「VAIO type P」VistaモデルはXP化でどれだけ速くなるのか?XPダウングレード続報(2/3 ページ)

» 2009年06月12日 11時45分 公開
[前橋豪,ITmedia]

XPダウングレードによるパフォーマンスの変化

 では、スペックやOSの違いで性能にどれだけ差が出るのか、各種テストを実施してチェックしていこう。各テストは最低でも5回以上は行い、異常な数値が出た場合はそれを排除したうえで平均値を採用している。

 テスト時はPC本体をACアダプタに接続し、CPUパフォーマンスが低下しないように設定している。省電力の設定などは特に変更していないが、Vista環境ではWindowsサイドバーと、システムに負荷がかかるVAIOコンテンツ解析機能をオフにした。各OSのコンディションは、6月3日時点で優先度の高い更新プログラムをすべて適用した状態だ。

 なお、VAIO type Pのパフォーマンスは過去にも複数のモデルで検証している。以下の記事も併せてチェックしてほしい。

・総合ベンチマークテストの結果

 最初はおなじみの総合ベンチマークテスト、PCMark05とCrystalMark 2004R3(ひよひよ氏作)を走らせて、システム全体のパフォーマンスを調べた。XPの環境ではPCMark05のGraphicsスコアと総合スコアが算出されていないが、これはIntel SCH US15Wに統合されたIntel GMA 500のXP用ドライバの3D描画処理に難があるためで、VAIO type Pに限った問題ではない。

 なお、XP環境では同様の理由で3Dグラフィックステストの3DMark05と、ゲームベンチマークテストのFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3も正常に実行できなかったため、これらのテスト結果は掲載していない。

左がPCMark05の結果、右がCrystalMark 2004R3の結果

 テスト結果は、XP環境のほうがやや高い値が出た。同じテストプログラムを実行してもOSの仕組みが違う(上記のようにドライバの完成度も違う)ため、厳密に同条件の横並び比較とはいえず、結果は参考程度に見てほしいが、ほぼすべてのテスト項目でXP環境がVista環境のスコアを少しずつ上回っている。特にCrystalMark 2004R3のスコアでは、OSの内部構造の違いもありGDIのテストでXP環境がVista環境に差を付けた。

 とはいえ、XP化にともなう劇的なスコアの向上は見られず、ハードウェアスペックの差を覆すようなことはない。直販モデルのVGN-P90HSは、CPUとSSDのパフォーマンスを存分に発揮しており、店頭モデルのVGN-P70H/Rに大きく勝った。

・データストレージテストの結果

 上記のテストで差が開いたSSDとHDDのパフォーマンスをより詳しく調べるため、PCMark05のHDD関連テストとCrystalDiskMark 2.2(ひよひよ氏作)の結果も見ていこう。

 PCMark05のHDD関連テストは、XP Startup(Windows XPの起動をトレース/データのリードが中心)、Application Loading(アプリケーション6種類の起動をトレース/リードが中心)、General Usage(WordやIEなど標準的なアプリケーションの使用をトレース/リード60%、ライト40%)、Virus Scan(600Mバイトのウイルススキャン/データのリードが中心)、File Write(680Mバイトのファイル書き込み/ライト100%)の5つだ。CrystalDiskMark 2.2は、シーケンシャル/ランダムのリード/ライト性能を計測できる。

左から、PCMark05のHDD関連テスト、CrystalDiskMark 2.2のリード/ライトの結果

 結果は予想通り、VGN-P90HSの128GバイトSSDがVGN-P70H/Rの60GバイトSSDを圧倒した。CrystalDiskMark 2.2のライトテストでは、SSDでVista環境が勝る場面も見られたが、多くの項目でXP環境のスコアのほうがよい結果となっている。

・Windowsのレスポンス、ファイルコピーの速度

 ソフトウェアによるベンチマークテストでは、Vista環境とXP環境でそれほど大きな差は見られなかったが、実際にVAIO type Pを操作した場合のレスポンスはどうだろうか。各種動作にかかる時間をストップウォッチで計測した。テスト内容は大きく分けて2つだ。1つはWindowsやインスタントモードの起動/終了にかかる時間、もう1つはファイルのコピー/圧縮/展開にかかる時間を比較している。

 起動と終了について計測したのは、Windowsの起動、休止状態への移行と復帰、スリープ(スタンバイ)への移行と復帰、シャットダウン、インスタントモードの起動と終了の各動作に要する時間だ。

 Windowsの起動時間は電源ボタンを押してから「ようこそ」画面が出るまでの時間と、XPの場合はタスクトレイに全アイコンが並んでポインターの砂時計表示が消えるまで、Vistaの場合はウェルカムセンターが起動するまでの2段階で計測している。Vistaはウェルカムセンター起動後にタスクトレイの全アイコンが並ぶまで、数分かかるのだが、その間もユーザーによる操作は行えるため、目安としてウェルカムセンターの起動までの時間とした。

 インスタントモードの起動時間は本体のボタンを押してからメニューが完全に表示され、ユーザーの操作が可能になるまでを計測した。ちなみに、ソニーが配布するXP用ソフトウェアを使ってXP化すると、インスタントモードは起動できなくなるが、サポートページから「インスタントモードVer.2.0.2」アップデートプログラムを導入することで、再び利用可能になる。

 ファイルのコピー/圧縮/展開については、内蔵HDD/SSD上でのコピー/圧縮/展開に加えて、USBメモリやSDCHメモリーカードとのデータのやり取りにかかる時間も計測した。テストには、1010万画素のデジカメで撮影した50枚/合計約240Mバイトの写真ファイル(グラフ中の1番)、1つで約350Mバイトのexeファイル(2番)を用いた。テストに使ったUSBメモリは「Lumitas M 4Gバイト」(ハギワラシスコム)、SDHCメモリーカードはClass 6の「16GバイトSDHCカード TS16GSDHC6」(トランセンドジャパン)だ。

 なお、XPではファイルコピーが実際に完了する前にOS上のダイアログが消えるため、計測時間はHDD/SDD、USBメモリ、SDHCメモリーカードの各アクセスランプが消灯するまでとした。また各テストを1回終了するごとに、OSは再起動して計測し直している。

左がWindowsの各種動作とインスタントモードの起動/終了時間を計測した結果、右がファイルコピー/圧縮/展開の時間を計測した結果

 まずはWindows/インスタントモードの開始と終了にかかる時間だが、OSや常駐するアプリケーションの違いもあり、ほとんどの項目でXP環境のほうが高速だった。Vistaはスリープへの移行と復帰が高速に行えるのが特徴で、この点ではXPをわずかに上回ったが、測定誤差程度の差しかない。一方、Windowsに依存しないインスタントモードの起動と終了に関しては、OSの入れ替えによってスコアの差は見られなかった。高スペックな構成では、各動作時間が短縮されているのも分かる。

 興味深いのは、低スペックなVGN-P70H/RをXP化することで、高スペックなVGN-P90HSのVista環境より好結果を得られたことだ。Vista環境ではセキュリティ対策ソフトの「マカフィー・PCセキュリティセンター」をはじめ、シンプルなXP環境より多くのアプリケーションやサービスが起動時に立ち上がることもあり、起動や終了にはどうしても時間がかかってしまう。

 Vista環境でも不要なアプリケーションの常駐を切ったり、サービスをオフにするなどの設定変更で改善は望めるが、それでもXP環境との差は大きい。何より、こうした高速化のカスタマイズをせずとも、XP環境ならば軽快に各種動作が行えるのがポイントだ(ただし、Vistaでは何度も利用したアプリケーションの起動を高速化する機能などもあり、使い方によってはVistaが高速な場面もあるだろう)。

 次にファイルコピー/圧縮/解凍にかかった時間だが、こちらも全体的にXP環境が優勢だった。SDHCメモリーカードからHDD/SSDへのコピーは、Vista環境のほうが少し高速な結果となったが、それ以外はXP化により動作時間が短縮している。ハードウェアスペックの違いで見ると、ローカルディスク上でのファイルコピーはさすがにSSDが高速だが、USBメモリやSDHCメモリーカードとのファイルのやり取りではボトルネックが生じ、大差は付いていない。

 なお、今回テストした限りでは、VistaをSP1からSP2にアップグレードすることで、USBメモリやSDHCメモリーカードとのファイルのやり取りが5〜10秒程度高速化することもあった(値はあまり安定しなかったが)。そのほかのテスト結果は、測定誤差の範囲内と考えられる程度の差しか発生しなかったため、上記のグラフにVista(SP2)でのスコアは含めていない。

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