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» 2012年07月11日 11時00分 公開

説明書を書く悩み解決相談室:なぜ項目番号を付けないのですか? (2/2)

[開米瑞浩,Business Media 誠]
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項目番号を付ければシンプルに書ける

 項目番号は、文字通り「項目」に「番号」を付けたものです。個条書きするときもよく番号を付けますよね。要はそれのことです。

例:分かりやすい説明を書くための3ステップ

  1. 材料出し
  2. 構造化
  3. 収束

 こうした番号を付ければシンプルに書けるのに、それをやらずにわざわざ苦労して読みにくい文章を書いているケースが少なくないのが問題です。

 実例を見てみましょう。以下のテキストは、小売店での販売手法の1つであるセット販売について説明していますが、項目番号を使っていません。

「セット販売」説明文

2〜3月ごろの家電量販店では、進学や就職などで新生活を迎えた若者向けに、家電製品を5点程度のセットで割安に販売している。しかし、セット販売は確かに値段は安いものの、近年「不要なモノが多い」「好みの商品が選べない」などの理由でセットを品を敬遠する消費者が増えつつある。B電器ではセット品の売り上げは5年前に比べて3割以上減ったという。家電量販店側は、セット品の商品を入れ替えられるようにする、構成点数を減らす、あるいはセットをやめて単品販売に注力する、などの対策を迫られている。

 これを構造化すると下記のようになります。

 内容はおおまかに「セット販売とは何か?」「今どうなってる?」「これからどうする?」という3つの質問への答になります(ただし図中では「今どうなってる?」への答は省略してあります)。こう書くと、図中に3本引いた青い矢印のような対応関係があることに気が付くことでしょう。

 この対応関係は元の文章では明示されていません。上記のような図を書けばこれを明示するのは簡単ですが、もし図を使わず、文章のままで書くならどうすればいいでしょうか?

 ここで役に立つのが、項目番号です。

「セット販売」説明文 項目番号バージョン

2〜3月ごろの家電量販店では、進学や就職などで新生活を迎えた若者向けに、[1]家電製品を5点程度のセットで割安に販売している。しかし、セット販売は確かに[2]値段は安いものの、近年、[3]不要なモノが多い、[4]好みの商品が選べない、などの理由でセットを品を敬遠する消費者が増えつつある。B電器ではセット品の売り上げは5年前に比べて3割以上減ったという。家電量販店側は、セット品の商品を入れ替えられるようにする([4]への対策)、構成点数を減らす([3]への対策)、あるいはセットをやめて単品販売に注力する([1]の放棄)などの対策を迫られている。

 このように項目番号を使って書くと、一見数字が羅列してあって見ずらいかもしれませんが、文章中で離れた位置にある情報の間の対応関係を簡単に明示できます。

家電量販店側は、好みの商品が選べないことへの対策として、セット品の商品を入れ替えられるようにする、不要なモノが多いことへの対策として、構成点数を減らす、あるいはそもそもセット販売という方法をあきらめて単品販売に注力する、などの対策を迫られている。

くどい文章はやはり読みにくい

 と、こんなふうに書けば番号を使わなくても対応関係を明示することは一応可能です。ただし、これをすると「同じことを何度も書く」ことになるため、文章がくどく見えます。実は、「同じことを何度も書く」と、文章を書き慣れていないように見えるため、この種の書き方は「文章術」のセオリー上は推奨されていません。

 小学生に作文を書かせると、表現のレパートリーが少ないので同じフレーズを何度も使いますよね? そのため、「同じことを何度も書く」と、子供っぽい印象を与えてしまいます。ですから、同じことを何度も書くと下手な文章に見えるのです。

 ……ほら、上の段落は下手な文章に見えますよね? これが、「同じことを何度も書く」悪影響の実例です。

 そんなわけで、「美しい文章術」のセオリーとしては、「同じ表現を何度も使ってはいけない」とされています。ただしそれは「文学的に美しく、かつ、書き手の頭が良さそうに見える文章術のセオリー」であることには注意が必要です。

 文学的に美しい文章には[1][2][3]のような項目番号も通常、出てきません。そのため、項目番号を付けて文章を書く、という方法を大学までの間にトレーニングされていないことが多いのです。

 一方、私たちが普段、業務をこなすために書くビジネス文書は「必要な情報を短時間で正確に伝える」ことが最優先課題であり、文学的な美しさはどうでもいいものが大半です。そのため、ビジネス文書では個条書きや項目番号を多用しますし、「同じことを何度も書く」のも必要なら断固としてやるべきです。

 あらためて書きますが、ビジネス文書で大事なのは「必要な情報が短時間で正確に伝わること」です。書き手の頭を良さそうに見せることではないし、名文を味わってもらうことでもありません。文学作品の常識をベースにした文章術はそのままうのみにしてはいけないんですね。

項目番号はどんどん使おう!

 項目番号は、複雑な論理構造のある問題を分かりやすく書こうとするときは非常に便利な手法ですので、ぜひ使うようにしましょう。私の経験上、項目番号を付けるだけで非常に分かりやすくなるのに、番号無しでムリヤリ書こうとして非常にくどくなっている文書は実によく見かけます。

 本来は高校ぐらいまでの国語教育の中で、項目番号を使ったり図解を使ったりというライティング術が習慣化されるように指導するべきなのです。しかし、残念ながら現実の国語教育はそうした社会の要求に追い付いていません。というわけで、自分で身に付けるしかないようです。まあ、「項目番号を使う」というのは、難しい方法ではありません。それこそ番号を付けるだけですから、意識しさえすればすぐにできます。ぜひ、意識してやってみてください。


 当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp )。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。

 当記事についてのご意見ご感想ご質問等は「twitter:@kmic67」宛でも受け付けております。中には記事では書ききれない情報もあります。物足りなく思った時はぜひ「twitter:@kmic67」宛に質問を飛ばしてみてください。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』『図解 大人の「説明力!」』、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』


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