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» 2010年04月21日 10時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:開発コードネーム「メトロ」に込めた意味――Windows Phone 7の戦略を聞く(前編) (1/2)

「Windows Phone 7」は、これまでのWindows Mobileとは大きく方向性を変えた新しいモバイル向けのOSだ。しかしその詳細な情報はまだ少ない。マイクロソフトが目指す方向性、そしてWindows Mobile 6との違いをモバイルコミュニケーション本部長の越川慎司氏に聞いた。

[神尾寿,ITmedia]

 ITのサービスやビジネスは今、“モバイル”をキーワードに大きな変革期に入っている。国内外でAppleのiPhoneを筆頭とするコンシューマー向けのスマートフォンが急成長し、Googleはモバイル向けのサービスを強化。あらゆる製品・コンテンツ・サービスが、新たなモバイルITの時代に向けて変化しはじめている。

Photo マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部長の越川慎司氏

 そのような中、IT業界の巨人であるマイクロソフトも、モバイルITの新時代に向けて大きく舵を切り直した。同社はスマートフォン市場の草分けであり、Windows Mobileというスマートフォン向けOSでこの市場の育成を行ってきた。同OSを搭載したスマートフォンは2009年、バージョンを6.5に進化させるとともに、「Windows phone」という新たなブランド名を用意した。

 Windows phoneは、法人市場向けのスマートフォンでは一定のシェアを獲得しているほか、コンシューマー向けとしてもドコモの「T-01A」「SC-01B」やソフトバンクの「X01SC」「X02T」、ウィルコムの「HYBRID W-ZERO3」など、多数の端末が登場している。KDDIからも「IS02」が登場予定だ。だが、OSのWindows Mobile 6.5は過去のWindows Mobileとの互換性を重視したものであり、iPhoneのように“コンシューマー向けの新たなモバイル端末”を目指したものではない。そこでマイクロソフトが投入するのが、コンシューマー市場を強く意識した新たなOS「Windows Phone 7」である。同OSは今年2月のMobile World Congress 2010で発表され、年末までに搭載モデルが登場するとされている。4月12日に米国で発表されたMicrosoftブランドのスマートフォン「KIN」は、Windows Phone 7とベースを同じくするOSを搭載している。

 マイクロソフトの“本命”ともいえるWindows Phone 7とはどのようなものなのか。その優位性と、プラットフォーム戦略について、マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部長の越川慎司氏に話を聞いた。

成長する6.5.3と、進化する7

――(聞き手:神尾寿) 昨年、スマートフォン向けのWindows戦略は大きな方針転換が行われましたが、その中でも先に発表された「Windows Phone 7」はWindows Mobile時代からの継承性を捨てて、ドラスティックな変化を目指すものになりました。

越川慎司氏(以下敬称略) ええ、Windows Phone 7はこれまでの仕様をまったく作り替えたものになっています。とりわけ大きな変化であり、我々にとってチャレンジになっているのが「UIにおける新たな試み」です。ここは過去のWindows Moboleと違うのはもちろん、他のスマートフォンとも差別化されたものになっています。

―― Windows Mobile 6.5とは別物、というわけですね。

越川 そうですね。6.5と7は並列の関係になります。ですから、Windows Mobile 6.5も引き続き進化していまして、最新の6.5.3では日本市場のニーズも数多く取り入れました。これは米国にあった(Windows Mobileの)開発拠点の一部を日本(調布)に持ってこれたことと、Twitterをはじめソーシャルメディアで数多くのユーザーから意見を寄せていただけたことが大きいですね。Windows phoneはグローバルな製品ではありますが、その中でローカル市場への対応は大事にしていきたい。特に成熟が進んだWindows Phone 6.5.3では、これがいち早くできました。

―― 確かにWindows Mobile 6.5.3を搭載したauの東芝製端末「IS02」は、UIが従来のWindows phoneよりも垢抜けて、全体的にキビキビと動く好感が持てるものでした。

 6.5シリーズは今後、法人向け端末に限定して搭載されるというわけではないのでしょうか。

越川 (Windows Mobile 6.5.3とWindows Phone 7の対象マーケットに)特に明確な区切りがあるわけではありません。

 ただ、Windows Phone 7は新たな戦略に基づくものですので、正直なところ、古い仕様の切り捨てをしなければいけないところも多々あります。例えば、アプリケーションの互換性や、コピー&ペーストといったUIの一部がなくなってしまいます。一方で、Silverlightの技術を取り入れていますので、Xbox 360やPCとの互換性が向上し、UIもまったく新しいものに作り替えられます。

コピペはどこにいった?

―― 成長のために、不要な部分を捨てる。アポトーシスですね。Windows Phone 7発表時には「コピー&ペーストがなくなる。退化だ」と一部で批判されましたが、そうではない。進化だ、と。

Photo 「Windows Phone 7ではコピー&ペーストが必要なくなる新たな操作性を実現します」(越川氏)

越川 コピー&ペーストというUIをなくすのではなくて、“コピー&ペーストが必要なくなる”新たな操作性を実現します。

 コピー&ペーストは、Webやメールなどから必要な情報があった場合に「選択してコピー」と「(挿入部分を)選択して貼り付け」という2つの操作を組み合わせたものなわけですけれども、これをもっと自然な動きで代用できるような新しいエクスペリエンス(体験/操作性)をWindows Phone 7では実現したいと思っています。もっとシンプルかつ直感的に、アプリケーション間の情報連携ができる仕組みを考えています。

―― ユーザーが求める連携のニーズを先読みして、表示された情報を自動認識し、それをアプリケーション間で受け渡しする技術が重要になりそうですね。分かりやすい例ですと、住所や電話番号などですと、画面に表示した時点で自動で認識しておいて、アドレス帳や地図アプリに連携する準備を整えておく、といった感じでしょうか。

越川 そうです。画面上の情報をOS側で自動認識・整理をして、タグ情報などがなくても、情報の移行に対してどのような対応をするかを準備します。ですから、コピー&ペーストをしなくても、スムーズに(アプリ間で)情報の受け渡しができます。

―― バックグラウンド処理での自動認識と、どのようにアプリ間で情報の連携をするか。ユーザーの操作を先回りするナビゲーション能力が重要になっているわけですね。

越川 Windows Phone 7のUIコンセプトでは、“ユーザーがほしいと思う情報を自然な形で提供する”ものを目指しています。これは基本メニュー画面の「Live Tiles(ライブタイル)」も同様です。コピー&ペーストの部分も、情報の移行を自然にナビゲートしていくような新しいユーザー体験に変えていきます。

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