Fusionは、AMDがATIを買収した以降に提唱してきたCPUとGPUをシングルダイに統合した「APU」だ。同じパッケージにグラフィックスコアを収容するx86系CPUとしては、インテルの“Clarkdale”に先行され、シングルダイに収容したx86系CPUとしては、やはりインテルの“Sandy Bridge”に先行されてしまったが、Fusion APUに統合されているグラフィックスコアは、Radeon HD 6000世代で、DirectX 11に対応する点でSandy Bridgeのグラフィックスコア(Intel HD Graphics 3000、同 2000)の一歩前をいく。
そのFusion APUで省電力タイプとして投入された“Zacate”ことEシリーズは、「Bobcat」コアを用いたモデルだ。TDPは18ワット。チップサイズは19平方ミリとなる。CPUは第10世代のコアがベースで、低電圧モデルという意味では“Regor”コアに近いが、1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの構成が異なる。ラインアップには「E-350」「E-240」が用意され、E-350は動作クロック1.6GHzでデュアルコア、E-240は動作クロック1.5GHzでシングルコアだ。2次キャッシュメモリのサイズは、ともに1コアあたり512Kバイトを内蔵する。
グラフィックコアはRadeon HD 6310で、DirectX 11に対応してHDビデオ再生支援と高画質化をハードウェアで行うUVD3を実装する。メモリコントローラはDDR3-800/1066(シングルチャネル)に対応し、標準の1.5ボルト DIMMのほか、低電圧DIMMもサポートする。なお、グラフィックスコアが統合されたことで、グラフィックスコアとメモリの間が高速なバスで接続された。このおかげで、グラフィックスの処理が高速バスを使ったAPUの内部で完結することになった。
型番 | Athlon II X2 250u | Athlon II X2 240e | Turion II Neo K625 | E-350 | E-240 |
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コードネーム | Regor | Regor | Regor? | Zacate | Zacate |
リビジョン | C2 | C2 | C3 | B0 | B0 |
コア数 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 |
スレッド数 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 |
動作周波数 | 1.6GHz | 2.8GHz | 1.5GHz | 1.6GHz | 1.5GHz |
L1キャッシュ | (64KB+64KB)×2 | (64KB+64KB)×2 | (64KB+64KB)×2 | (32KB+32KB)×2 | 32KB+32KB |
L2キャッシュ | 1024KB×2 | 1024KB×2 | 1024KB×2 | 512KB×2 | 512KB |
UMI帯域幅 | - | - | - | x4 | x4 |
製造プロセス | 45ナノ | 45ナノ | 45ナノ | 40ナノ | 40ナノ |
TDP | 25ワット | 45ワット | 15ワット | 18ワット | 18ワット |
VID最小 | 0.85ボルト | N/A | N/A | 1.25ボルト | 1.175ボルト |
VID最大 | 1.15ボルト | N/A | N/A | 1.35ボルト | 1.35ボルト |
DDR3メモリ | 1066MHz | 1066MHz | 800MHz | 1066MHz | 1066MHz |
メモリチャネル数 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 |
グラフィックス | - | - | - | Radeon HD 6310 | Radeon HD 6310 |
コア周波数 | - | - | - | 492 | N/A |
DirectX | - | - | - | 11 | 11 |
ビデオ再生支援 | - | - | - | UVD3 | UVD3 |
PCI Express | - | - | - | x4 | N/A |
MaxTemps | 81度 | 72度 | N/A | 90度 | 90度 |
ソケット | AM3 | AM3 | S1 | FT1 BGA | FT1 BGA |
グラフィックスコアの統合により、これまでノースブリッジとサウスブリッジに分かれていたチップセットも1チップになる。Eシリーズと組み合わせるチップセットは開発コード名“Hudson M1 FCH”こと「AMD A50M」だ。FCHは“Fusion Controller Hub”の略。プロセスルールはCPU側から見れば1世代前の65ナノメートルだが、チップサイズは23平方ミリと小さく、消費電力も2.7〜4.7ワットという。
Fusion APUとは「UMI」(Unified Media Interface)と呼ぶPCI Express x4ベースのバスで接続する。AMD A50MはPCI Express Gen2 x1レーンを最大4本サポートするほか、6基のSerial ATA 6Gbpsが利用できる。なお、EシリーズAPUとHudson M1 FCHで構成されるプラットフォームは開発コード名「Brazos」という。本来なら、CPUとGPUに言及する場合はZacate、プラットフォーム全体に言及する場合はBrazosと呼ぶのが正しいが、このレビューでは、混乱を避けるために、搭載しているAPUの「E-350」でそろえているので、注意していただきたい。
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