MSIは、北京で行われたオーバークロック大会「Master Overclocking Arena 2009」の参加者に対して、同社が開発している独自技術を紹介するレクチャーセッションを行った。そこで取り上げられた中から、ここでは、マザーボード向けオーバークロック機能を紹介しよう(MSIが行ったオーバークロック大会についてはMSIのオーバークロック世界大会で“水没PC”とスリリングなゲームに酔うを参照のこと)。
最初に紹介されたのは、間もなく登場するといわれているインテルのLynnfield向けチップセット「Intel P55 Express」搭載マザーボードに実装される「OC Genie」だ。この機能については2009年6月に行われたCOMPUTEX TAIPEI 2009でもMSIブースで説明があったが、より詳しい説明が行われた(COMPUTEX TAIPEI 2009であったOC Genieの解説については種類が増えた「P55マザー」は遊び心で勝負──MSIブースPCパーツ編に詳しい)。
MSIは、以前からオーバークロッカーを喜ばせるクロックアップ機能をマザーボードに実装している。その1つに、FSBをユーザーが設定できるオンボードスイッチがあるが、第1世代のジャンパピンによる切り替えから、第2世代のディップスイッチ、そして、最新の第3世代ではジョグダイヤルによる設定ができるなど、より使いやすい方向に進化している。OC Genieは、これらのクロックアップ機能の第4世代として位置付けられているが、その機能はFSBのクロックアップだけにはとどまらない。OC Genieでは、CPUのベースクロック以外に、CPUとメモリのクロック比、メモリのタイミング、CPUとメモリの駆動電圧など、多岐にわたる設定が自動で行われる。
使い方が簡単で、“安全”なのもOC Genieの特徴だ。OC Genieによるオーバークロック設定を利用したいユーザーは、オンボードに用意された“OC Genie”ボタンを押してから、やはり、オンボードに用意された電源ボタンを押す。すると、システムは起動時にCPUやメモリなどにチューニングシークエンスを実行しながら動作可能なクロックアップ設定を「試行錯誤」でチェックしていき、それぞれの動作クロックや駆動電圧を設定していく。
COMPUTEX TAIPEI 2009でMSIは、OC Genieのメリットとして、ワンアクションで行える使いやすさと、動作可能な範囲でオーバークロック設定を行う安全性を訴求していたが、今回のレクチャーでは、(具体的な名称はここでは明らかにできないものの)ストリートプライス200ドル以下で2.66GHzで動作するCPUがOC Genieで3.4GHz動作に設定できたスクリーンショットを示しながら、価格が999ドルのCore i7-975 Extreme Editionと比べてコストパフォーマンスが5倍以上になることをアピールしたほか、インテル独自のオーバークロック機能と言える「Intel Turbo Boost」では、1コアが最高クロックに設定された状態で12%程度の性能向上であるところ、OC Genieでは4コアすべてがオーバークロック設定で動作して36%の性能向上になることが紹介された。
オーバークロック以外のMSI独自機能として紹介されたのが、「SuperPipe」と「V-Kit」だ。SuperPipeは、これまで使われてきた標準径より太いヒートパイプを採用して放熱効果を向上させたクーラーユニットで、すでに、グラフィックスカードでは採用モデルが登場している(こちらについては種類が増えた「P55マザー」は遊び心で勝負──MSIブースPCパーツ編を参照のこと)。MSIが示したデータによると、電源回路周辺部の温度が、SuperPipeを採用していないマザーボードで摂氏90度のところ、SuperPipeを利用すると摂氏40度にとどまる効果が確認されたという。
V-Kitは、安定動作のために用意されたBIOS設定リミッターを無効にして、ユーザーが自由に電圧を設定できるようにするオンボードスイッチの「V-Switch」と、各部の駆動電圧をチェックできる「V-Check Point」で構成される。ユニークなのはV-Chech Pointsで、オンボードに用意されたコネクタにテスターの測定用端子を差し込むことにより、CPUのV_CORE、CPU VTT、DDR VCC、PCHがリアルタイムで測定可能だ。なお、すでにフォトレビューで紹介している同社のIntel P55 Expressマザーボード「P55-GD65」にも、このV-Kitが用意されていた(実装状況は、いきなり解禁!Intel P55 Express搭載のMSI「P55-GD65」緊急フォトレビューを参照のこと)。
MSIでは、これらの、OC GenieやSuperPipeのほか、従来からマザーボードで導入しているDrMOSなどで実現するオーバークロック設定を「Experience the Xtreme Speed on P55」と名づけ、同社のIntel P55 Express搭載マザーボードをアピールしていく予定と説明した。
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