底面のカバーと各パーツを分離し、さらに底面に露出しているネジを外すと、パームレストとキーボードベゼルを開ける準備が整う。キーボードやタッチパッドの細いフレキシブルケーブルを注意深く外しながら、パームレストとキーボードベゼルを開けると、マザーボードが完全に露出する。
本体内部は、左上に光学ドライブ、その下にバッテリー、中央上部に冷却ファン、右上にマザーボード、右下にデータストレージといった配置だ。薄型のフルフラットボディを実現するため、各パーツが重ならないよう、整然と並べられている。
宮入氏によると、このレイアウトには確固たる理由があり、「規格でサイズが固定されてしまうHDDと光学ドライブを対角に置き、空いたスペースの対角にマザーボードと冷却ファン、バッテリーを置くことで、我々の努力次第で縦と横の寸法を詰めていける。例えば、HDDと光学ドライブを縦に並べると、奥行きが既に決まってしまう。自らを追い込み、努力して最適なバランスを徹底追求するためには、この配置が最適だった」とする。
ちなみに開発当初は、厚さを23.9ミリ、バッテリー駆動時間をMobile Markのテストで7時間に仕上げるという目標値を設定したが、「ほぼ満額回答」ができたという。
液晶ディスプレイは1366×768ドット表示の13.3型ワイドパネルを採用する。画面サイズがこれより小さいVAIO Zで1920×1080ドットのフルHD表示を実現していることに比べると、ここだけコンサバティブな印象だが、宮入氏は「VAIO Zであれば情報量の高さを重視されるユーザーが多いだろうが、より多くの幅広いユーザーに向けたVAIO Sでは、この標準的な画面サイズと解像度がまずは適していると思う。もちろん、高解像度の選択肢の検討もしている」という。
とはいえ、液晶ディスプレイの品質面には一手間加えている。VAIO Zと同じようなハーフグレア(光沢と非光沢の間にあるような表面処理)のパネルを採用しているが、VAIO Zよりさらに低反射コートをかけてチューニングし直してきた。VAIO Zに比べて、画面への映り込みが小さく、それでいて発色やコントラスト感はグレアパネルに近い見栄えのよさがある絶妙な仕上げだ。
さらに見える場所のネジを外していくと、冷却ファンが装着されたマザーボードと、サブボードが取り外せる。両面10層で作られたマザーボードは、従来機に比べて大幅に軽量化しており、VAIO Zにも負けないほど高密度で小型だ。サイズは約128×127ミリのほぼ正方形で、その小ささには驚かされる。
マザーボード上には、CPUと外部GPUにヒートパイプが装着され、Intel HM67 Expressチップセットや両面に実装されたオンボードのメインメモリ、オンボードのグラフィックスメモリ、無線LAN/WiMAXのコンボモジュールを装着したハーフサイズのMini PCI Expressカードスロットなどが確認できる。
マザーボードの側面に横一列でキレイに並ぶコネクタは、すべて新規にデザインして金型を起こし、さらに基板をくりぬいて埋め込むことで、高さをそろえて厚みが出ないようにした。各コネクタにケーブルをつなぐと、ほぼ余るスペースがないギリギリの設計となっており、細部に至るこうした作り込み具合には感心させられる。
宮入氏は「VAIO XやVAIO Zの設計でシミュレーション技術や電源プレーンの安定、パワーインテグリティといったところは、すでにやり込んでいて、その経験を新型VAIO Sの基板設計に生かした。今回は本体の薄さを保つため、SO-DIMMのメモリスロットを1基に減らしたため、オンボードで4Gバイトのメモリ(DDR3-1333)を実装したが、16個で合計4Gバイトのメモリ配線をこの高密度で小型な基板に詰め込んだようなモバイルノートPCはほかにないはず」とその完成度に自信を見せた。
小型のサブボード上には、ドッキングステーション用の端子と、無線WANモジュール用のMini PCI Expressカードスロットが設けられている。
オプションのドッキングステーション(直販価格1万9800円)もよく練られている。本体底面のドッキングステーション用端子をふさがないよう、拡張バッテリーの中央には穴を開け、ドッキングステーションの端子部にはレバー操作で昇降するギミックを盛り込むことで、拡張バッテリーを装着した状態でも問題なくホットスワップで着脱できるようにしているのだ。
「VAIO本体に対するポートリプリケータの購入比率は、国内では数パーセントだが、欧米では3割弱くらいのユーザーに選んでいただいている。ワールドワイドでは人気のオプションなので、拡張バッテリーを付けた状態でも快適に使えるようにする必要があった」(橘氏)
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