「会議の進め方」を見える化する「現場の情報」を見える化する

普通、会議は、一番偉い人(つまり社長)から話し始めます。ところが社長は現場に出ていないため、お客様の情報も、ライバルの情報も持っていません。現場のことを分かっていない社長がトンチンカンな指示を出しているのですから、いつまでも業績が上がらないのです。

» 2010年04月23日 09時10分 公開
[小山昇,Business Media 誠]
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 長引く不況の中、自社の経営に悩みを抱えている中小企業の経営者が多いのではないでしょうか。そんな中、経営の内部を社員に公開し、徹底的な透明化(=見える化)を継続することで、社員のモチベーションを高め、増収増益を達成した会社があります。それが経営サポート事業などを行なう武蔵野――。

 とはいえ仕事の見える化は言うほど簡単ではありません。誠 Biz.IDの読者にも悩んでいる人が多いはず。そんな読者に「中小企業のカリスマ」と呼ばれる同社の小山昇社長が「現場の見える化」の方法を伝授します。


この連載は書籍『経営の見える化』から抜粋、編集したものです


会議は、社長から話し始めてはいけない

 会議を行なうとき、普通の会社は、社長から話し始めます。ところが社長は現場に出ていないため、お客様の情報も、ライバルの情報も持っていません。現場のことを分かっていない社長がトンチンカンな指示を出しているのですから、いつまでも業績が上がらないんです。

 武蔵野も赤字のときは、社長が一番に話を切り出していましたが、今では、「現場のことが分かっている社員」、つまり職責下位から発言するしくみです。

 現在の武蔵野は、「経営計画書」に「情報マネジメントに関する方針」を定めています。

 経営判断に必要なお客様の情報を吸い上げ、正しい決定を行なうために、「5つの情報」項目を共通化し、進捗会議などで活用する。

  • ア:実績報告(数字)
  • イ:お客様からの声(褒められたことやクレーム)
  • ウ:ライバル情報
  • エ:本部・ビジネスパートナー情報
  • オ:自分・スタッフの考え

 武蔵野の会議は、職責下位から、このア〜オの順番で報告しなければなりません。マーケットには「お客様とライバルしかいない」わけですから、自分の意見は最後でいい。お客様とライバルの情報を後回しにするような会議は「会議(かいぎ)」ではなく「怪議(かいぎ)」なんです。

 また、「お客様からの声」と「ライバル情報」に関する報告書は、「A4サイズの用紙に2行」までで、それ以上書いてはいけないルールになっています。なぜなら、A4サイズで1枚も2枚も書かせてしまうと、ウソを書いたり、言い訳をしたりするからです。2行以内であれば、「いつ、どこで、だれが、何をしたのか」という客観的な事実だけしか書けません。

 社長は、2時間から2時間半、ずっと話を聞いているだけです。そして全員の報告を聞き終えたら、「これは追加販売しろ」「これはやめろ」「この社員をあっちの部署に異動しろ」と決定を下します。これなら現場の事実に基づいた方針を決められるので、社員は誰も文句をいいません。

 武蔵野の会議は、話し合いをするところではなくて、「いち早く決定を伝えるところ」なんです。

「現場の声」を吸い上げるしくみを作る

 では、職責上位にいる部長は、どれだけ現場のことが分かっているのでしょうか? 普段からお客様と接している一般社員のように、現場の事実を正確に把握できているのでしょうか?

 残念ながら、分かっていません。部長は数字(実績)の報告はできますが、「お客様からの声」も「ライバル情報」も報告できないんですね。

 そこで部長は何をしているのかといいますと、課長や、店長や、所長を集めて、同じような会議を開くんです。そうすれば、現場の意見を理解できます。

 課長はどうでしょう? 課長も、部長と同じです。数字の報告はできますが、お客様やライバルの情報を持っているわけではありません。持ってないまま会議に出れば叱られてしまいますから、課長はアルバイトやパート、一般社員を集めて、現場の情報を収集しているわけです。

 つまり武蔵野では、現場の生の情報が、下から上に吸い上げられるしくみができています。下から上へ、情報が見える化されているわけです。

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著者紹介 小山昇(こやま・のぼる)

 株式会社武蔵野の代表取締役社長。その経営手法には定評があり、2000年に日本IBMと並んで、日本経営品質賞を受賞した。「中小企業のカリスマ社長」と呼ばれ、現在は全国300社以上の中小企業に経営のサポートを行っている。



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