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» 2016年06月29日 22時30分 UPDATE

「モバイル・ファースト」時代のWindows最前線:「Atom」開発中止、デスクトップアプリも動く「Windows 10スマホ」の夢は消えるのか?

Intelのモバイル向けプロセッサ「Atom」が開発中止になると報じられた。多数のWindowsタブレットに採用されてきただけに、その影響は大きい。そして「フル機能のWindows 10搭載スマホ」の夢は消えるのだろうか。

[山口健太,ITmedia]

 2016年4月、Intelの戦略転換により、モバイル向けプロセッサ「Atom」が開発中止になると報じられた。AtomはWindowsタブレットにも多数採用されてきたことから、新たなモデルが登場しないとなれば、その影響は大きい。

 今回はその中でも、ダークホース的な存在として期待されてきた「フル機能のWindows 10搭載スマートフォン」について考えてみたい。

技術的に実現可能性が高まってきた「Windows 10スマホ」

 今現在、“Windowsスマホ”といえば、「Windows Phone」や「Windows 10 Mobile」を指すのが一般的だ。だが、ここで取り上げるのはそれらのモバイル向けプラットフォームではなく、フル機能のWindowsを搭載したスマートフォンのことだ。

 そうした製品の数は非常に少ないとはいえ、まったくゼロではない。例えば、NTTドコモが2011年に発売した富士通製の「Windows 7ケータイ F-07C」を思い出す人もいるだろう。その富士通は、2015年の富士通フォーラムでWindows 8.1を搭載した5.54型の小型タブレットを参考出展し、後継モデルとして期待されたこともあった。

「Windows 7 ケータイ F-07C」 ○Windows Phone 7.5搭載スマホ「IS12T」直前に富士通が発売した「Windows 7 ケータイ F-07C」

 スマートフォンではないものの、中国のARMdevices.netが5型ディスプレイを搭載したWindows 10とAndroidのデュアルブート小型PC「GOLE1」の開発を表明し、クラウドファンディングサイト「Indiegogo」で出資を募っている。

5型ディスプレイのWindows 10/Androidデュアルブート小型PC「GOLE1」 5型ディスプレイのWindows 10/Androidデュアルブート小型PC「GOLE1」

 これらのデバイスに共通した特徴は、CPUにx86アーキテクチャのAtomプロセッサを搭載し、PC向けのWindowsが動作する点にある。これによりWindowsのデスクトップアプリや、Windows用の周辺機器を利用できることが大きなメリットだ。

 確かに2011年のF-07Cでは、フル機能のWindowsをスマホに搭載すべく、かなり無理をしている印象があった。だが最近ではスティック型PCのように、デバイスは飛躍的に小型化している。スマホサイズの実用的なWindows PCは、技術的には十分に実現可能になりつつある。

COMPUTEX 2016にはハンドヘルド端末も

 MicrosoftによるWindows 10の動作要件はどうだろうか。現時点では、PCやタブレット向けのWindows 10デバイスは7型以上の画面が要求されており、これを順守するならばWindowsスマホの実現は難しい。

 一方、台北で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2016の会場には、フル機能のWindows 10を用いた5型サイズのハンドヘルド端末が展示されていた。説明員によれば組み込み向けのWindows 10 IoT Enterpriseを利用しており、通常のWindows 10とは要件が異なるという。

「Arbor GT-500IW」 業務用のハンドヘルド端末「Arbor GT-500IW」
「Arbor GT-500IW」はWindowsのデスクトップアプリが動作する(写真はWindows標準のメモ帳が動作中) 「Arbor GT-500IW」はWindowsのデスクトップアプリが動作する(写真はWindows標準のメモ帳が動作中)

 CPUは「Atom x5-Z8300」、メモリは2GB、ストレージは32GBを搭載する。PC向けのWindows 10とはユーザーインタフェースがやや異なり、小型画面用にカスタマイズされていたものの、Windows向けのデスクトップアプリがしっかり動作することが確認できた。

 スマートフォンとしての使用感は、確かに苦しいものがある。Windowsのソフトは5型画面で使うことを想定して作られておらず、指先でメニューを操作することも難しい。ユニバーサル Windows プラットフォーム(UWP)アプリなら小型画面でも快適だが、それならもともとスマホ向けのWindows 10 Mobileと変わらないことになる。

 だが、画面の内容をPC用のディスプレイに出力できれば、話は変わってくる。キーボードやマウスを組み合わせ、Windows 10 Mobileにおける「Continuum for Phones」のスタイルで使う場合には、PCと同じデスクトップアプリが動作するという利点が生きてくる。

 そのために必要なのが省電力のx86プロセッサだが、Atomの将来性には暗雲が立ちこめてきた。だが、少なくとも現行世代のAtomはしばらく供給が続くとみられている。またインテルは、既にスティック型PCに「Core M」プロセッサを搭載しており、将来的には「Core M搭載スマホ」も不可能とはいえない。

 スマートフォンとしてはUWPアプリを使いつつ、ディスプレイにつないだ瞬間、フル機能のPCに早変わりする。この理想的なシナリオを実現する「Windows 10スマホ」の夢を諦めてしまうのは、まだ早そうだ。

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