通信機能を備えた自動販売機を災害時に遠隔操作で開放し、被災者に飲料を無償提供する――そんな「地域貢献型自動販売機」の設置に日本コカ・コーラが取り組んでいる。3月19日に開催された「MCPC award 2010」の最終プレゼンテーションで、同社ベンディング統括事業部マネジャーの仁科尚文氏が取り組みの内容を説明した。
日本コカ・コーラは社会貢献活動の一環として、災害時の被災者支援のために飲料を無償提供する協定を各地の自治体と結んでいる。こうした活動の中で「自動販売機も(災害時に)活用できる」と考え、企画したのが地域貢献型自動販売機だ。地域貢献型自動販売機は学校や公民館などの施設を中心に5200台(3月時点)が設置され、企業が従業員のライフラインを確保する目的で導入するケースもあると仁科氏は話す。
システムにはNTTドコモのFOMA網を利用し、自動販売機にはFOMA対応の通信ユニットが組み込まれている。また自動販売機には電光掲示板が搭載されており、災害時には飲料を提供するだけでなく、災害情報や避難場所の情報を表示させることが可能だ。こうした機能を遠隔操作する権限は自治体やボトラー社の責任者に与えられる。責任者は、掲示板のメッセージを管理するためのUSBキー、あるいは飲料の無償提供を実行するためのUSBキーを専用端末に差すことで、遠隔操作が可能になる。責任者の設定した電光掲示板向けのメッセージや、飲料を無償提供する命令は、インターネットを介してドコモのサーバに届き、そこからFOMAの無線ネットワークで自動販売機に伝わる仕組みになっている。
実際の災害で利用された例もすでに出ており、2004年の新潟県中越地震では、避難場所となった長岡市の体育館で1500本の飲料が地域貢献型自動販売機から提供されたという。また、2007年の能登半島地震では1500本、2010年のチリ地震では680本の飲料が提供された。
同社は災害時に住民が孤立してしまうような場所などに対して、地域貢献型自動販売機の導入をさらに拡大させていく考え。また仁科氏は、今後の抱負として“多様な商品の提供”“利便性の向上”“エコや社会貢献”の観点からモバイル技術の活用を進めていくと話した。
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