では前ページでできたスライド資料を用いて、私なら「コミュニケーション能力のコツ」についてどうセミナーで話すかを考えてみましょう。
開米 「メンタル」というのはつまり、相手にリラックスして話を聞いてもらうことですよ。緊張でカチカチになってたら話通じませんからね。リラックスしてもらうためにはどんな方法がありそうですか?
聴衆 えーと……ジョークを言う?
開米 そう、その手がありますよね。ジョークとまでいかなくても、生真面目一辺倒ではない、ユーモラスな語り口にするのも効果があります。あと、メンタルでもう1つ「この人は真剣に話をしている。ごまかしてない」という印象を与えるためにはどんな方法がありそうですか?
聴衆 うーん……。
開米 よく、うそを付いている人は目が泳ぐって言いますよね。
聴衆 あ、じゃあ逆にしっかり目を見て話す、とか?
開米 それです!
といった具合です。以下この調子で、「音声・視覚」や「主張」「ロジック」「関心」「知識」など、それぞれ質問をして解答を引き出しながら話します。
対面型セミナーの場合は、こうした「質問ベースのトーク術」が使えます。聴衆も自分で考えた上で、それを整理集約して構造化するという体験を得られるので効果的です。そしてその際大事となるのが1ページ目で紹介した図(下に再掲します)のようなフレームワークです。
冒頭紹介したコミュニケーションのコツ8カ条をそのまま語ろうとすると、聴衆に考えて答を出してもらうのは少々難しいです。しかし、自分と相手という大元の構造を踏まえて「音声」「ロジック」「メンタル」のようなフレームワークを用意しておくと、フレームワークの各所をコツに関連付けて質問できるのです。
こうしたトーク術が使える場面は想像以上に多いので、手元にプレゼン資料があったらぜひ見直してみてください。自分で書いたものでも、誰かが書いたものでも構いません。
目安としては、5つ以上の個条書きが書いてあるページが狙い目です。私の経験上、5つ以上の個条書きはきちんと分類するとフレームワーク化できる場合が多いからです。
そんなわけで、5つ以上の個条書きには要注意! フレームワークをヒントに考えさせるトーク術を、ぜひ試してみてください。
当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」という相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp)。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。
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IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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