その残業、本当に必要ですか?朝シフト仕事術

私たちビジネスパーソンが残業をするのは、やむを得ないことなのでしょうか? 残業の多くは、生産性がきわめて低く、実際には必要がないものです。朝の時間に注目することで残業を減らし、生産性を上げ、生活の質を向上させてみませんか?

» 2011年07月13日 12時45分 公開
[永井孝尚,Business Media 誠]

連載「朝シフト仕事術」について

 本連載は7月16日発売の書籍『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』から抜粋したもの。“朝活”が大ブームの今、医者、起業家、脳科学者が書く朝活の本も売れているが、本書は日本IBMに勤務する現役ビジネスパーソンが現在進行形で朝時間を有効活用していることが特徴だ。その成果・効果を大公開。実体験を元に、朝は夜の6倍生産性があがる理由を分析した。

 著者自身も20代30代のころは、仕事の忙しさが残業に反映されていると思い込み、“残業自慢者”でもあった。しかし、残業 → ストレス → 飲む → 寝坊 → 満員電車 → ぎりぎり出社 → 仕事の山という負のサイクルにどっぷりとはまっていたことに気づく。それをきっかけに、時間の使い方、仕事のやり方を研究しはじめ、朝時間にシフト。家族と過ごす時間、自分のための時間が増え、ライフワークをしっかりと楽しんでいる。そんな朝時間の有効性を共有する「朝カフェ次世代研究会」を主宰し、朝時間仲間をどんどん増やし、仕事とプライベートを充実させる啓蒙書。生活を見直したいと考えるビジネスパーソンにおすすめの1冊だ。


 本書を手にとってくださったあなたに、最初に質問です。私たちビジネスパーソンが残業をするのは、やむを得ないことなのでしょうか?

  • 「やむを得ないことです」
  • 「できればないほうがいいなあ」
  • 「必要悪!?」

 いろいろな答えがあると思います。

 本来、会社は、仕事に合わせて人を配置しています。ですから、仕事は就業時間内に終わるようにできているはず。しかし、なかなかそうはならずに、やむを得ず残業しなければならないことが多いのも現実です。

残業続きの会社人生

 かくいう社会人27年目の私も、以前は残業ばかりしていました。今、思い出してもあのときはきつかったという経験をいくつかピックアップしてみましょう。

1:製品企画プロセス担当だったころ

 入社数年目の話です。アジア各国をカバーする製品企画プロセスをほとんどゼロの状態から立ち上げました。慣れない英語でアジア各国や米国とやりとりし、膨大な製品の企画情報を管理していました。一番忙しい時期は、毎晩遅くまで残業し、週末も出勤、プライベートがほとんどない状態が1年間続きました。

2:お客様プロジェクトのプロジェクトマネージャーだったころ

 あるお客様プロジェクトのプロジェクトマネージャーを担当していたときのこと。週明け月曜日の朝には、お客様の現地にシステムを配送しなければならないのに、金曜日の夜の時点で、解決しない不具合がまだ数十件発生していました。チームで2日続けて徹夜をして、何とか間に合わせました。

3:製品の開発マネージャーだったころ

 自分のチームで開発した製品を採用いただいた地方のお客様で、システムに不具合が発生しました。早朝に羽田を出発、飛行機の日帰り出張でお客様のオフィスにお詫びに行き、状況を確認。その日の深夜にオフィスに戻って問題を再現したうえで、チームメンバーとともに徹夜で修正・テストして問題が再現しないことを確認し、翌朝にはその修正モジュール(構成単位)を出荷しました。

4:プリセールス担当だったころ

 ライバル会社との三つどもえの競合案件で、金曜日にお客様に新システムを提案し、翌週月曜日までに回答を求められました。その日の晩とその週末にチーム全員で集まって協議して、月曜日に再提案。このような状態が数カ月続きました。最終的には案件を獲得、全国展開につながりました。

 同じような経験をなさっている方も多いのではないでしょうか?

 確かにやむを得ない事情で、残業しなければいけないこともよくあります。しかしながら、今から振り返って考えてみると、これらの中には、一見突発的な出来事に見えても、実はそのトラブルにはちゃんと原因があって、気をつけていれば未然に防げたケースもあるようです。

 そうしたトラブルの何割かは、相手とのコミュニケーションがうまくとれず、行き違いや誤解が発生したことによって起きるものです。また、進め方の段取りが悪くて、予想以上に時間がかかってしまったということもあるでしょう。

 原因がはっきりしているということは、あらかじめ防止策を講じていれば、未然にトラブルを防ぎ、残業を発生させないで済んだ可能性もあります。

何も生み出さない残業は時間のムダ

 一方で、世の中には「その残業は本当に必要なの?」と首をかしげざるを得ない場面が多いのも事実。例えば、午後11時を過ぎてもうすぐ終電、という時間なのに、なかなか進捗しない会議。参加者は疲労の色も濃く、もはや頭が回っていません。会議も雑談モードと堂々巡りの議論の繰り返しで、時間だけが過ぎていきます。終電間近になってしかたなく議論を打ち切り。見切り発車をするか、翌朝からふたたび会議です。

 このような残業の多くは、生産性がきわめて低く、実際には必要がないものです。


 ――というような経緯で私は就業時間後の残業に疑問を持つようになりました。次回は「私が早起きに目覚めた理由」を紹介します。

著者紹介 永井孝尚(ながい・たかひさ)

 日本IBMソフトウエア事業部マーケティング・マネージャー。1984年3月、慶應義塾大学工学部卒業後、日本IBM入社。製品開発マネージャーを担当した後、現在、同社ソフトウエア事業部で事業戦略を担当。2002 年には社会人大学院の多摩大学大学院経営情報研究科を修了。朝時間を活用することで、多忙な事業戦略マーケティング・マネージャーとして大きな成果を挙げる。一方で、ビジネス書籍の執筆や出版、早朝勉強会「朝カフェ次世代研究会」の主宰、毎日のブログ執筆でさまざまな情報を発信。さらに写真の個展開催、合唱団の事務局長として演奏会を開催するなど、アート分野でも幅広いライフワークを実現している。主な著書に『バリュープロポジション戦略50の作法 - 顧客中心主義を徹底し、本当のご満足を提供するために』などがある。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ