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JFEホールディングス柿木厚司社長を直撃 高品質の鉄鋼製品を安定供給できるメーカーにJFE柿木社長を直撃【前編】(2/5 ページ)

» 2021年12月24日 10時15分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

中国が輸出市場を席巻することはない

――数年前までは日本の鉄鋼は年間1億トンを生産していましたが、このレベルを維持することは難しいのでしょうか。

 JFEグループ第7次中期経営計画(21〜24年度)では、国内の鉄鋼需要が減少する中で、日本全体の年間鉄鋼生産が9000万トンという想定を置いて、JFEスチールの粗鋼生産能力は2600万トンとしています。世界で大きな変動があれば再度見直さなければなりませんが、当面は現行の計画で進めていきます。

 第6次中期経営計画までは量を重視して年間3000万トンを求めていました。当時は高付加価値品だけでなく数量確保のために汎用品も輸出していましたが、低価格の中国製品が大量に市場に出回るようになり太刀打ちできなくなりました。そこで競争力のある「勝てる領域」での生産体制にしたのが第7次中期経営計画です。内需は減っているので、日本の粗鋼生産量が年間1億トンに戻ることはもうないでしょう。

――中国の生産能力をどう見ていますか。過去には中国製の鉄鋼製品が大量に輸出され市況に大きな影響を与えたことがありましたが。

 日本の鉄鋼メーカーの内需比率は現在約5割です。世界的に見て鉄鋼の地産地消の傾向が広がっているので、輸出比率は最大でも4割になるのではないでしょうか。われわれはその中で高付加価値の製品を輸出しています。中国や韓国に対する製品の競争力を維持できれば、今の生産体制でやっていけると思います。

 中国は15、16年ころ年間で10億トンも生産して世界全体の6割を占めていました。当時は輸出奨励税により鉄鋼の輸出を促進した結果、中国製の鉄鋼製品が輸出市場に大量供給されて市況が混乱したことがありました。

 しかし最近は内需が強いことと、カーボンニュートラルの視点から大量に鉄鋼を生産し、輸出することが難しくなっています。このため、いまは税制優遇をやめています。一時的に輸出を増やすことはあっても、長期的に輸出政策を取ることは考えづらく、今後中国が継続して輸出市場を席巻することはないと思います。

――中国の鉄鋼メーカーは日本と並ぶ高品質の製品も作れるようになってきているのでしょうか。

 中国の国営鉄鋼メーカーで20年粗鋼生産量世界トップの宝武鋼鉄集団、同3位の河北鋼鉄集団は、国を挙げての努力もあって質的にかなり上がってきています。一方、一般的なメーカーはそれほどでもありません。ただ中国政府はメーカーを統合して大きなメーカーを作ろうとしていて、トップ10のうち中国メーカーが5、6社入っています。こうした会社は将来、日本メーカーにとって質的にも脅威となる存在になり得ます。

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