既報の通り、KDDIは7月27日、Windows Phone 7.5(コードネーム:Mango)をOSに採用したスマートフォン「Windows Phone IS12T」を発表した。同モデルは日本初のWindows Phone採用端末。発売は9月以降と少し先だが、最新OSバージョンであるMangoを搭載したスマートフォンは「このまま発売されれば世界初」(日本マイクロソフト 樋口泰行社長)となる予定だ。
KDDIはWindows Phone IS12Tをコンシューマーに広く展開していく考えで、法人向けの端末販売やソリューションの展開は現時点では未定という。だが、Microsoft純正のOfficeアプリを搭載し、「Sky Drive」や「SharePoint」「Office 365」といったWebサービスとファイルをシームレスに共有できるなど、ビジネスシーンでも役立つ機能をWindows Phoneは備えている。
全般的な機能や端末スペックの詳細は+D Mobileの解説記事に譲り、ここでは“仕事”の視点でWindows Phoneの魅力を探っていこう。
iOSやAndroidでもアプリでOfficeファイルを閲覧することはできるが、こうしたサードパーティーの互換アプリでは表示の崩れといったトラブルが起きることも多い。その点、Microsoft自身が開発した純正のOfficeアプリなら、安心して各種のファイルを閲覧・編集できるだろう。アプリはOffice 2010/2007/2003を正式にサポートしており、これらのバージョンで作られたファイルなら問題なく表示できるという。
PowerPointでは、スワイプ操作でスライドを再生できる。アニメーションも含めてPCと同じように再生されるので、プレゼンテーションのイメージを確認するのにもってこいだ。編集機能はあまり豊富ではないが、文章の変更やスライドの削除といった修正は端末から簡単にできる。
Wordはドキュメントの閲覧に加え、テキストの入力や、フォントサイズやカラーの変更、太字や斜体といった文字装飾、コメントの追加といった基本的な機能が利用できる。これだけの機能があれば、端末で一から原稿を書き上げることもできそうだ。
Excelでは、図表も含めてPCと同じようにシートを表示してくれる。ピンチ操作でシートの拡大/縮小にも対応する。編集機能では、セルの入力はもちろん、関数の入力アシスト機能も備え、一覧の中から目当ての関数を探すことができる。また「オートSUM」ボタンも使うことも可能だ。
このほかにも、PC向けOfficeの上位エディションに含まれる「ノート」(OneNote)の機能を搭載。説明員によればこのノート機能はEvernoteのようなものであり、テキストや音声、写真といったデータを手軽に記録し、クラウド上に保存できるものだという。
さらに、Windows PhoneのOfficeアプリは、端末内に保存したOfficeファイルにアクセスできるのはもちろん、クラウドサービスと連携してファイルを管理できるのが大きな特徴だ。例えば、オンラインストレージのSky Drive(25Gバイトまで無料)に保存したOfficeファイルもアプリから閲覧・編集できる。
また、SharePointやOffice 365といった企業向けサービスとも連携が可能で、これらのサービス上に保存されたOfficeファイルに端末からアクセスできる。PCなど他のデバイスで作成した各種ドキュメントをこうしたWebサービスに保存しておけば、“ノマドワーク”の効率も一層高まるだろう。
Office以外の機能に目を向けると、複数のカレンダーを統合管理できるスケジュール機能なども便利そうだ。Windows Liveに加え、OutlookやExchange、Googleといったカレンダーと同期でき、カレンダー上にそれらを一度に表示できる。説明員によれば、色によってどのカレンダーに書きこまれた予定なのかが分かるようになっているとのこと。こうした機能はプライベートと仕事の予定を一緒に管理するのにも役立つだろう。
さらに、Windows Phoneにおけるアドレス帳機能「Peopleハブ」にも注目したい。Peopleハブは、単に知人の電話番号を管理するだけでなく、SNSとの連携機能も備え、FacebookやTwitter、さらに企業向けSNSのLinkedInなどの投稿を人ごとにチェックできる。
また、知人を任意のグループに分け、グループに対して一斉メールを送信したり、グループに含まれる知人のSNSをチェックしてリアクションするといったことが可能になる。端末のスタート画面にグループへのショートカットを配置することもできる。同じ部署やチームのメンバーをグループに分けておけば、素早い情報共有が可能になる。
さまざまなSNSにちらばる知人のプロフィールをアドレス帳にひもづけるのは面倒な作業にも思えるが、Peopleハブは「名前が似ている」「メールアドレスが同じ」といったことを手がかりに同一人物を推定し、ユーザーにサジェストする機能も持っている。同一人物だとユーザーが確認すれば、それらのプロフィール情報をPeopleハブ上で統合して表示できるのだ。こうした機能を活用すれば、SNSの情報を含めた管理もしやすくなるだろう。
そのほか、Windows PhoneはSSL-VPNやリモートロック、ワイプ機能などにも対応。また、マーケットストアでは審査を通過したアプリのみが配信されるので、マルウェアの混入といった危険性は比較的少ないと考えられる。
スマートフォンの法人導入は現状のところiPhone、Androidが主流であり、通信キャリアも当面はこれらに注力していくだろう。しかし、Microsoft製品との親和性を武器にできるWindows Phoneも、法人端末としてのメリットはありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.