自作PCだから楽しめる“節電チューニング”入門イマドキのイタモノ(3/3 ページ)

» 2011年04月14日 10時34分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]
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CPUを使うかGPUを使うか

 消費電力の検証では、アイドル時とPCMark Vantage実行時の最大値を比べてみる。アイドル時の消費電力ではCore i3-2100T搭載のシステム全体が35.4ワットに対しAthlon II X2搭載のシステム全体では38.6ワットと約3ワットの違いになる。確かに差は出ているが、明確というほどではない。一方で、PCMark Vanatege実行時の最大値は、Core i3-2100T搭載システムの80.8ワットに対してAthlon II X2搭載システムは94ワットと、約13ワットの差になった。32ナノメートルプロセスルールを導入するCore i3-2100Tと45ナノメートルプロセスルールを導入するAthlon II X2 250eという“微細化世代”の違いも影響しているものと思われる。

 AMDでは、少なくとも2011年中に新アーキテクチャのFusionがメインストリームでも登場する。終息に向かいつつある現行のPhenomやAthlonではなく、“低電力版”のデスクトップPC向けFusionを待つという手も考慮すべきだろう。なお、Core i7-2600K(TDPは95ワット)とIntel H67 Expressの構成で測定した消費電力では、ピーク時でCore i7-875Kから20ワット超の節電という結果が出ている。一方でアイドル時の消費電力はそれほど変わらない。これは、どのCPUでも低クロックモードが800MHzで統一されているためだ。

 TMPGEnc動作中(エンコード処理中)の消費電力では、Athlon II X2 250e搭載システムが最も高く、次いでCore i3-2100T搭載システムが続き、わずかな差だが最も消費電力が少ないのはQSVを有効にした状態だった。CPUによるエンコード処理はCPU性能をフルに使い、かつ、ここで計測した消費電力の最大値がエンコード完了まで続く。そのため、計測された最大値とエンコーディングに要した時間の積は、処理に要した電力に近いだろう。その視点で考えると、短時間で、最大消費電力も少ないCore i3 2100TでQSVを有効にした状態が最も省電力であったといえるだろう(ただし、QSVを有効にしたハードウェアエンコード処理ではCPUのリソースは空くが、リサイズ処理ではCPUリソースも消費しているようだ)。

システム全体の消費電力
TMPGEncエンコード処理中の消費電力

Internet Explorer 9における省電力

BBench 1.01

 もう1つ違う視点から省電力の検証をしてみる。ちょうど登場したばかりのInternet Explorer 9では、グラフィック処理にGPUアクセラレーションを利用できる。CPUで処理していた部分をより高効率なGPUで肩代わりできるわけで、これも省電力で効果が出るかもしれない。その効果のほどをBBench 1.01(海人氏作)で調べてみた。

 このベンチマークテストは本来ノートPCのバッテリー駆動時間を測定するの利用する。一定時間毎にキーストロークを発生させWebページを巡回する。この巡回Webページはリスト化されているので、これを利用して、GPUアクセラレーションが利用できそうなWebページを加え、GPUアクセラレーションが有効なInternet Explorer 9と非対応のInternet Explorer 8で消費電力に差が生じるかを調べてみた。

 結果は、わずか2ワットながらInternet Explorer 9で消費電力が減る傾向が確認できた。誤差の範囲かもしれないが、GPUアクセラレーションに対応するWebブラウザアップデートで消費電力を抑えられる可能性は否定できない。

PCにはまだ低消費電力化できるところがたくさんある

 絶対性能の追求とは次元の異なる「省電力チューニング」でも、パーツの組み合わせをいろいろと考える楽しみがある。ここでは、CPUの選択を中心に考えてきたが、AC/DC変換がより高効率な80 PLUS電源に変えたり、HDDからより低消費電力なSSDへと変えたりといったハードウェアの選択もあれば、冷却や各種省電力ツールの設定など、その過程は絶対性能を目指すチューニングと同じだ。

 「時代は節電だから」という理由ではなく、ジワジワと値を上げていく、いや、この場合は下げていくが、そういう“ジワジワ感”の省電力チューニングも、自作PCユーザー特有の“楽しみ”と“たしなみ”といえるだろう。

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