ワイヤレス技術の展示会「ワイヤレスジャパン2011」の基調講演に、NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏と、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇し、モバイル市場に対する戦略を語った。
両社とも、スマートフォンに注力するのは同じだが、ドコモの山田氏は「iモードサービスをスマートフォンに対応させることに取り組む」、KDDIの田中氏は「積極的にオープンなコンテンツを取り込んでいく」と、そのアプローチは異なっている。
2011年度のスマートフォンの販売目標を600万台とするドコモは、各種端末・サービスの開発から、コンテンツ開拓、サポートに至るまでの体制を一気にスマートフォンにシフト。「スマートフォンの顧客満足度を高めることを目指す」と山田氏は意気込む。その中で注力するのは、iモードサービスのスマートフォンへの展開だ。
「iモード端末からスマートフォンに変えると、iモードで使っていた機能がなくなって使い勝手が悪い、という声が挙がっている。iモード系サービスでやっていたものをスマートフォンでも対応できるよう、鋭意取り組んでいる」(山田氏)
夏商戦向けのスマートフォンは、9機種のうち5機種がおサイフケータイに対応。ワンセグも5機種が対応し、防水対応が3機種、赤外線対応が6機種となるなど、日本の携帯電話でおなじみの機能が続々とスマートフォンに搭載された。
サービスについては今夏をめどに、緊急地震速報などを伝えるエリアメール(CBS方式)とiチャネル、メロディコール、テレビガイド番組表がスマートフォンに対応。2011年の冬には、月額課金が可能なiモードの課金・認証システムに対応するとともに、マイメニューの引継ぎにも対応させる計画だ。
エリアメールは今冬にも、Xi(LTE)端末からETWS方式に対応させる予定。iコンシェルは年代や居場所、時間などのユーザー属性に合った情報を配信できるよう進化させ、今冬からスマートフォンでも使えるようにするという。
おサイフケータイは、Android 2.3でサポートされ、世界での普及が見込まれるNFCへの対応も進めるとし、2012年の移行期までにTypeA(MIFARE)、TypeBとFeliCaをNFCチップを搭載した端末上で使えるようにする方針。ゆくゆくはSIMにTypeA、TypeBとFeliCaのサービスを内蔵した形で提供する予定だ。
KDDIは2010年の秋からスマートフォンを主軸とする戦略にシフトし、スマートフォンのラインアップや対応サービスを急速に拡充している。夏モデルでは、フィーチャーフォンで人気を博した「INFOBAR」のスマートフォン版を投入するなど、“auらしさ”をアピール。SkypeやFacebookとの連携を進めるなど、PC発のサービスの取り込みにも積極的だ。
同社社長の田中氏は、これからの10年で“なんちゃってインターネット”だったモバイルが、“真のインターネット”になると説明する。過去10年のモバイルサービスは、PCのサービスを携帯電話向けにカスタマイズして提供してきたものであり、画面サイズや操作性、CPUパワー、ネットワークの速度などの限界から、制限されたものにとどまっていた。しかし、これらの制限が、高性能なスマートフォンや高速なモバイルネットワークの登場で解消され、「PCインターネットでできることが、完全にモバイルでできるようになる」(田中氏)という。
そうなるとユーザーは、デバイスの違いを気にすることなくサービスを利用できるようになる。こうした流れを受けてKDDIでは、同じアプリケーションをどのデバイスでもシームレスに、最適なネットワークで利用できるようにする「3M」(マルチユース、マルチデバイス、マルチネットワーク)戦略を打ち出し、今後10年で推進する計画だ。
田中氏はマルチユースのキーワードを“シームレス”とし、固定とモバイルとの間でシームレスに利用できるサービスを提供する考え。auブランドのサービスを携帯電話やスマートフォン以外のデバイスでも使えるように展開するとともに、「これまでにも増して積極的に、オープンなコンテンツを取り込んでいきたい」(田中氏)と意気込んだ。
また、マルチユース展開に向けた取り組みとしてサービスのクラウド化を進め、無料か月額課金で提供する構造に変えていくという。同社では第1弾として、月額1480円で音楽が聴き放題の「LISMO unlimited」を提供する予定だ。
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