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» 2016年04月28日 22時30分 UPDATE

「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線:世界で失速するWindows 10 Mobile、日本市場の「熱気」は伝わるか

Windows 10 Mobile市場をリードするべきMicrosoftの「Lumia」シリーズが苦戦中。米国では最上位機種を購入するともう1台もらえるという前代未聞のキャンペーンも始まった。

[山口健太,ITmedia]

 4月に入り、米国を中心にWindows 10 Mobileの現状について厳しい報道が続いた。Microsoftの決算発表では直近の四半期における端末出荷台数が230万台にとどまり、最上位機種「Lumia 950 XL」を購入すると「Lumia 950」が無料でもらえるという前代未聞のキャンペーンが話題を呼んでいる。

 一方、日本国内では現時点で最高スペックを誇る「VAIO Phone Biz」が発売。携帯電話業界において、Windows 10 Mobileは台風の目とまではいかないまでも一定の存在感を示している。

 こうして国内メーカー各社が奮闘する中で、海外市場との温度差が広がっている点は気掛かりだ。

Lumiaシリーズの出荷台数は2012年初頭の水準に

 Microsoftが4月21日に発表した2016年1〜3月期決算では、Lumiaシリーズの販売台数が230万台にとどまり、前年同期比で73%減という結果に終わった。

 Microsoftは2015年からLumiaシリーズの製品ラインを大きく絞り込んでおり、2016年2月のMobile World Congress(スペイン・バルセロナ)でもローエンドに近い「Lumia 650」を発表したのみ。販売台数の減少は想定の範囲内といえる。

「Lumia 650」 Lumiaシリーズの最新機種「Lumia 650」(CeBIT 2016会場にて)

 だが230万台という数字は、MicrosoftがNokiaの携帯電話事業を買収した2014年4月以来、最低の記録だ。さらに過去をさかのぼれば、初代「Lumia 800」を発表したNokiaが、本格的にWindows Phone市場に打って出た2012年1〜3月期の規模(220万台)に近い。

 くしくもそのNokiaは、従業員の多くが入れ替わるという劇的な変化を乗り越えながら体勢を立て直しており、4月26日にはスマートウォッチなどのウェアラブル端末で知られるWithingsを1億7000万ユーロで買収すると発表。Lumiaシリーズとは対照的に、着実な復活を遂げつつある。

ハイエンドLumiaの「在庫処分」が始まる

 海外のWindows 10 Mobileは、Microsoft製品が市場の大半を占めている。つまりLumiaシリーズの苦境は、そのままWindows 10 Mobileの行き詰まりを意味しているといえる。

 開発者向けカンファレンス「Build 2016」では、Windows Phone 7を世に送り出した立役者であるテリー・マイヤーソン氏自ら、「多くのユーザーにリーチしたいなら、Windows Phoneは最適な選択肢とはいえない」とコメント。マイクロソフト自身、iOS、Androidへの対応を進めながらクラウドを中心に大きく戦略を転換した。

海外のWindows 10 Mobile市場はMicrosoftがほとんどを占める 海外のWindows 10 MobileはMicrosoft製品がほとんどを占める

 そんな中、米国やカナダのMicrosoft Storeでは「Free Lumia 950」と称し、649ドルのLumia 950 XLを購入すると549ドルのLumia 950が無料でもらえるという、深夜の通販番組のようなキャンペーンが始まった。

前代未聞のキャンペーン Lumia 950 XLを買うと950がもらえる。前代未聞のキャンペーンだ

 販売好調なSurfaceシリーズの場合、新モデルの発表前に現行モデルを値引きすることは珍しくない。だが先の決算発表の議事録では、Lumiaシリーズの出荷が伸び悩んだことで、流通在庫が相対的に増加したことが明らかになっており、積み上がった在庫の調整に追われている可能性が高い。

 無料で配るほどLumiaが余っているのなら、日本市場に回してくれてもいいのではないか、とも思えてくるほどだ。だが日本でも、新端末の発売は続いている。4月22日にはVAIO Phone Bizが、そして4月下旬には新たに参入を表明したコヴィアの端末「BREEZ X5」が発売される。いずれもNTTドコモの相互接続性試験(IOT)に合格するなど、既存製品とは一線を画しているのが特徴だ。

法人向けWindows 10 Mobileは日本が世界に先行か

 海外と異なり、日本市場でWindows 10 Mobileを発売する各メーカーは、法人向けに主眼を置いている。VAIO Phone Bizも、「Biz」という名前の通り、法人ユーザーや個人事業主によるビジネス利用を想定した端末だ。

「VAIO Phone Biz」 4月22日に国内でも発売された「VAIO Phone Biz」

 Windows 10 Mobileには個人向けのアプリやゲームが少ないこともあり、VAIO Phone Bizを個人で購入してもあまり面白くないかもしれない。純粋に個人で使うなら、Androidを搭載した前モデルの「VAIO Phone VA-10J」のほうが便利な場面が多いはずだ。

 だが、ビジネスユーザーの多くは業務に必要な機能だけを求める傾向にある。電車の乗り換え検索のように、仕事中に使える一般向けアプリの需要はあるものの、余計な機能やアプリはむしろ少ないほうが喜ばれるとの声が多い。

 さらに4月26日には、日本国内のMDM(モバイル端末管理)市場で最大シェアを誇る「CLOMO MDM」がWindows 10 Mobileの正式対応を発表、国内端末メーカー各社も一斉に協業を表明した。

CLOMO MDMがWindows 10 Mobileに正式対応 CLOMO MDMがWindows 10 Mobileに正式対応(写真は2015年10月にCLOMO MDMがWindows 10に対応した際の発表会のもの)

 モバイル端末管理は、法人ユーザーのスマートフォン導入の鍵になる部分だ。ここが大きく進展したことで、法人向けのWindows 10 Mobile展開において、日本は世界に先行することになりそうだ。

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