上司にとっても部下にとっても、考課というのは難しいものです。今回は、あなたの考課と行動傾向を上手く活用することで、一皮むけたビジネスパーソンになるためのヒントをご紹介しましょう。
9月末〜10月にかけては、上半期の考課を控えている人も多いのではないでしょうか。ウキウキしている人もいれば、憂鬱な気分の人もいるかもしれません。もしかしたら考課する側で、部下をどう考課するかで悩んでいる最中かもしれませんね。
上司であれ部下であれ、もしあなたの会社に考課の仕組みがあれば、ぜひ今回の考課をこれからの成長に役立ててほしいタイミングでもあります。今回は、あなたの考課と行動傾向を上手く活用することで、一皮むけたビジネスパーソンになるためのヒントをご紹介しましょう。
現在、人事制度上では「考課」と「評価」という用語の両方が使われています。本コラムでは、本来の意味を踏まえ、制度に関わる用語を「考課」と表現します。(以下、出典は『大辞泉』)
考課
- 公務員・会社員などの勤務成績を調査して優劣を定めること。「人事―」
- 銀行・会社などの営業成績を調査・報告すること。
- 律令制における官吏の勤務評定。
評価
- 品物の価格を決めること。また、その価格。ねぶみ。「―額」
- 事物や人物の、善悪・美醜などの価値を判断して決めること。「外見で人を―する
- ある事物や人物について、その意義・価値を認めること。「―できる内容」「仕事ぶりを―する」
- 「教育評価」の略。
まず考課する上司の立場で考えてみましょう。
人事制度を策定するコンサルティングの現場では、上司に考課制度に関するインタビューを実施します。そうして考課する側の悩みも聞き出すのですが、「考課は本当に難しい」「プロセスをみてやりたい気持ちがあっても、自分も目一杯仕事を抱えている中では難しい」「自分としては評価しているつもりだが、伝わらない」「部下の成長のために甘い評価ができない」「自分も(今の制度に)納得できていない」など、制度に対する悩みや不満が山ほど出てきます。
しかし、そうした悩みや不満があることを部下の前で伝えている人は……というと、意外といないのです。彼らは部下の前では、そうした弱さを見せてはいけないと思いこんでいるようです。
その結果、全員を無難に考課する「中心化傾向」や、一時期の際立った業績の記憶にひきずられる「ハロー効果」という“考課エラー”を起こします。どちらのエラーにせよ、考課を受ける側がイメージしていた結果と異なっていたのであれば、考課される側にとっては、納得できず不満につながる――というわけです。
さて、それではあなたに3人の部下がいるとします。Aさんは左脳タイプで論理性高く、緻密で間違いのないタイプ。Bさんは右脳タイプで明るく、チームの場を盛り上げるムードメーカー。Cさんは両方の脳タイプを持っているらしく、状況に応じて自分を使い分けるバランスタイプ。
もしあなたが、仕事をこの3人の部下に割り振るとしたら、どのような仕事を任せますか。仕事(業績目標)に余裕のない時期/余裕のある時期でそれぞれ考えてみてください。
余裕のない時期であれば、結果重視で各々の得意な領域に仕事を割り振るはず。また、余裕のある時期であれば、今後の業務領域や視野の拡大を鑑みて、成長してほしい能力が開発できるように仕事を割り振るのではないでしょうか。例えば「会議の準備」です。
部下 | 発揮能力 | 業務内容 |
---|---|---|
Aさん(左脳タイプ) | 情報収集力・分析力 | ・データ等の収集 ・会議資料の作成 |
Bさん(右脳タイプ) | 社内のコミュニケーション力 | ・会議案内の作成や告知 ・出欠のとりまとめ |
Cさん(バランスタイプ) | 対外的なコミュニケーション力 | ・会議室の手配 ・懇親会の手配 |
部下 | 開発能力 | 業務内容 |
---|---|---|
Aさん(左脳タイプ) | 対外的なコミュニケーション力 | ・会議室の手配 ・懇親会の手配 |
Bさん(右脳タイプ) | 情報収集力・分析力 | ・データ等の収集 ・会議資料の作成 |
Cさん(バランスタイプ) | 社内のコミュニケーション力 | ・会議案内の作成や告知 ・出欠のとりまとめ ・Aさん、Bさんのサポート |
このようなイメージを描く人が多いと思います。さてそれでは「この会議の準備を考課して」と言われたら、どうしますか。どの点を考課するでしょうか。きっと難しいのではないでしょうか。
考課される側の部下としてはどうでしょう。
今回は単純化するために会議の準備を考えてみましたが、日常の業務はもっと複雑です。特に現代のように変化が激しい時は、期初の業務範囲外だった事案が、期中に業務範囲になったり、ある程度結果が見えていたものが、突然中止になったり、ほかの部署に移管されたり――。そのため、よほど目立った結果が出せない限りは、好評価を得ることは難しいでしょう。
しかし私たちが押さえておきたいのは、会社からの評価ではありません。自分達に与えられた役割の中で、どれだけプラスアルファの仕事ができたかどうかなのです。
こんなことを、ぜひ上司と話し合ってほしいのです。
考課に一喜一憂する気持ちもよく分かります。しかし、与えられる仕事によっては、一時の成果は出せなくても成長できる可能性があります。一喜一憂を引きずる自分と、「評価は成長の結果、自然と付いてくる」と考える自分と、どちらが長い職業人生を充実させられるでしょうか。
また、あなたが上司で、部下が期待している考課ができないのであれば、あまり取りつくろわずに本音で話してください。「無責任かもしれないけれども、制度の考え方に納得できていないし、仕組みもイマイチよく分からない」ということだったり、「見てあげたかったんだけど、自分も手一杯で正直よく分からない。会社も会社を維持することで厳しい時期だから、あなたの本来の働きぶりに見合っていないかもしれない。考課という形ではできないけれども、あなたの働きぶりのこんなところは評価しているし、感謝しているよ」――など、部下に普段伝えていないことを、伝える機会にしてほしいのです。
日本人は愛情表現が苦手と言われていますが、ちょっとだけ苦手を克服して、照れくさいヒトコト、伝えてみてください。例えばサイボウズの取り組みなど、能力を伸ばす上での参考になりますよ!
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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