道から沖縄まで網羅していきたいと思います。お店がある安心感は、この商材には必須だと思います。段階的に、こうしたお店にも「ALADIN(アラジン)」(ドコモの契約を行う端末のことで、MVNOにも貸与されている)を入れて、即日対応ができるようにもしていきたいと思っています。
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