「Xperia Tablet S」の防滴・薄型軽量・長時間駆動はいかに実現したか開発者ロングインタビュー前編(1/3 ページ)

» 2012年11月27日 11時45分 公開
[鈴木雅暢ITmedia]

→・後編 「Xperia Tablet S」はAndroidタブレットの限界を超えていく

ソニーが注力するタブレットの気になる中身

ソニーの9.4型Androidタブレット「Xperia Tablet S」

 ソニーの第2世代となる9.4型Androidタブレット「Xperia Tablet S」は、従来の「Sony Tablet S」からデザインを一新するとともに、スマートフォンと同じ「Xperia」ブランドへと組み込まれ、新たなスタートを切った。

 一見地味にも映る基本スペックに反し、そのボディにはソニーならではのノウハウが詰め込まれており、徹底した作り込みよるユーザーエクスペリエンスの向上こそ、その本質といえる。

 2012年9月の発売後、10月には一部製品で製造上の不具合によりディスプレイパネルと本体背面に隙間が生じ、仕様上の防滴性能(IPX4相当)を維持できない可能性があるとして、販売が一時停止となっていたが、11月中旬より販売が再開された。

 こうした事態にも見舞われたが、Androidタブレットとしてハードウェアとソフトウェア、そしてサービスまで含めた機能、使い勝手ともに高い完成度を備えているのは、掲載済みのレビュー(前編後編)でもお伝えした通りだ。

 今回はXperia Tablet Sにかける並々ならぬ意欲を感じることができた開発者インタビューの模様を2回に渡ってお届けする。

ソニーならではのサービスを楽しむ土台として、ハードウェアをしっかり作り込む(企画部門)

―― 開発コンセプトを教えてください。

VAIO&Mobile事業本部 Tablet事業部 商品設計部 田中茂氏(プロジェクトマネージャー)

田中氏 ソニー全体のモバイル戦略として、ソニーグループのネットワークサービスと強固に連携することで、お客様により楽しんでいただきたいということがテーマにあります。そのアプリケーション、サービスを満足にお使いいただくためのハードウェアとして、強固な地盤を作り上げたいと考えました。

 薄さ、軽さ、スタミナのブラッシュアップのほか、ソニーならではのエンターテインメントサービスをご利用いただくうえで、画と音にもきちんとこだわって、「Wow!」や「すごいね!」と思っていただけること。そういうものをソニーとしてしっかり作り込んでいこう、ということが基本のコンセプトです。

―― 開発はいつごろからスタートしたのですか?

田中氏 初代機(Sony Tablet S)の開発中から第2世代の検討は始まっていました。全体の設計を本格的にスタートしたのは2012年8月下旬ごろです。液晶ディスプレイやバッテリーなど、一部のデバイスはその1〜2カ月ほど前からスタートしていました。

―― 開発スタッフは引き継がれているのですか?

田中氏 初代機とある程度は並行して企画、開発を進めていましたので、チームとしてはまったく別のチームになります。ここにいるメンバーで初代機にも携わっていたのは、電気設計リーダーの宮田のみですね。

VAIO&Mobile事業本部 Tablet事業部 商品設計部 宮田洋昌氏(電気設計リーダー)

宮田氏 第2世代ということで、1世代目でやり残したこと、課題として浮上してきた部分がありましたので、その辺りは意識して改善しました。

 具体的には、薄型化と軽量化、バッテリー駆動時間の延長、電源ボタンなどの押しやすさ、スピーカーの音と配置(手で持った時にふさがないように)、タブレットの生命線となるディスプレイ、タッチパネルの改善といったところです。

田中氏 今回開発に携わってきたスタッフは、ウォークマン、カーナビなど、さまざまな分野を手がけてきたメンバーが集まっており、実際の製品にはそれぞれの分野で培ってきたノウハウが随所に盛り込まれています。ソニーの技術を結集したといっても過言ではなく、使っていただければその辺りも実感していただけるのではないかと思います。

―― 今回、タブレットをXperiaブランドに統合した理由、経緯を教えてください。

VAIO&Mobile事業本部 企画1部 城重拓郎氏(機種企画)

城重氏 スマートフォンの部門がソニーエリクソンからソニーモバイルコミュニケーションズとなり、100%子会社になったことが1つ。もう1つは、スマートフォンとタブレットは、目指している方向性が共通であるということです。

 特に後者については、アプリケーションもスマートフォンとタブレットで同じものが使えますし、ソニーグループのサービス、周辺機器を活用できます。今回はユーザーインタフェースの統一も図っており、スマートフォンとタブレットそれぞれに最適化してはいても、基本的にできることが同じです。

 ブランドというものはエクスペリエンスに対して冠しているという考え方もありますので、同じにしたほうがいいだろうと判断しました。

―― 外から見るとこれは大きな変化と感じるのですが、社内ではスムーズに決定したのでしょうか?

城重氏 ブランドを共通化するか否かの議論は、社内で長い間重ねてきました。その中で統合するという方向性は定まりつつあって、後はどのタイミングで実行に移すか、といったところもまた議論になったのですが、やはり変えるならば早いほうがいいだろう、との結論が出てこうなりました。

田中氏 開発陣から「早く決めてほしい」という声はありましたね(笑)。今回はブランドをしっかりアピールする意味もあって、裏面の厚みのある部分に大きめのXperiaロゴを入れることに決定していたのですが、実はロゴが入る部分だけ突起がありません(ロゴ以外の部分はグリップしやすいように、立体的なドットパターンが施されている)。

 これだけで金型が変わってきてしまうので、Xperia Tabletなのか、Sony Tabletなのかは実は設計上でも大きなポイントでした。

雑誌を折り返したような独特のフォルムを生かしつつ、薄型化と軽量化を実現したボディ(写真=左)。裏面の厚みのある部分に大きめのXperiaロゴを配置している(写真=右)

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