任天堂のコンテンツ力を見せつけたiPhone 7/Apple Watch Series 2発表会

» 2016年09月08日 17時30分 公開
[前橋豪ITmedia]

 米Appleのスペシャルイベントに任天堂の宮本茂氏が登壇し、日本語でiOS向けのスーパーマリオ「SUPER MARIO RUN」を発表――こんな光景を誰が思い浮かべただろうか。ゲストの宮本氏が現れた瞬間、今回のイベントで最大級の拍手が沸き起こった。

宮本茂氏 Appleのイベントに登壇した「マリオの生みの親」である宮本茂氏
SUPER MARIO RUN 「SUPER MARIO RUN」は2016年12月にiPhoneとiPad向けアプリとして配信される。片手で遊べるのが特徴で、宮本氏は「電車でつり革につかまったまま、ハンバーガーやリンゴを食べながらプレイできる」と紹介

 もう1つのサプライズは、Nianticのジョン・ハンケCEOが登壇し、「Pokemon GO」(以下、ポケモンGO)のApple Watch対応を発表したことだ。ポケモンGOを開発するNianticは、Googleの社内スタートアップから生まれ、Googleから独立したとはいえ資金提供を受けている関係にある。まさか、GoogleのAndroid Wearより先に、競合するApple Watchのサポートを高らかにうたうとは驚きだ。

Niantic Nianticのジョン・ハンケCEOも登壇
Pokemon GO 「Pokemon GO」がApple Watchでプレイ可能になる。こちらは年内のリリース予定だ

 今回のイベントをライブストリーミングで視聴していて、発表前のリーク情報に食傷気味で実際ほぼその通りだった「iPhone 7/7 Plus」や「Apple Watch Series 2」の発表より、SUPER MARIO RUNやPokemon GOに興奮したという方は少なくないのではないか。

 Appleの厳重な情報管理体制をもってしても、新型iPhone発表前の情報漏れを防ぐことはできていない。昨今はかなり信頼性の高いリークがさまざまな情報提供元からもたらされ、製品発表会は「ウワサ話の答え合わせの場」といった気持ちで眺めている方も多いはず。実際、iPhone 7のイヤフォンジャック廃止、防水対応、ブラックの新色、国内FeliCa対応、Apple Watchのモデルチェンジといった情報は、発表前から何度も報じられてきた。

 もちろん、正式に発表されたiPhone 7/7 Plus、Apple Watch Series 2は想定内の製品だったとしても、実物を見ると物欲に訴えかけてくるものがあり、実用面で(イヤフォンジャック廃止は賛否両論だろうが)着実な進化が見られるアップデートだったと言える。特に待望の防水機能や、日本向けモデルで提供されるFeliCa/Suica対応は製品の魅力を大きく高めており、光沢黒のジェットブラックは男性中心に人気を博しそうだ。

iPhone 7 iPhone 7は防水に対応
Apple Watch Series 2 Apple Watch Series 2

 しかし、多くのオーディエンスがAppleの発表に期待している「驚き」という点では、SUPER MARIO RUNとポケモンGOのApple Watch対応が目立っていたことは間違いない。実際、この発表直後にニューヨーク株式市場で任天堂の米国預託証券(ADR)が急騰し、マリオの世界的な影響力を見せつけた。

 デジタルデバイスは、いくらハードウェアが素晴らしくても、そこで動かすソフトウェアと両軸で前進させなければ失敗作となってしまう。その点、iPhoneとiOSはハードウェアとソフトウェアの見事な融合、強力なエコシステムの構築でスマートフォン市場を切り開き、Appleを今日の成功に導いてきた。

 そんなAppleのティム・クックCEOも今回、「App Storeは50万ものゲームアプリを抱える最大のゲームプラットフォームだが、あらゆる世代が楽しむゲームとして、マリオが欠けていた」とコメントして、マリオのiOS参入を歓迎した。

 任天堂が誇る強力なIP(知的財産)のマリオとポケモンは、自社でゲームのキラーコンテンツを持たないAppleにとって特別な価値を持つと言っても過言ではない。iPhoneとApple Watchの幅広いユーザー層への浸透においても、任天堂のコンテンツパワーは追い風になるだろう。

 スマホブームを静観してきた任天堂がいよいよ本腰を入れ始め、その底力をあらためて思い知らされた発表会だった。

ティム・クックCEO マリオを歓迎するコメントを寄せたAppleのティム・クックCEO

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