「部下の指導」を見える化する「現場の情報」を見える化する

「何でジュースを持ってきたんだ! お前、頭悪いんじゃないの?」と叱ってはいけません。「お前、頭悪いんじゃないの?」という文言は、人間性を追及していることになります。「人」ではなく、「事」を叱りましょう。

» 2010年04月26日 09時42分 公開
[小山昇,Business Media 誠]
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 長引く不況の中、自社の経営に悩みを抱えている中小企業の経営者が多いのではないでしょうか。そんな中、経営の内部を社員に公開し、徹底的な透明化(=見える化)を継続することで、社員のモチベーションを高め、増収増益を達成した会社があります。それが経営サポート事業などを行なう武蔵野――。

 とはいえ仕事の見える化は言うほど簡単ではありません。誠 Biz.IDの読者にも悩んでいる人が多いはず。そんな読者に「中小企業のカリスマ」と呼ばれる同社の小山昇社長が「現場の見える化」の方法を伝授します。


この連載は書籍『経営の見える化』から抜粋、編集したものです


「人」ではなく、「事」を叱れ

 情報を伝達する場合は、1対1ではなく、1対N(複数)が基本であると説明しました。そのほうが情報を見える化できるからです。

 同じように、部下を指導するときも、1対Nが基本です。1対1にしてしまうと、組織のナレッジになりません。ですから「みんなの前」で指示を出す。「みんなの前」で叱るんです。武蔵野の社員が明るいのは、叱るのも叱られるのも、「みんなの前」だからです。

 ただし、叱るときは、人間性を追及してはいけません。叱っていいのは、「人」ではなく「事」。「事」だからこそ、人前で叱ることができるわけですね。

 「コーヒー持ってこい」と命じられたのに、部下がジュースを持ってきた。このとき「もう1回持ってこい」と叱るのはいい。あくまでも「仕事の間違い」を叱ったわけであり、その社員の人間性を否定しているわけではありませんから。

 一方、「何でジュースを持ってきたんだ! お前、頭悪いんじゃないの?」と叱ってはいけない。「お前、頭悪いんじゃないの?」という文言は、人間性を追及していることになります。

情報共有は1対N、コミュニケーションは1対1

 情報を共有するには、1対Nのコミュニケーションが適しています。ところが、社員のモチベーションを醸成するためには、1対Nより、1対1のコミュニケーションのほうがいいと思います。

 例えば、部下と食事に行くときは、1対Nの飲み会ばかりせず、1対1で食事をすることも大切です。そのほうが腹を割って話ができるので、信頼関係を築きやすいんですね。部下も「上司が自分のことを必要としてくれている」と分かった瞬間に、「頑張ろう」と思うでしょう。

 そのためには、1人の上司にたくさんの部下を持たせないほうが得策です。せいぜい8人まで、だとわたしは思います。10人も20人も部下がいると、1対1のコミュニケーションが取りにくくなります。

「社長と飲み歩き会」を実施せよ

 社長ともなると、さすがに社員と1対1で飲みに行く機会は作れません。その代わりわたしは、定期的に「社長と飲み歩き会」を実施しています。この会は、わたしと、社員5名が午後5時半から夜12時まで、6時間半、文字通り飲み歩くんです。

 なぜ5人かといえば、全員が1つのテーブルにつけるから。全員で8人になると、テーブルが分かれてしまいますが、わたしを含め6人なら、席に座ったままでも、全員にお酌できます。

 6時間半ずっと飲んでいると、どんな人も猫をかぶっていられなくなります。緊張感が続かないんです。社長の前にしてはじめは身構えていた社員も、お酒の力もあって、だんだんフラットな気持ちになるんですね

飲みに行った回数を月末に申告

 わたしは、上司と部下がどれだけコミュニケーションを取っているかを申告させています。月末に「部下との同行回数」や、「部下と個別に飲みに行った回数」をメールで送らせ、「部下とのコミュニケーションチェック」という表を作成。回数を見える化しています。

 なぜこのような表を作っているかというと、要するに、指導するときは、気持ちや口だけで指導してはいけない、ということです。「頑張れ、頑張れ」と気持ちに訴えかけるだけでなく、ファジーなことを数字で表したほうがいい。「部下とのコミュニケーションチェック」は、そのための「道具」の1つです。

 「頑張れ」という言葉だけでは、人はなかなか行動しません。人が具体的に行動を起こすためには、「数字」で示したほうがいいと思います。

経営計画は1冊の手帳にまとめなさい

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著者紹介 小山昇(こやま・のぼる)

 株式会社武蔵野の代表取締役社長。その経営手法には定評があり、2000年に日本IBMと並んで、日本経営品質賞を受賞した。「中小企業のカリスマ社長」と呼ばれ、現在は全国300社以上の中小企業に経営のサポートを行っている。



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