トップインタビュー

育児中の主婦が立ち上げた「子ども向け英語スクール」は年商7000万円に成長 教育ビジネスの勝ち組に「異色の戦い方」を聞いた目指すは上場(1/5 ページ)

» 2021年08月23日 12時44分 公開
[霜田明寛ITmedia]

 今、ひそかに注目を集める、子ども向け英語スクールがある。

 SUNNY BUNNY Language Education(東京都北区)は、もともと2006年に当時2歳の娘を育てていた羽織愛氏が立ち上げた親子英語サークルが母体だ。13年に法人化し、初年度の年商は1000万円。都内や札幌市など4校で約200人が受講し、年商は7000万円までになった。20年こそコロナ禍で初めての減収になったものの、設立から7年間、売り上げを伸ばし続ける教育ビジネスの勝ち組だ。

 入塾した生徒のほとんどが、約1年で簡単な英語を話せるようになり、小学6年時には高校卒業程度の英語力が必要とされる英検2級を取得する。講師1人に対して生徒は5人までという方針を徹底しているという。

 羽織氏自身はいわゆる英語ネイティブではなく、早期英語教育を受けていたわけではないが、日本で英語を話せる人を増やす「日本バイリンガル化計画」を掲げ、まい進している。今年は、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏率いるサポート校・ゼロ高等学院による幼児教育プロジェクト「ZERO International Preschool」のパートナーにも選ばれるなど、新たな取り組みも始めた(ホリエモンが教育ビジネスに取り組む真意 「あと何年かで“ゼロ高出身のスーパースター”が出てくる」参照)。

 設立以来、勢いを強め続ける同社だが、最初の8年間は一切広告費を使わなかったといい、これまでに使った累計広告費は「100万円に満たない」と羽織氏は語る。大手企業も進出する教育ビジネスの中で、明らかに異色の戦い方で奮闘する同社は、どのような戦略を実行してきたのか。その勝因はどこにあったのか――代表の羽織氏に聞いた。

羽織愛(はおり・あい) SUNNY BUNNY Language Education株式会社 代表取締役・ZERO International Preschool代表・NPO法人早期英語教育研究会理事長。日本の英語教育改革をライフワークとする言語教育専門家。2006年に親子向け英語サークルとして、SUNNY BUNNYを立ち上げ。2013年に法人化。2021年現在、都内に子供向け英語教室を3教室展開している。拓殖大學大学院卒業、英語教育学修士。著書に『1日5分からの英語で子育て』(すばる舎)がある(撮影:山崎裕一)

“暗黙の諦め”がまかり通っている業界

――幼児向けの英語教育というのは、大企業のライバルも多く、レッドオーシャンに思えます。端的に言って、何が他の企業と違ったと言えるのでしょうか。

 実際に、子どもたちが英語をちゃんと喋れるようになるんですよね。もちろん、色々な違いはありますが、それが最大の違いなのではと思います。

――お言葉ですが、英語スクールに通って英語が喋れるようになるのは当たり前ではないのでしょうか。

 それが違うんです。なぜか、幼児英語教育を受ける側にも「通わせても喋れるようにはならない」というような“暗黙の諦め”がまかり通ってしまっています。実際、同業者に「喋れるようにならないから儲(もう)かるのに」とくぎをさされたこともあります。

 スイミングスクールに通って泳げるようにならなかったらクレームが入ると思うんですが、10年通って喋れなくてもそうはならないのがこの業界です。私が参入してみて感じた実感として、言い方は悪いですが、幼児教育業界というのは「素人」ばかりなんです。ご自身が英語を喋れるというだけで、何の教育的プランもなく開業してしまう方もいます。

 近年、需要も高まっているので、色々な企業が集まってきていますが、皆さんよく分からないままやっている。私はもともと英語教員免許を取得した後、大学院で言語教育を学び、英語科教員免許の上位資格である専修免許も取得しています。そこからもずっと理論と実践を繰り返し、学び続けています。私が信じたやり方を持ち込み、実際に子どもたちが英語を喋れるようになったことで、評判が評判を呼び、現状に至っている――という感覚です。

SUNNY BUNNY Language Educationで使用しているテキスト
       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.