IPAの未踏ビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞し、天才プログラマー/スーパークリエイターにも認定された杉山氏が解説したのは、無料の映像編集ソフト「LoiLoScope」。無料体験版を用意している最新ソフト「LoiLoTouch」は、Windows 7が標準でサポートするマルチタッチに対応しており、指を使って直感的な動画編集が可能だという。
一般に、ソフトウェアビジネスは「製品の新バージョンが出るたびに、ユーザーにお金をもらう」もの。しかしLoiLoでは、「最初に製品にお金を払ってもらったら、その後のアップデートは無料」という料金体系を採用している。
「例えばWebサービスって、知らない間にどんどん機能が追加されていって、久しぶりにログインしたら『あ、なんか変わったな』って感じじゃないですか。それが当然というか、そういう考え方に自分自身慣れてしまったというのがありますね」(杉山氏)
「PCのソフトって、iPhoneでいうApp Storeのような(世界規模で売買できる)お店がない。Googleがお店なんですよ。そして、ユーザーはググるときに絶対『フリー 動画編集』って入力して検索するんですよ。じゃあそこでLoiLoが一番になればいいのでは、と思って(ソフトの無償提供を)始めた」
ライブドアのメディア事業全体を統括する田端氏は、livedoor Blogの現状を解説。現在310万人のユーザーがいるというlivedoor Blogだが、有償プランのユーザー数は全体の1〜2%ほどだという。「ユーザーにとって無料で使えるというのはもはや当然のこと」と話す田端氏は、フリーミアムの考え方について「フリーというと一見“ただ働き”みたいな気がするが、ユーザーの意識はそうではない」と指摘。
「例えばWikipediaとかブログとかって、ユーザーが自発的に書いているもの。ニコニコ動画の職人文化なんかもそうで、1円の得にもならないのによくやるなあと思うけれど、彼らはお金ではなくて、純粋に(その行為自体を)楽しんでいる。我々はそれを――『活用して』っていう言い方は嫌なんで、『おこぼれにあずかって』――ビジネスにしている」
田端氏は前職のリクルート時代に、フリーペーパー「R25」の立ち上げにも関わっている。R25創刊の際に、田端氏が考えていたというビジネスプランの一端はこうだ(詳細は田端氏のブログで解説されている)。
大量に配布し、大量の人に届けるために、雑誌自体は無料にした。多くの人に読んでもらえれば、それだけ広告効果が上がり、広告単価が上がり、広告収入を上げられる。増えた広告収入を編集コンテンツ費に回せば、さらにコンテンツのクオリティを上げられる――というわけだ。
「実際には、青二才が描いためちゃくちゃなモデルだった」(田端氏)。配布部数(リーチ)と広告価値が正比例する、というのが「机上の空論」だったからだ。しかし、現在のネットビジネスでは、「Googleの提供する検索エンジンやWebメールなど、無料“だからこそ”最高品質になり得る」。
後編では引き続き、フリーミアムと相性がいいという「最大化戦略」や、無料の時代にも確実に存在するという「お金を払いたがるユーザー」についてのトーク内容をリポートする。
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