藤原 ……これでどうですか?
開米 おお、なるほど……予防策を打ってできるだけ患者を減らすのが肝心で、そのために事前に告知をしっかりやることが必要、それでも発生してしまった患者は治療できるように体制を組んでおく、ということですね。
藤原 そう、そうなんですよ。
開米 いいですね! こんなふうに「見出しを付ける」だけで相当変わってくるんです。ここまでだと、最初の4か条はそのままで、見出しを付けただけですから、やろうと思えば3分程度でできるんじゃないですか?
藤原 そうですね、ええ、3分もあれば。
開米 個条書きだけで書かれてるプレゼン用のスライドはよく見掛けますから、幾つか選んで「個条書きに見出しを付ける」だけの改造、やってみるといいですよ。ほんの数分でできるはずです。
藤原 いやー、ほんとですねえ、やってみますわ。
開米 ところで、最後に「通常」という言葉がありますけど、これは「新型」とは違うんですか?
藤原 あ、はい。「治療」のところまでが新型インフルエンザの対策で、一種の非常時に備えた体制です。これが一段落して、封じ込めることができたと判断できたら新型対策は「終結」して、昔からある通常のインフルエンザと同じ体制に戻ります。
開米 あ、それなら最後の「終結」だけがちょっと性格違いますね。であればここはちょっと一工夫した方がいいかな。
藤原 そうですね、もう少し……。
と、2人で悩んだ結果でき上がったのがこんなチャートです。
当初の(1)〜(4)の個条書き各項に見出しを付け「告知→予防→治療」そして「平常化」というプロセスが分かるようにしてあります。これで「新型」終結の区切りも明確になりました。
さて、ここまでいかがでしょうか。「告知」や「予防」といった、ほんの数文字を見出しとして追加するだけで、一気に理解しやすくなること、ご理解いただけたでしょうか? 見出しを付けるという、3分程度でできるようなワークが非常に効果的なんですね。
見出しを付けるというのは、抽象化することでもあります。「ワクチンを接種する」という具体的な行動を「予防」策という言葉で抽象化しているわけです。抽象化すると、それを似た事例との類推で理解しやすくなります。例えば「告知→予防→治療」というプロセスはインフルエンザに限らず、多くの病気の対策で共通に出てくるものです。そのため、こうして見出しを付けて抽象化してプロセスが分かるようにしておくと「基本的な流れは一緒なんだな」という安心感を持った上で細部を読み込むことができるようになります。
見出し一言、値千金。
今回の事例(最初の図)のように、個条書きだけで書かれたプレゼン資料はよく見かけます。そこに一言、見出しを付けてみませんか? ほんの3分の見出しワークで、その1ページの伝達力がまったく違ってくることに驚かれることでしょう。
当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」というご相談を歓迎しております。「改善案のヒントが欲しい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp)。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。
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著者・開米瑞浩氏が講師となって「アイデア・思考を見える化」をテーマとするセミナーを開催します。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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