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「本当に来ちゃった」――売上5億のピザ注文アプリ、ヒットの裏に「ワオ体験」

GPSを活用して住所の分からない屋外でもピザが届く――それがドミノ・ピザのスマートフォンアプリ「Domino's App」の特徴。売上5億円というヒットの背景には、利便性だけでなく“面白み”を求めた担当者の姿勢があった。

 「セールスへの貢献が非常に大きかった。1年2カ月で5億円の効果。ピザ1枚1枚に換算して考えると、とんでもないもの作ったなと実感する」

 宅配ピザのドミノ・ピザ ジャパンが展開するスマートフォン向けアプリ「Domino's App」が注目を浴びている。2010年3月にiPhone向けに提供を開始した同アプリは、端末のGPSを使って“自分の今いる場所”にピザを届けてもらえる機能が話題を呼び、同年7月にはアプリ経由の売上が1億円を突破。さらに2011年6月には5億円を達成した。Androidアプリも2010年12月から提供している。


photophotophoto Domino's App

 こうした成功が評価され、ディーツー コミュニケーションズが主催する広告賞「第10回モバイル広告大賞」では優秀賞を獲得。授賞式もかねたイベントが7月14日に行われ、開発に関わったドミノ・ピザ ジャパン、博報堂、カヤックの担当者や、賞の審査員らが成功の背景を議論した。

ピザの注文を“感動的体験”に

photo ドミノ・ピザ ジャパン マーケティング部広告販促課の岩崎雅也シニアスペシャリスト

 冒頭の言葉のとおり、ドミノ・ピザ ジャパンの岩崎雅也氏はアプリの反響に手応えを感じている。同氏にとってピザは、「エンターテインメントのジャンルと近しい食べ物」。アプリにおいても何らかの“面白み”を表現したいと考え、GPSを生かした注文機能を盛り込んだという。

 博報堂の堀宏史氏は、同アプリには便利さだけでなく「ワオ体験」があるとし、それがアプリの人気につながったと分析。ピザを頼むこと自体は何の変哲もない行為だが、住所の分からない場所にピザが届く驚きや新鮮味がユーザーの心を捉え、「人に言いたくなる、また使いたくなる」とみる。

 GPSを使った体験の面白さは、賞の審査員でクリエイティブディレクターの伊藤直樹氏も評価する。「いってみれば究極のお取り寄せ。犬がフリスビーをくわえて帰ってくるような快楽がある。“本当に来ちゃったよ”という、何度もくり返してしまう面白さがあるのでは」(伊藤氏)

 また、GPS機能以外にも「注文してもらうための仕掛けを入れている」と、カヤックの玉田雄以氏は話す。その1つがクーポンがもらえるミニゲームだ。ゲームでたまったスコアをクーポンに変えることができ、ゲームが注文するきっかけになる。そのほかにも、配達状況が「ショートコント風」(岩崎氏)に確認できたりと、ユーザーを楽しませるための工夫があるという。

photophotophoto 左から、博報堂エンゲージメントプランニング局の堀宏史氏、PARTYの伊藤直樹氏、カヤック企画部の玉田雄以氏

使いやすさのための制限 課題はAndroidアプリ

 岩崎氏は、注文フローのシンプルさも開発の重要なポイントとして挙げる。ピザの注文には生地の種類からトッピングをのせる場所までさまざまな選択肢があり、クーポンにも多様な種類がある。PCやモバイルのECサイトでは、こうした細かな選択に対応してきたが、アプリでは「より直感的に、一本道で注文できる」ことを第1に考え、一部のサービスを制限した。

 一方で、細かな注文への対応を求めるユーザーの声もあり、「悩む時がある」と岩崎氏。「どのデバイスでも同じサービスを受けたいというのは、ユーザーとして当然の要望」(岩崎氏)だが、例えば紙のクーポンを写真で判別するといった機能を取り入れると、アプリの容量が増えるだけでなく通信する回数も増え、「快適な注文から遠ざかってしまう」(岩崎氏)という懸念もある。

 また、iPhoneに比べてAndroidアプリが「セールスで苦戦している」(岩崎氏)のも課題だ。注文比率は現状でiPhoneの10分の1程度で、「伸びてはいるが、iPhoneのように突き抜けてくような快感がない」という。

photo ディーツー コミュニケーションズ ドコモメディア事業本部本部長兼広報宣伝部部長の篠崎功氏

 ディーツー コミュニケーションズの篠崎功氏は、Android端末がITに関心の少ないユーザー層にも多く利用されはじめていることを指摘し、これがiPhoneユーザーとの反応の差につながっているとみる。

 岩崎氏も、iPhoneユーザーは「使いこなし欲」や「開拓精神」が高い印象をいだいており、「勝手なひも付けだが、そういう人にピザ好きが多い気もする」とコメント。一方で、「我々のメインのターゲットはファミリー層。これからはそういう層にAndroidが普及していく。うまい対応を考える必要がある。同じアプリじゃだめなのかもしれないし、アプリじゃないのかもしれない」と話した。


 GPSを活用したサービスはフィーチャーフォン時代から存在するが、サービス開発の自由度が高いスマートフォンの登場で再び注目をあびている。また、モバイル界隈ではソーシャルゲームの流行はもちろんのこと、サービスの中にゲーム性を組み込むことでユーザーのモチベーションを高める“ゲーミフィケーション”といった言葉も聞くようになった。Domino's Appはこうしたトレンドを取り入れて成功したアプリの好例といえるだろう。

 6月に構築したばかりのドミノ・ピザのスマートフォン向けサイトでは、位置情報を活用したSNS「foursquare」とのタイアップ企画も実施されている。岩崎氏によれば、同社ではfoursquareが「とても流行っている」そうだ。こうした担当者のネットサービスに対する感度の高さも、アプリの成功をささえているのかもしれない。

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