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iPhoneのもうひとつの特徴がサーバ連携をはじめとした強力なメッセージング機能だが、同社の場合以前からホスティング業者のExchange Serverを利用してメール環境を構築していたので、iPhoneから会社のメールアカウントを利用するために特別な設定やソリューション導入は不要だった。
これによって外回りの最中でも電子メールを確認できるようになったほか、社内のiPhoneユーザー同士ではSMSによるコミュニケーションも可能になった。例えば、緊急ではないものの、できれば連絡を取りたい案件が休日に発生した場合、いきなり携帯に電話をかけるのははばかられるが、SMSなら送りやすい。例えば、幹部が休日に「業務に役立ちそうなので、このテレビ番組は見ておいたほうがいい」といった連絡を全営業担当者に向けて送っているという。
さらにホワイトプラン契約のため、夜9時までは通話も無料だ。同社は東京にも支店があるが、出張がない限り顔を合わせることがない社員の間でも、iPhoneの導入によりコミュニケーションが発生するようになった。
サーバ連携という点では、従来の携帯電話のブラウザでは対応できなかった複雑なWebサービスにアクセスできるのもiPhoneのメリットだ。同社では資産状況や取引履歴を確認できる顧客向けのWebサイトを用意しているが、これをiPhoneのSafariに対応させ、担当者が客先でその画面を見せながら話をすることが可能になった。
同社のWebサービスは従来Internet Explorerでアクセスすることだけを想定していたシステムが多いため、若干Safariへの対応に時間がかかっているということだが、今後はさらにグループウェアや、取引の注文自体を処理する基幹系のシステムなど、従来イントラネットからしかアクセスできなかった部分にもiPhone対応を進め、社員が自席にいなくても行える業務を順次拡大していく計画だ。
また、金融系の業種では当然セキュリティが重視されるが、同社の使い方の場合、iPhoneが標準で備えているセキュリティ機能で十分対応できるという判断だった。iPhoneはあらかじめパスワードポリシーを設定した状態で社員に配布されるが、一定時間で自動的にパスワードロックされ、設定した回数を超えてパスワードを間違えると全データが消去される。
同社ではもともと顧客の個人情報などを含んだメールの送受信を禁止しており、注文情報をメールでやりとりする際も顧客名はID番号に置き換えて記述していた。また、同社では従来からノートPCの持ち出しを禁止しているが、iPhoneには前述のようなセルフワイプの機能があり、Exchange Serverの機能と合わせて遠隔で管理することも可能なことから、導入に踏み切れたという。
また、基本的に社員の自席PCにインストールしてあるiTunesで定期的にバックアップをとるように指示しているが、万が一OSがクラッシュしてもいち早く復旧できるよう、各ユーザーの初期状態のバックアップイメージをシステム部門で保存している。アプリの再インストールなどは必要になるが、初期状態をリストアしサーバとの同期を行えば、ネットワーク設定、メール、連絡先などの情報は比較的に短時間のうちに元通りにできる。
iPhoneの導入による最大の変化は、コミュニケーションスタイルの変化だという。「ある社員からは『(PCでなく)iPhoneでメールを見るクセがついてしまい、毎日通勤中や寝る前にもメールをチェックするようになった。生活習慣が変わった』という声も聞いています」(権藤氏)といい、いつもの孫社長のコメントではないが、iPhoneで生活のスタイルが変わる、ということを実感する社員が現れているようだ。
また、社長以下管理職全員が常にiPhoneを携帯するようになったことで、社内にいてもiPhoneで連絡を取り合うことが日常的になり、「○○さん今どこにいるの」「今日中に決裁がほしいのに○○さんがつかまらない」といったタイムロスがなくなった。従来は、内線に電話をかけて離席中だったら30分、1時間後にまた電話をかけてみるといった手間や、メールを出したが見てくれたのか、返事がいつ来るか分からない、といった面倒が発生していたが、今はiPhoneに直接電話をかけられるし、電話に出られないときでも履歴が残り、SMSで用件を伝えることもできる。
「PCの前にいないとメールが見られない、席にいないと連絡がつかないという業務スタイルを変え、どこにいても連絡がつくという環境を作りたいと考えていましたが、いろいろなツールによる連絡経路ができたことで、それに近づいたと思います」(権藤氏)
将来的には内線電話を廃止してソフトバンクモバイルの携帯電話に置き換えることで、通信コストの削減もしていく予定だという。内勤の社員にはiPhoneでなく従来型の携帯電話を配布するのが当初の計画だが、先行導入したiPhoneの利用状況によっては、全社員にiPhoneを支給することも視野に入れたいとしている。
また、営業担当者にとってiPhoneはプラスアルファの営業支援ツールだが、管理職にとっては既にiPhoneは指揮系統を構成するネットワークのひとつになっている。「社員の意識改革を図りたい」という導入目的は、巽大介社長の意向を反映したものでもあり、社長自らiPhoneを駆使して業務の指示を行っているため、「iPhoneを見ていませんでした」と言うわけにはいかない状況になっているという。
システム部門の責任者でもある石川氏にはトップから直接指示が飛んでくるので、24時間iPhoneが手放せない状況になったことには苦笑いしつつも、「これまでPCさえ触りたがらなかった会社幹部も、いまはiPhoneがあるので常にメールをチェックしている。こういう環境が生まれたのはひとつの効果と思っています」と話し、モバイル端末の導入が職場に与えたインパクトの大きさに手応えを感じている様子だ。
もちろん、iPhoneを支給された全員が積極的に使いこなしているわけではなく、自ら次々とアプリを試し、使い方に関してシステム部門も舌を巻くような高度な質問を投げかけてくるような積極的な社員もいれば、あまり興味を示さず、あくまで自分がこれまで築いてきた営業スタイルを貫こうとする社員もいるといった具合で、反応はさまざまという。
しかし前述のように、社内にさまざまな変化が起きつつあるのは間違いなく、今後Webサービスとの連携や、より高度なアプリの導入などによって、「iPhoneなしでは営業活動が成り立たない」と言えるくらいの環境が整えられていく可能性もある。
証券会社へのiPhone導入というと、特殊な業務での活用事例という印象を抱くかもしれない。しかし今回の光世証券のケースには、ある企業にiPhoneというユニークな情報機器が入り込んだときどんな変化が発生するのか、それを知るための多くのヒントが含まれているように感じられる。
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