「安くて手軽に使えるのが魅力」――病院で活躍するQNAP「TurboNAS」お医者さんに聞く

» 2012年04月11日 17時00分 公開
[ITmedia]

医療機関で利用されるQNAP「TurboNAS」シリーズ

医療法人社団心翠会の飯田茂理事長

 QNAPの「TurboNAS」シリーズは、信頼性の高いハードウェア設計と、共通化されたファームウェアによる豊富な機能により、家庭向けNASキットとしてはもちろん、法人用途でもさまざまな場面で利用されている。前回取り上げた大学での導入例(これがジャストサイズ――嘉悦大学が「QNAP」を導入する理由)に続き、QNAPが医療機関で活用されている事例を紹介しよう。

 「病院のデータ管理を考えるうえで、QNAPがちょうどいい解決策だった」と語るのは、医療法人社団心翠会の理事長を務める飯田茂氏だ。同医療法人では、川崎にある2つの診療所に2ベイタイプのTurboNASを2台導入し、さらにそのデータをリモートリプリケーションで都内にある事務所の8ベイモデル「TurboNAS TS-879 Pro」に集約しているという。

8ベイを備えた企業向けの高性能NAS「TurboNAS TS-879 Pro」

 「病院で扱うデータには大きく分けて3つあります」と飯田氏は説明する。「まず1つが、患者さんに関わる、電子カルテなどの診療情報や診療明細書です。これは機密性の高い情報ですし、訪問診療などを行う際に出先で安全にデータを閲覧するために、セコムが提供している専用の医療システムを使っています。2つ目は病院スタッフの情報で、誰がどこにいて、何をしているのかを把握するためのスケジューラーですね。この用途では主にサイボウズを使っています。病院で何か打ち合わせが行われているときに、その場にいなくても携帯端末で内容をフォローできるのが利点ですが、このせいで正直、携帯電話を放り投げたくなることも増えました……(笑)」。

 「そして3つ目が、先に挙げた2つにあてはまらない、中間的な資料や病院内でのやりとり、会議の記事録などです」と飯田氏は続ける。「サイボウズでもデータ共有はできるのですが、ストレージ容量が少ないですし、仮に病院内のスタッフ全員で使うとその分コストも増えてしまいます。外部には公開せずに、データをきちんと保存して共有できる方法を探していました」――そこに選ばれたのがQNAPだった、というわけだ。

心翠会で最初にQNAPを導入した神奈川県川崎市にある「川崎ファミリークリニック」。2ベイモデル2台でミラーリングし、そのうえで都内の事務所に設置したTS-879 Proにデータをバックアップしている

コンピューターは「難しい」「お金ばっかりかかる」?

QNAPの設備管理を担当するアセットマイスターの鈴木峰行社長

 一般企業において、ITへの投資はビジネスを円滑に行ううえで不可欠とも言えるが、医療の世界では「まだまだ誤解が多い」と語るのは、心翠会でQNAPの設備管理を担当するアセットマイスター代表取締役社長の鈴木峰行氏だ。

 「日本の医療現場でPCといえば、まず頭に浮かぶのはレセコン(診療報酬明細書をオンラインで請求するためのコンピュータ)です。これは大手PCメーカーが専用ソフトウェアを組み込みで提供している業務用PCで、ハードウェア的にはせいぜい十数万円程度のものなのですが、ハードとソフトは切り売りせず、数百万円という非常に高額なパッケージとして販売されています。また、大学病院などはまだしも、開業医の多くはPCを触ったことのない高齢者が多く、若い医師とのデジタルデバイドが起きてしまっているのも問題ですね。国の方針(医療制度改革)によってレセプト電子化が推進されてはいるものの、高齢な医師の中には『完全に義務化されたら廃業する』と公言する人もいるくらいです」と鈴木氏。「特に数年前は、レセコンを導入したけど誰も使える人間がいないために結局みんなで徹夜で請求書を手書きした、使っていないのに(ソフトウェアの)バージョンアップのたびにコンピュータの管理費用をとられている、といった話が冗談ではなくありました。こうした事情から、いまだに『パソコンは難しい』『お金ばっかりかかる』という誤解が一部の医療現場では少なくありません」という。

 「確かに、サーバや人的リソースを一括で提供する専門企業の医療システムを利用するのであれば、インフラやサービスにかかるコストは大きいのですが、今回心翠会様が想定するような用途であれば、NAS製品で十分対応できます。特にQNAPの製品は信頼性で定評がありますし、知り合いの医師が同じ環境で利用していることもあり、飯田様に導入を提案しました」と鈴木氏は経緯を説明する。

 実際、鈴木氏から提案を受けた飯田氏も、QNAPの導入にかかる費用を聞いて驚いたという。「レセプトコンピュータの延長で考えていたので、当初予想していた価格よりも(QNAPは)全然安くてびっくりしました。PCに詳しくない診療所のスタッフでも、ローカルドライブとほとんど変わらない簡単さで扱えるので、専任スタッフを置く必要もありません。各診療所でデータをミラーリングし、さらに事務所でバックアップも取っているので、万が一の心配がないのもいいですね」と語り、「連携している複数の医療機関でも4月中には同じシステムを構築してもらう予定です。すぐにでもやってほしい」と笑う。

研究データや論文などを共有できるミニ図書館

 飯田氏は現在、過去に執筆した論文や医療関係の研究データ、講演の内容などもQNAPで管理し始めているという。

 「紙の資料や講演のテープなどをデータ化していますが、すでに絶版になったものや中には非常にレアなテキストもあるので、仲間の医師と共有するのにいいですし、どこにいても閲覧できるのは便利です。物理的に保存するとなるとミニ図書館ができてしまえるくらいの量なのですが、QNAPなら場所をとりません。目当ての資料を探すのも非常に楽。実は以前、あるクラウドサービスを利用して、同じことを試みたのですが、データ量が大きすぎて『お金がかかるからやめてくれ』と経理から言われたことがありまして(笑)。その点、今回導入したQNAPを利用すれば費用はかかりませんし、将来的にディスクスペースが足りなくなっても、ストレージの増設は簡単です。クラウドはいつまでそのサービスがあるのかという点でも不安があったので、手元にデータがあるのはいいですね」と、当初の構想を超えて幅広い用途に使っている現状を教えてくれた。

 「私たちのような中小の医療機関で“IT導入”というと身構えてしまいがちですが、患者さんの個人情報に関わる厳密に管理されたデータとは別に、スタッフで共有し、きちんとバックアップを取っておくべき、業務上不可欠な情報もあると思います。そうしたさまざまな情報を管理するうえで、導入コストが安く、専門の知識がなくても簡単に使えて、信頼性の高いQNAPの製品は最適だと思います」(飯田氏)。

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