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» 2016年06月22日 17時48分 UPDATE

Pepperが次期社長になる可能性も?――孫正義氏が社長続投を決めた理由

「さらに毛が抜けた」と孫氏が言うほど悩んだ社長続投。次期社長の最有力候補だったニケシュ・アローラ氏には「申し訳ない」と話したという。当初は60歳までと考えていたソフトバンクグループ社長の続投を決めた理由とは――。

[田中聡,ITmedia]

 ソフトバンクグループのニケシュ・アローラ副社長が電撃退任することが6月21日に発表された。同社では、孫正義氏が引き続き社長として指揮を執っていく。孫氏自らがアローラ氏を「後継者候補」に指名していたが、これが白紙になった格好だ。6月22日に開催された株主総会で、孫氏がその経緯と理由を語った。

孫正義 ソフトバンクグループの孫正義社長

ニケシュには本当に申し訳ないと思っている

 孫氏はもともと、60歳の時点で社長を退いて後継者に譲るつもりだった。実際、孫氏が55歳の時にアローラ氏に出会い、「あと4〜5年で彼にバトンを渡すつもりでいた」という。「シリコンバレーの起業家は30代が多く、60歳といったら化石のような年寄り。僕のような、近々60になろうかという人がソフトバンクの社長をいつまでもやっていたら、(成長を阻害する)ボトルネックになってしまう。そうなって老害だと言われる前に、バトンを早く渡さないといけないと思った」と振り返る。

 「だけど、あと1年になって、ちょっと待てよと。おれは十分枯れたかな? と考えると、欲が出てきて……。もう少し社長を続けていきたい」と思うに至った。しかしアローラ氏が次期社長候補だと大々的に宣言していただけに、「ニケシュには『申し訳ない』と話した」という。孫氏はあくまで自身の心変わりがアローラ氏退任の直接的な原因であることを強調した。

 社長を続投すべきかは本当に悩んだようで、「さらに毛が抜けた」と孫氏は苦笑いする。「彼(アローラ氏)が一番の被害者。本当に申し訳ないと思っている」と苦しい胸の内を明かした。「(アローラ氏が)高給すぎるという声をいただいているが、彼がGoogleにそのままいれば、ソフトバンクと同じくらいの報酬をもらっていた。彼の人生を賭けて(ソフトバンクに)来てくれた。彼には絶対そうだ(社長にする)という確約はしていなかったが、心からそう(社長にしたいと)思っていた」(孫氏)

 株主総会にはアローラ氏も出席し、これまでの業務を振り返りつつ、孫氏への思いを語った。「2年前にソフトバンクグループとして再編成し、事業会社や投資会社を設立した。その中で人材採用や投資をして、成長できた。孫社長は若い創業者と会う中で若返ったと感じている。これから5年10年、孫社長がソフトバンクグループを率いるということで、情熱とエネルギーを取り戻したと感じている。孫社長の決断を尊重し、十分にサポートもさせていただきたい」

ニケシュ・アローラ ニケシュ・アローラ氏

孫氏は99歳まで社長を続ける?

 現在、孫氏は後継者に譲る時期を「60代」と定め、遅くとも69歳までには社長を交代する意向があることを明かした。これに対して、株主からは「後継者は人類の中にはいないと思っている。99歳までやってほしい。後継者はロボットの可能性が高いと宣言してもらえると、株価が上がるのでは?」との指摘が挙がった。孫氏は「99歳までという声は一部で挙がっているが、僕が老害になってもいけないので、十分見極めながら、最低5年、恐らく10年近くは、社長のまま行きたいのが今回の決意」と答えた。

 孫氏は、ソフトバンクグループ社外取締役の柳井正氏と永守重信氏に、今回の件を相談したという。柳井氏は「孫さんみたいな人はいない。60にもなっていないのに引退? 冗談じゃないぞと申し上げた」とコメント。永守氏は「年齢の話ばかり出ているが、私は古希(70歳)を迎えた。人の経営意欲は年齢ではない。孫さんが60になったら出る(退任する)とか、血迷っているのではないかと思った。(孫氏は)最初からやめないと思っていた。69までと言っているが、69になったら、また10年やる。孫さんの言うことはウソだから、あまり信用しない方がいい」と話して会場を沸かせた。

人工知能が人間を超える時代がやってくる

 孫氏がここまで現役にこだわる大きな理由は、人工知能が人間の能力を超える技術的特異点、「シンギュラリティ」が近い将来起こり、ソフトバンクグループとしてこの分野のビジネスに深く関わっていきたいと考えているため。孫氏は「人工知能の知識は既に人間を超えているが、知恵の部分でも、人類をはるかに超える時期が目の前に来ている」と語る。

 2018年頃には、トランジスタの数が人間の脳細胞を超えると孫氏は予測し、人間の平均IQ100に対して、人工知能は1万ものIQを持つようになるという。このトランジスタが搭載された「超スマートロボット」が誕生し、2040年には人類の数を超えると孫氏は予測する。人工知能という点ではまだ発展途上にある人型ロボット「Pepper」が、人間を超えた頭脳を持つ日が来るのかもしれない。

 同じくIoT(モノのインターネット)も進化し、2040年には1人当たり1000台のデバイスがインターネットにつながると孫氏は予測する。

 「人工知能(AI)」「スマートロボット」「IoT」の3つがシンギュラリティの中核を成し、「体験したことのないようなパラダイムシフトが起こる」と孫氏は興奮気味に話す。例えば人間とロボットが共存する世界、言葉の壁がない世界、未来を予測できる世界、交通事故のない世界など。こうした情報革命によって、「人間の平均寿命があと300年で200歳になる時代がやってくる」(孫氏)という。

ソフトバンク トランジスタの数は2018年頃に人間の脳細胞を超える
ソフトバンク スマートロボットの数は2040年に地球上の全人口を超える
ソフトバンク あらゆるデバイスがインターネットにつながるようになる

 一方で、人間より優れたロボット(人工知能)が増えると、ロボットに人間が支配されてしまう……という懸念も生まれる。孫氏も「一歩間違えると人類の破滅になる」と認識はしているが、「人間は知性だけでなく理性もある。そして愛情が深まるほど人に優しくなり、調和をする社会性もある。こうしたことは教育や経験で得られる。悪い知性を持った一部の人工知能と、よい知性と理性を持った人工知能が戦い、人間と調和する方向に動いてくれると信じている。そのために、われわれが最大の努力をしないといけない」と語った。

 「Pepperが正しい経営判断をするようになったら、アクセルを踏むのかブレーキを踏むのか?」という株主からの質問には、「Pepperは将来、経営判断の支援をする仲間として進化していくと思うし、そのように彼らを使っていきたい。彼らともよく相談をしながら、一緒に寄り添いながら、判断をしていく」と答え、あくまで「主」は人間であることを強調した。

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