Androidを搭載したスマートフォンは、PCなみの性能を備えながら直感的に操作できることから、業務効率化を支援するツールとしての期待が高まっている。また、昨年の秋以降、各社からタブレット端末も登場し、さらなる業務利用の可能性が広がりつつある。
こんな便利なAndroid端末だが、企業が安心して使える環境が整っていないのが現状。他のプラットフォームに比べて管理やセキュリティをサポートするツールが少なく、それが導入のハードルになっているという。
こうした課題を解決し、Androidの企業導入を強力に推進しているのがKDDIだ。この1月に、Android端末を企業で使うためのサービスをパッケージ化した「ビジネス便利パック for Android」を発表したのに続き、米3LMとの提携による法人向けセキュリティ管理サービスを提供すると発表した。
KDDIの取締役執行役員常務で、ソリューション事業本部長を務める石川雄三氏は、Android端末の企業導入に必要な要素として、(1)管理者が従業員の端末に何が入っているかを把握できる環境(2)端末から企業内データへのセキュアなアクセス(3)端末の紛失時などに、遠隔操作で簡単にデータを消せるセキュリティ を挙げる。米3LMとの協業によるソリューションでこうした課題を解決し、Androidの法人活用を加速させたい考えだ。
石川氏は、厳しいセキュリティポリシーで業務用端末を運用している大企業のニーズにも、このソリューションで対応できるとし、「これまで(企業の担当者から)聞いている課題にはすべて応えられる」と自信を見せた。
「Androidって安全に使えるのか――というところで、(企業導入の)入り口のドアがなかなか開かなかった」――。こう話すのは、KDDI ソリューション商品企画本部でモバイル商品企画部長を務める中島昭浩氏だ。
Android端末は法人市場でも導入が進んでおり、ユーザビリティに対する評価は非常に高いものの、セキュリティ面の問題から導入に踏み切れない企業も多いという。PCなみの機能を備え、外に持ち出して使うケースが多いAndroid端末は、セキュリティリスクもノートPCとほぼ同等であり、これを解決するソリューションが重要というわけだ。
管理者の目の届かないところでの不正利用の脅威や、外出先からイントラネットにアクセスする際の第三者からのハッキングの脅威、端末の紛失やマルウェアの侵入による情報漏えいの脅威が企業の懸念事項となっており、こうした課題に対応できるソリューションを探す中で3LMの製品に出会ったという。
3LMのソリューションを選んだのは、端末の各種制限や端末内データの暗号化といった端末管理をアプリケーションレベルではなく、OS部分に介在する形で実現できるからだと中島氏。Androidのフレームワークにセキュリティ関連のAPIを組み込むという高度な管理手法は、他のソリューションでは実現しておらず、Google出身の“Android OSを知りつくした”3LMのスタッフだからこそ開発できたのではないかと話す。
対応端末に搭載されるAndroidは各種のAPIを組み込んだものとなり、素のAndroid端末とは異なるが、3LMのトム・モス氏によるとパフォーマンスや互換性には影響がないとのことだ。また、既存のAndroid端末にも無線やメモリカード経由で適用できるので、すでにAndroid端末を導入済みの企業でもサービスを利用できるという。KDDIは夏モデルから、カスタムOSを組み込んだ法人端末を提供する予定としている。
3LMとKDDIのセキュリティ管理サービスは、8月から試験サービスを開始する予定。端末管理のツールとして、Web画面から複数端末を一元管理する機能やアプリのプッシュダウンロード、ExchangeサーバやLDAPなどとの連係機能を提供する。セキュアなネットワークについては、KDDIのイントラネットサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch」とAndroid端末をVPNで接続するサービスを用意。端末自体のセキュリティについては、法人向けにカスタマイズしたOSによる各種の機能制限やデータの暗号化を利用できるようにする。
料金や提供方式は今後発表する予定としており、「ニーズに応じた柔軟な組み合わせでサービスを提供できるようにしたい」と中島氏。「企業が納得するセキュリティ管理サービスを提供する」(中島氏)ことでビジネスを加速させる環境をつくり、Android端末の導入につなげたい考えだ。
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