なぜ、これまでの「勉強法」は効果を上げなかったのか?すべての勉強は図でうまくいく

仕事を始めると、勉強すべきことが山のようにあります。どうせやるのなら、成果を出すための勉強法を身に付けたいですよね。そこで私が出会ったのが「図解式勉強法」です。

» 2012年09月25日 15時40分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 私は、基本的には勉強が大嫌いです。大学受験までの勉強で、もう一生分勉強したような気がしていました。しかし、社会人になってみると実際はまったくその逆だったのです。

 仕事を始めると、覚えることは山のようにあります。なおかつ、通常業務の合間という短い時間で多くのことを学習する必要がありました。学習にも、必ず費用対効果が求められます。だからこそ、勉強のための勉強ではなく、成果を出すための勉強が何よりも重要になってくるのです。そこで出会ったのが「図解式勉強法」でした。

“細切れの情報”は頭に入りにくい

 例えばこんなことはないでしょうか? ひたすらランダムに英単語を覚える、脈絡のない数字の並びをそのまま覚える、まったく知らない分野の専門用語の意味を理解する……。こうしたことが苦痛で仕方がない。

 苦痛なのは当然です。なぜなら、関連性のないものを無理やりに詰め込もうとしているからです。こうした「断片的な情報」を頭に入れようとしても、すぐに容量がいっぱいになり、受け付けてくれません。

 実は、脳の情報の出入りを見張る門番役の「海馬(かいば)」がそれを許してくれないからです。海馬は、限られた記憶容量を効率的に活用するため、断片的な情報はどんどん捨てていきます。

記憶の限界は“ここ”が決めていた!

 米国の心理学者ジョージ・ミラーは短期記憶に関する研究で、一度聞いただけで直後に再生できる記憶容量はどの程度かを調べました。その結果、人間の脳は数字や人の名前などの断片的情報を、一度に5〜9(7プラスマイナス2)個しか覚えられないということが分かったのです。

 この限界となる数は「マジカルナンバー7プラスマイナス2」として知られています。そして、これを超えた情報はどんどん捨てられてしまうのです。9個を超えるランダムな数字と言えば、ちょうど電話番号が当てはまりますね。

 断片的な情報はいくら頑張っても、「海馬」という門番が入れてくれません。さらに、無理やり入れようとすれば、元からあった情報がこぼれてしまうのです。これでは勉強がはかどるはずはありません。

断片的な情報は、いくら詰め込んでも脳の門番に阻止される

 この結果からも、一度に記憶できるランダムな情報の容量は極めて少ないことが分かります。だから体にムチ打って無理やり覚えようとしても、ムダ。しかも、この状態で新しい記憶を詰め込もうとすると、古い記憶はどんどん溢あふれ出てしまいます。こんな状況では勉強がはかどるはずはありません。

“忘れるスピード”を遅らせる法

 ドイツの心理学者エビングハウスは、一度覚えたものは時間経過とともに忘れていく現象を定量的に実験して曲線に示しました。かの有名な「エビングハウスの忘却曲線」と呼ばれるものです。

 これによれば、人は情報を記憶した後、4時間の間に半分近く忘れる。時間とともに少しずつ忘れてしまいます。よほど人間の脳というのは忘れっぽいのでしょうか、すごいスピードでの忘却です。

 しかし間隔を置いてもう一度インプットすると、記憶の定着を確実なものにできます。なぜなら、二度目、三度目と回を重ねると忘却曲線がなだらかになっていくからです。「復習が大事」と言われるゆえんですね。

 具体的には、一度目の復習を翌日、二度目の復習を1週間後、三度目を2週間後、そして最後の復習を1カ月後にやるともっとも効果的だとされています。

 注意しなければならないのは、復習する前に無理やりほかの情報を新たにインプットしないことです。異なる情報が入ると、その前に記憶されたものはさらに忘却率が高くなり、記憶効率が悪くなります。復習効果を得るには、あくまで同じ情報を間隔を置いて何度もインプットするのが重要なのです。

エビングハウスの忘却曲線。無理やり詰め込んだ情報は、1日で半分以上を忘れてしまいます。それを防ぐには、ひたすら復習が有効と言われてきました

根気の必要な反復学習は、大人には合わない

 ところで、このエビングハウスの記憶に関する実験は「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(例:rit、pek、tasなど)の記憶と再生率を調べたものでした。果たして、こんな無意味な音節を人生の中で覚える必然性が実際にあるかどうかは疑問ですよね。

 なぜなら、語学だって経済システムだって、すべての価値ある情報には「意味」というものが存在するからです。まったく無関係に独立して存在する情報など世の中にありません。そう考えたときに、果たして復習だけが万能な記憶強化の方法と言えるでしょうか?

 次回は「ひたすら反復だけではない! 効果的な学習法とは?」です。

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集中連載『すべての勉強は、「図」でうまくいく』について

『すべての勉強は、「図」でうまくいく』 『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(永田豊志・著、三笠書房・刊、本体1365円)

 連載の内容は、2012年9月28日に発売の『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(永田豊志・著、三笠書房・刊)から一部抜粋しています。

 「図解思考」シリーズ、最強フレームワーカーへの道でおなじみの著者・永田豊志が、誠 Biz.ID読者の悩みである「勉強法」にまったく新しいアプローチで切り込みました。

 勉強が苦手な人、覚えたり、まとめたりするのが苦手な人でも「図解式勉強法」を身に付けることで、理解力と記憶力が驚くほど向上! これまでの辛い、退屈な勉強法とはおさらば。新しい学習方法は、あなたに新しい人生の扉を開いてくれることでしょう。


目次

  • 第1章:「図解」を使うと、なぜ頭がよくなるか?

 これまでの学習方法がうまくいかない理由と知識を構造化する図解のメリット

  • 第2章:「図解」の基本はたった“これだけ”!

 理解力、記憶力が劇的に深まるキーワードをつなげて、まとめる方法

  • 第3章:「図解」の応用で成果が10倍アップ!

 6つの情報整理箱で学習効果が見違えるほどに

  • 第4章:まとめノートの作り方

 自分専用必勝教科書ができる

  • 第5章:実力を飛躍的に高める習慣

 プラスの循環が始まる法則

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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