それは、こんな方法です。いつも分かりにくいリポートを書いてくる社員に対しては、
以上、おしまい。要は「分解・分類・見出し付け」の中の分類だけに絞ってやらせることです。
後藤 これだけ? たった5分?
開米 5分程度ならちょっとしたすき間時間でやれますから、そのぐらいに収めておく方が日常的に継続しやすいです。
後藤 でも、分類だけでいいんでしょうか
開米 分類すると自然に見出しを付けたくなりますから、大丈夫ですよ。
後藤 個条書きを使っている文書というのはどうして?
開米 個条書きは最初から分解されてるので手間が省けるんです。それから、ある程度関係のある情報がまとまっているので扱いやすい場合が多いです。個条書きはビジネス文書や技術文書でよく出てくる、というのも理由の1つですね。
後藤 ははあ、なるほど。それ、本人の書いた文書の方がいいんですか?
開米 理想はそうですけどあまりこだわらなくていいです。
後藤 えっと、5カ条以上にも何か理由があるんでしょうか?
開米 5カ条以上の個条書きは、私の経験上、分類できることが多いんです。それに、5カ条以上になると読む側の集中力が落ちてくるので、分類することで分かりやすくなるのを実感しやすいですね。まあ、10か条超えると今度は多すぎるのでそれ以下の方がいいですが。
後藤 3〜5分後に意見を聞くのにも何か理由が?
開米 3分ぐらいは考えてほしいんですよ。考える体験をすることが大事なので、1分ではちょっと短すぎます。その間後藤さん自身は他のことをしてて大丈夫ですよ。
後藤 あ、そうなんですね。じゃ、最後の「いいね! ありがとう!」というのは?
開米 ありがとう、と言われたらうれしいじゃないですか。
後藤 そりゃそうですね……。
開米 習慣的な行動になるためには、自分のちょっとした努力が人の役に立って感謝されるという体験が必要なんです。これ、対象者が文書化能力の乏しい社員なので、書くことに苦手意識を持ってるはずですよね?
後藤 いやもう絶対バリバリ苦手意識持ってますよ、間違いなく。
開米 なので、うまくできないかもしれないというストレスを感じない形で成功体験を積んでほしいわけです。それを何度か繰り返すことで、自分にもやれるという感触をつかんでほしい。その体感があれば、自分が文書を書くときも気を付けるようになります。だから最初のうちはネガティブな評価は厳禁です。
後藤 良かったときだけ喜べばいいと……ふむ、それなら……。
開米 それなら、何か?
後藤 僕も答えを考えてないものを課題にしてもいいんですね、きっと。
開米 あ、はい、その方がいいと思います。
後藤 例えば僕が何かの書類を読んでいて個条書きを見つけて、自分で考えても3分あれば分類できそうだなと思ったとしても、そこで自分でやらずに部下に振ってしまうと……。
開米 そうですね。そこで5分だけ分類を考えさせて、自分は他のことをやっておくと。
後藤 で、5分たっていい考えが出てきたら「ありがとう!」でいいし、駄目ならそこで自分でやればいいし。
開米 そうそう、そんな感じです。そういうありがとうなら本気で言えますよね。それでだんだん後藤さんが仕事をやらずに済むようになれば。
後藤 そうなったら大成功! ですわ(笑)
というわけです。実はこの「個条書きを見つけて分類する」というのは、私が企業研修でしつこく何度も訴えている方法そのものです。こういう、ちょっとしたところから、分かりやすい説明書を書くためのプロセスを意識してみませんか?
当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」というご相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp)。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。
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著者・開米瑞浩氏が講師となって「アイデア・思考を見える化」をテーマとするセミナーを開催します。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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