「ほぼ制約なし、それでいいじゃん」――ここまでオープン、KDDIのAndroidベンチャー支援頑張るエンジニアの力になりたい

» 2011年06月21日 20時13分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 世界中をワクワクさせるサービスを、一緒に作っていきたい――。KDDIで代表取締役社長を務める田中孝司氏のこんな思いのこもったベンチャー支援プログラム「KDDI ∞ Labo」が、8月にスタートする。

 KDDI ∞ Laboの説明に立った田中氏は、インターネットの黎明期に米スタンフォード大で学んでいた若かりし頃の自身のエピソードを紹介。新たな時代の幕開けにワクワクしながらソフトウェアを書いて一旗揚げようと思ったものの、「英語ができない、お金がない、ソフトの質が悪い」というトリプルハンディキャップを教授に指摘され、「夢やぶれて帰国した」と振り返る。

 そして今、スマートフォンの登場で、もう一度世界をまたにかける大きなビジネスチャンスが巡ってきたと田中氏。昔抱いた熱い思いを若い開発者たちに託し、世界に通用するオープン化時代の新サービスを一緒に作っていこうと呼びかけた。

Photo 一旗揚げようと思っていた頃の田中氏(画面=左)。Facebookとの提携で訪米した際、スタンフォード時代の寮に立ち寄り、当時の気持ちを思いだしたという(画面=右)

切磋琢磨して“面白いものが生まれる場”を提供

 KDDI ∞ Laboは、Androidを中心とした新サービスを手がけるベンチャー企業を支援するインキュベーションプログラム。募集したプロジェクトの中から、「ワクワクするかどうか」(田中氏)を基準に将来性のあるプロジェクトを選考し、開発面や経営面、プロモーション、海外展開を支援する。

 選ばれたチームは、3カ月でアイデアを形にすることが求められ、週1回のペースでKDDIのメンターと進捗について話し合いながら開発を進める。大手モバイル企業や経営コンサルタント、大学教授らで構成される社外アドバイザーに相談する機会を持てるのも特典の1つ。KDDIの六本木オフィスには専用のスペースが設けられ、開発者同士の情報交換の場として利用できる。ほかにもサービス開発に必要なOSまわりの最新情報や、検証用端末、サーバ環境も無償で提供されるなど、開発に専念できる環境が用意される。

 こうして開発されたサービスは、KDDIから事業化に向けた支援や経営面のサポートを受けることも可能。優秀なものについては、auのCMやau one Marketでのプロモーションの可能性もあり、KDDIとの提携や出資を検討するケースもあるという。

 なお、選ばれなかったチーム向けにも、定例の勉強会の開催や、開発用端末貸与、OS情報の公開を検討している。「端末ベンダーの中には、一緒に(開発者支援を)やっていこうというところもあり、Googleにも連携をかけあっている。積極的にやっていきたい」(KDDI 新規事業統轄本部 新規ビジネス推進本部 副本部長の塚田俊文氏)

Photo サービス開発だけでなく、経営面やプロモーション、海外展開もサポートする

Photo 外部アドバイザーからの支援も受けられる(画面=左)。KDDIの海外基盤を利用して海外展開もサポートする(画面=右)

Photo プログラムの参加中に受けられる支援(画面=左)と、サービス開発終了後のサポート(画面=右)

ほぼ制約なしの“懐深い”プログラム

 モバイルビジネスのオープン化が進み、他キャリアに対する優位性を打ち出しにくくなっていることから、“囲い込みのためのプログラム”かと思いきや、「ほぼ制約なし、それでいいじゃん」と田中氏は言い切る。

 プログラム進行中の3カ月については、他キャリアからの出資や提携を禁じているものの、それ以降は「欲をいえば最初はKDDIに出してほしいが(笑)、KDDIだけに提供してほしいとは言わない」(田中氏)「KDDIだけのサービスを作ってもらうつもりはない。他社に出してもOK」(塚田氏)という懐の深いプログラムだ。

 KDDIはオープン化時代の差別化戦略として、国内外のトレンド企業といち早く提携し、他キャリアに先行してサービスを展開するという手法を採っている。Skypeやjibe、コロプラ、Facebook、頓智ドットなどとの提携はその一環で、「(あとから全キャリアに展開されるとしても)商戦期に他キャリアにさきがけて新サービスを出すことが差別化につながっている」(田中氏)という。

 こうした“ちょっとした差別化”が大事だと考えるKDDIでは、この戦略を成功させるために「できるだけ早い段階で種を拾い、後方支援する」(田中氏)ことを重視。日本以外のアプリは、シリコンバレーにスタッフを派遣したり、ベンチャーキャピタルに人を送ったりすることで見つけているという。

 ただ、KDDI ∞ Laboについては、「頑張るエンジニアの力になりたい」(田中氏)という思いが先行しているようだ。「スタートする前から制約をつけてつぶすことはない。オープンプラットフォームの時代には、その時代なりのやり方があるのではないか」(同)。KDDI ∞ Laboは、オープン化時代の新たなビジネスモデルを模索するKDDIらしい取り組みといえそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月12日 更新
  1. スマホの“ミニ”外付けディスプレイが流行の兆し? 若者がインカメラではなく「アウトカメラ」で自撮りする理由 (2026年06月10日)
  2. 「それ、家じゃダメなの?」──スタバ長時間滞在に冷ややかな目 “スマホ操作”に“PCで仕事”も (2026年06月07日)
  3. 新エントリースマホ「arrows We3」発表 コンパクトな高耐久ボディーに5000mAhバッテリーや新カメラを搭載 (2026年06月11日)
  4. あのシャープが「ウェアラブル」に参戦? スマホ「AQUOS」新製品予告 詳細は16日に発表 (2026年06月10日)
  5. コレがたったの3630円――初代PlayStationを模したケース、セブン-イレブンなどで7月6日発売 (2026年06月11日)
  6. 動画配信「ABEMA」の障害復旧 約4時間17分にわたり視聴できず SNSに悲鳴【訂正】 (2026年06月10日)
  7. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  8. 「Pokemon GO Fest 2026:東京」のモバイル通信は快適だった? 初対策の楽天モバイルがピーク時に“最速”も記録 (2026年06月10日)
  9. 【ワークマン】3900円の「コーデュラ ネストリュック」 取っ手のあるインナーバッグ付き (2026年06月11日)
  10. ドコモの通信障害に“AIエージェント”が先手 「SNSの投稿」も常時監視するオペレーションセンターの裏側 (2026年06月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー