5G時代のPCはArmプロセッサが当たり前になる? 大胆なロードマップ発表が示すもの鈴木淳也の「Windowsフロントライン」

» 2018年08月21日 16時30分 公開

 スマートフォン向けのプロセッサコアIP(半導体設計資産)で覇権を握る英Armが、いよいよPC市場への攻勢を強めてきた。

 2018年6月にArmのパートナー企業である米Qualcommが、PC市場を“明確に”ターゲットとしたハイエンドSoC(System on a Chip)の「Snapdragon 850」を発表したのは象徴的な動きだ。

 これまで米Intelや米Advanced Micro Devices(AMD)といったx86プロセッサの牙城だったPC市場に、他のアーキテクチャで成功した半導体メーカーが本格参入の意欲をみせている様子がうかがえる。

Snapdragon 850 米QualcommがCOMPUTEX TAIPEI 2018に合わせて発表した最上位SoCの「Snapdragon 850」

 Qualcommはそれに先立つ2017年12月に、Arm系SoCで動作するWindows 10搭載PCである「Windows on Snapdragon」デバイスを正式にローンチしているが、この戦略製品はスロースタートであり、日本でも対応デバイスがいまだ発売されていない。Windows on Snapdragonが本格化するのは、Snapdragon 850搭載機の登場後で2019年以降になると筆者はみている。

Windows on Snapdragon 「Windows on Snapdragon」デバイスの立ち上がりは、スロースタートといったところ

 とはいえ、今後の拡販を狙ったArm陣営による「PC向けプロセッサ」のロードマップは出そろいつつある。Qualcommは2018年12月に再び次期ハイエンドSoCを発表することが予想されている他、プロセッサコアIPを提供するArmもまたx86と真っ向から競合するラインアップを着々と準備している状況だ。

Armは「x86に支配された市場」にブレークスルーを起こせるのか

 そんな中、Armは8月16日(英国時間)にモバイルデバイスやノートPCなどクライアント向けCPUのロードマップを公開した。

 2018年内にはDynamIQ技術を採用した7nm製造プロセスの「Deimos(デイモス:ギリシャ神話における“恐怖”の神)」、2019年には5nm製造プロセスならびに7nm製造プロセスの「Hercules(ヘラクレス:ギリシャ神話の英雄)」という開発コード名のプロセッサコアIPをパートナーに提供する計画だ。2020年までの間、年率15%のパフォーマンス向上を目指す。

Arm 2020年までのクライアント向けCPUロードマップ

 この年率15%向上というパフォーマンスはどの程度なのか。Armは例として5月に発表した7nm製造プロセスの最新CPUコア「Cortex-A76」を挙げ、Intel第7世代Coreの「Core i5-7300U」と比較して、TDP(熱設計電力)が10W以上低い5W未満でありながら、Turbo Boostによる最大クロック動作時の3.5GHzに匹敵するパフォーマンスを3.0GHz動作で実現しているとアピールする。

 ここからDeimos、Herculesと世代を重ねることで、毎年パフォーマンスが向上していくというわけだ。

Arm Armが主張するCortex-A76におけるパフォーマンスのメリット

 数年先の計画をArmが具体的に示すことは珍しく、クライアント向けCPUのロードマップと性能数値を公開したのは今回が初めてだ。競合にあたるIntelが10nm製造プロセスへの移行に苦慮し、ロードマップが不明瞭となりつつある中、先んじてこうした情報を提示することで、PC市場での存在感を高めたいというアピールなのだろう。それだけ「勝負どころ」との判断が働いているのだと予想する。

 Armは今回のロードマップ発表で、5G時代を迎える中で「パートナーのイノベーションが加わることによって、x86に支配された市場を打ち破り、今後5年間でWindowsノートPCとChromebookの市場シェアを大幅に獲得することが期待できる」とコメントしている。

 Windows PCに限らず、OSデュアルブート対応のウワサが出ている「Chromebook」や、Appleの「Mac」に「iPad Pro」といった製品ラインアップをみても、PCとそれ以外のデバイスとのボーダーラインは既に崩れ始めている。縮小傾向が叫ばれて久しいPC業界だが、ことデバイスのバリエーションに関しては今後数年先は非常に面白くなるかもしれない。

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