子ども手当は増税だった――源泉徴収票の見方、教えます:イチから分かる確定申告(3/3 ページ)
一家の大黒柱の通信簿――。それが「源泉徴収票」である。1年間にどれくらい稼いだか、いくら納税したかを記している。この源泉徴収票を細かく見ると、分かることがあるのである。ぜひ手元の源泉徴収票をご覧いただきたい。
個人事業主の消費税を考える
消費税の話をしよう。消費税といっても5%だ10%だという話ではない。個人事業主は独立してちょっと稼ぐと消費税の申告も必要という話だ。サラリーマンの方はあまり関係ないが参考程度にお付き合いいただきたい。
消費者は1000円の製品を買うと5%上乗せして1050円を支払う。この50円の行方はどうなっているのだろうか。仮に「メーカー」→「卸業者」→「販売店(お店)」→「消費者」という流通形態で、それぞれの価格がメーカーは700円、卸業者は800円で販売したとしよう。
メーカーは700円に5%の35円を乗せ735円を請求する。卸業者は800円に5%の40円を乗せ840円を請求することになる。販売店は消費者から1050円を受け取っているが、卸業者に840円を支払うので差額は210円。200円が利益で10円が消費税分となり、10円を納税する。卸業者は840円から735円を引いた105円から5円を納税する。メーカーは35円(実際にはメーカーも材料の仕入があるがここでは無視する)を納税する。消費者が払った50円の消費税は、販売店が10円、卸業者が5円、メーカーが35円を代行して納税する仕組みだ。
現実にはそれほど単純ではなく、企業活動には仕入以外に諸々の経費が必要で、電気代にもPC購入費にも携帯代にも交通費にも消費税が上乗せされている。切手、印紙のように非課税の経費(仕入)もある。受け取った消費税額(課税売上高×(5/105))から支払った消費税額(課税仕入高×(5/105))を引いたものが納付する消費税額。さらに厳密には消費税は4%、地方消費税の1%を足して5%となっている。
手元に残る“益税”は……
では個人事業主の消費税はどうなるのか。消費税は前々年の売上高が1000万円以下の場合は免税事業者となり消費税を納める必要はない。独立してから2年間は前々年の売上がないので自動的に免税となる。免税事業者だからといって取引先に消費税を請求しないと、電気代、PC代、携帯代――と支払う経費に消費税が上乗せされているので損をしてしまう。例えば初年度の売上が1050万円、課税仕入高が315万円なら、消費税分の50万円−15万円=35万円が益税として手元に残ることになる。消費税を請求しないと、逆に15万円の損となる。こうした、消費税額の一部が事業者の手元に残る益税は……チョットうれししい。
独立した年に1000万円を越えれば3年目は消費税を納めることになる。2008年(平成20年)に売上が1000万円を越えていれば、2010年(平成22年)は消費税の納付義務があるので、2010年の課税売上高から課税仕入高を引いた額の5%(正確には5/105)を申告、納付することになる。所得税の申告は3月15日までだが、消費税は3月31日までに申告する必要がある。ずっと1000万円を越えなければ消費税は納める必要がない。
1000万円が多いか少ないかは業種による。家にこもって原稿を書く仕事で経費が100万円なら、1000万円の売上があれば充分と考えられるが、物販で1000万円の売上、仕入その他の経費が800万円だとかなり貧乏な生活となる。仕入れた物をそのまま販売する業態の場合は売上は1000万円を越える可能性が高い。
2008年に売上が1000万円を越えると、2009年の秋頃に「消費税簡易課税制度選択届出書」なるものが送られてくる(来ない場合もあるらしい)。2009年のうちに届け出をすれば簡易課税で申告をすることも可能となる。
簡易課税とは、事業の内容によって「みなし仕入率」でざっくりと消費税を決めてしまう方法だ。事業内容は5種に分類されている。
事業内容 | 事業区分 | みなし仕入率 |
---|---|---|
卸売業 | 第1種 | 90% |
小売業 | 第2種 | 80% |
製造業など | 第3種 | 70% |
そのほかの事など | 第4種 | 60% |
サービス業など | 第5種 | 50% |
計算式は、
- 売上消費税−(売上消費税×みなし仕入率)=納付消費税額
仮に小売業で非課税売上はなく課税売上が3150万円、売上消費税が150万円、みなし仕入率80%とすると、30万円が納付する消費税額となる
- 150万円−(150万円×80%)=30万円
実際の仕入消費税額が110万円の場合は原則課税だと納付消費税額は40万円になるので、簡易課税の方が得になる。逆に仕入消費税額が130万円の場合は原則課税だと納付消費税額20万円になるので、簡易課税を選択すると損をすることになる。原則課税の場合は切手、商品券、人件費など非課税の経費を細かく計算する必要がある。簡易課税は仕入の明細を無視できるので、事務作業は大幅に軽減される。どちらを選択するかは、過去の決算内容をみて判断すればいいだろう。
2008年に売上が1000万円を越え、翌年1000万円を切った場合、2010年は課税事業者となるが、2010年中に「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続」を提出すれば2011年は免税事業者に戻ることができる。
さて、次回はサラリーマンと個人事業主の節税について考えたい。
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