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» 2012年04月27日 12時00分 公開

3Dのドラマが増える? 「miptv」で分かった最新3D事情(2)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)

[芹澤隆徳,ITmedia]
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麻倉氏:これもドイツの話ですが、「ベルリン・天使の詩」などで有名なヴィム・ヴェンダース監督の「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」という3D映画があります。2009年に急逝した天才舞踊家ピナ・バウシュとヴッパタール舞踊団を描いたドキュメンタリー作品で、日本でも2月に公開されました。ピナ・バウシュの世界が3Dならではのダイナミックな映像として描かれ、3D映画が新しい方向に進んできたことが分かる作品です。

「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」公式サイト。2月25日から全国で3D上映中

麻倉氏:この映画をプロデュースしたのは、独NEUE ROAD MOVIESのエルウィン・シュミット(Erwin M. Schmidt)氏。彼は、セミナーのキーノートで、「ハリウッドから独立する時代が来た。独立系プロダクションも3Dで傑作が撮れる時代だ」と話していました。世界的に通用する3D映画といえば、これまではハリウッドが定番でしたが、現在は世界各地で3Dの傑作映画が作られるきざしがあります。シュミット氏によると、2年前のスタート時は機材もなく手作りの状態で、ヴェンダース監督は衝撃的な映像を撮影していったそうです。「ハリウッドはロジックで作る。われわれは監督の感情のおもむくまま、ダイナミックな映像を撮った」という話は面白いですね。

 今、このシュミット氏がプロデュースしているのは、ドイツ国内の10の歴史的建造物を10人の監督が3D撮影するという作品です。キーノートではその一部が公開されました。食堂のような場所を一人の女性が歩いているシーンですが、画面内にあるオブジェクトのひとつひとつに存在感とリアリティーがあり、「もっと見たい」と思わせるものでしたね。

 ハリウッドとは異なるスタイルで作品を作っているシュミット氏ですが、テレビにも期待していると話していました。「3D is ready for TV、TV is ready for 3D」(3Dはテレビのための準備ができている。テレビは3Dの準備ができている)といっていました。

――3Dの放送は、サイド・バイ・サイドが主流で、水平解像度が半分になってしまいます。何か解決策はあるのでしょうか

麻倉氏:実は欧州の放送規格を策定しているDVB(Digital Vide Broadcasting)が、“2Dと互換性のある3D映像”の放送を実現するフォーマット作成を進めるというニュースが2011年10月にありました。詳細は分かっていませんが、2D/3DともにフルHD解像度で観ることのできるフォーマットで、2012年夏までの規格化を目指すとしています。

 放送でフルHDの3D映像を流す方法としては、1つにはほかのチャンネルやインターネットを使ってサブの信号を流すといった手法が検討されています。画質面もユーザーが3D放送を十分に楽しめない理由の1つですから、これが突破できると新しい展開も期待できるのではないでしょうか。

――最後に、3D以外の番組流通についても教えてください

麻倉氏:私は、今回初めてmip tvに参加したのですが、事前に想像していたより、国際流通の動きははるかに大きいものでした。日本のテレビ番組でも、例えばテレビ朝日の「ドラえもん」や「忍者ハットリくん」がインドやスペインでは大人気です。日本では放送を終了したのに、スペイン向けに再度制作を開始したくらい人気があるそうです。

 もう1つの動きは、フォーマット輸出と呼ばれるスタイル。主にバラエティー番組の要素を売るというもので、例えば「料理の鉄人」は、米国でフォーマットビジネスとして定着しています。日本でヒットした番組のスタイルだけを提供してロイヤリティーがもらえるので、おいしいビジネスといえるでしょう。

 一方、日本のドラマはアジアではそこそこ売れているのですが、欧米ではほとんど売れていません。欧米のドラマに比べるとテンポが遅く、1回の放送時間も短いことが原因と言われています。ですから、ドラマを売るには、海外の放送局との共同制作という手法が良いのではという話でした。

 このように番組輸出では、文化の壁をどう乗り越えるかが課題です。逆に文化の壁がうまく作用していたのがアニメだったのですが、こちらも最近は制作の現地化が進んでいるそうですね。欧州は海外からの文化輸入にシビアになっていて、例えば輸入する番組はEC内からが4割、その他の地域は2割と決められています。すると、日本よりも力のあるハリウッド作品を入れるため、アニメは現地制作するというわけです。

 miptvでは、番組流通を促進するため、去年の秋にバイヤーを対象としたアンケートを行いました。放送局の番組調達担当者が、どのような番組に興味を持っているのかをアジアのプロデューサーたちに知ってほしい、と仕掛けたのです。しかし現状で成功例があるわけではなく、今後に期待です。

 そしてもう1つ。miptvで強く感じたのは、中国の勢いです。CCTVが作成したドラマやドキュメンタリーを海外向けに売り込むことはもちろん、外の放送局との共同制作にも積極的。とにかく中国人の存在が目立ちました。

 また今回のイベントでは、「mipcube」という新技術の発表もありました。これは“多面体”という意味で、デジタル配信のサービスと放送コンテンツを結びつけるというもの。思い返せば、1990年代には日本が各国の放送局にハイビジョンを訴求したことで世界的にHDが広がる指針になりました。miptvは当時、積極的にハイビジョンをプロモートしたそうです。そういう意味で、3Dにしろデジタル配信にしろ、miptv発のテレビの新しい動きが世界的に広がっているといえるでしょう。

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