Desktop Bridgeの基本方針として、既存の古いコードをより“モダン”なコードで置き換えていくというスタンスは変わっていないが、一部で興味深い変更点がみられる。
例えば、1年前のセッションのスライドではStep 4の部分でメインとなるコードは「Classic Windows App」だったが、2017年のセッションでは「Universal Windows App」となり、位置関係が逆転している。
メインとなるのはXAML UIをベースとしたモダンなコードで、既存コードもそのまま流用が可能だとしている。ただしこの構成の場合、動作可能なデバイスはPCのみ(Windows 10 S含む)という注釈が付く。
そして、2017年版のStep 5における記述で気になる点は、「More .NET support」「More Win32 support in UWP」という部分だ。これは従来のデスクトップアプリケーションでサポートされていた機能をUWP側が全てサポートしているわけではないという部分に触れたものになる。前述のStep 4での記述と合わせて、旧式のデスクトップアプリケーションを可能な限りモダンなコードへと引き上げたいという意思を強く感じる。
Steamのように配信プラットフォームの問題でWindowsストアと競合するケースはあるものの、基本的に全てのWindowsプラットフォームの開発者をUWPへと誘導したいのだと考える。
だが、今回の2017年版スライドで最も興味深い記述は、Desktop Bridgeがターゲットとするフォームファクタから「モバイル」が除外されている点にある。2016年版では「PC」「Mobile」「Xbox One」「HoloLens」だったものが、2017年版では「My converted app will run on Hololens and Xbox」とのみ記述されているのだ。
少なくとも、マシンパワーや利用者層を考慮しても、モバイルは既存アプリケーションのUWP化で重要な位置を占めていたはずだが、Microsoft自らがWindows 10 Mobileを対象プラットフォームとして挙げないのは、昨今の同社の動きを具体的に反映させた出来事だろう。
まとめると、Desktop Bridgeの目的は主に2点に集約される。
EvernoteやOfficeのように、生産性アプリケーションをWindowsストアを通じて広く利用可能にする仕組みでもあるが、同時に特定業界や企業といった狭い範囲で利用されるアプリケーションを延命するための手段にもなる。
また、一度Desktop Bridgeを通じてUWPに変換されたアプリケーションは二度と戻せず(変換元のコードを残してあれば別だが)、Windows 10より前のバージョン、具体的にはWindows 7などの現在企業ユースでメインの環境では動作できなくなる。
片道切符というわけだが、2020年に迫ったWindows 7の延長サポート終了を前に、Microsoftが企業ユーザーに残した救済パスと言える。
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