3M戦略を具現化し「ゲームチェンジ」する2012年――KDDI 田中社長に聞く:新春インタビュー(4/4 ページ)
「auモメンタムの回復」を掲げ、田中孝司氏が小野寺正氏に変わってKDDIの社長に就任した2010年12月から約1年。マルチネットワーク、マルチデバイス、マルチユースの3M戦略を推進した2011年と、さらなる飛躍を目指す2012年の展望を、田中社長に聞いた。
AndroidベースのSTBで、テレビとホームWi-Fiで新サービス
―― 2012年はスマートテレビが注目されています。このようなホーム向けのビジネス展開はどのように取り組まれますか。
田中氏 今AndroidベースのSTB(セット・トップ・ボックス)を開発しています。これはCATVの業界標準にも基づいていますので、さまざまな展開ができると考えています。3Mに向けての要素はそろえつつあります。
2012年に重要になるのは、「スマートフォン」「PC」「タブレット」「テレビ」ですので、テレビも準備を進めています。
―― STBやスマートテレビの市場可能性をどのように見ていますか? 日本ではこれまで大きな成功がなかった分野ではありますが。
田中氏 (これまで成功していなかったのは)時期だけの問題で、市場は立ち上がると考えています。これからはテレビ連携のニーズが明らかに出てくると見ています。ただし、それは今まで(のSTBやテレビのビジネスとは)違うビジネスやサービスになるでしょう。
あともう1つ、我々がやろうとしているのは家庭内でのオフロードです。ここではSTBにWi-Fiを付けて、オフロードをできるようにしなければなりません。そして、STBにWi-Fiがあれば、いろいろなことができるはずです(笑)
―― Wi-Fiルーターを導入・設置し、家庭内をWi-Fi化するというのは、一般ユーザーにはとても難しい作業です。一方で、家庭内のデータトラフィックの大きさはモバイルキャリアにとって頭の痛い問題になっています。その部分がSTBで簡易化できるのであれば、オフロードの面でもメリットがありますね。
田中氏 そうですね。ご家庭でWi-Fi機器を持っている人はそれなりにいるのですが、設定や運用が難しくて使い切れていないという現実があります。この部分に力を入れることで、新しいことができると考えています。いろいろ準備していますので、期待していてください。
KDDIの本分は「他社に先駆けること」
―― 2012年はキャリア間の競争もさらに激しくなりますが、ここでKDDIはどのようにして差別化していくのでしょうか。今年のヴィジョンをお聞かせください。
田中氏 僕は合併以降10年のKDDIを見てきて、KDDIの競争優位性とは何かと考えてきました。我々がよかった時は何が奏功したのかというと、他社に先駆けて3Gを導入し、他社に先駆けてフラットレート(パケット通信料の定額制)を始めたこと。他社に先駆けてやる、ということがKDDIの本分だと思うのです。
そのような視点から今後を見ますと、マルチな世界に行くのは明らかです。3Mの世界を他社に先駆けて切り拓き、ビジネスチェンジをしていきたい。今までの(携帯キャリアの)やり方から、ビジネスモデルを変えていきたい。KDDIの考えるスマートパイプの在り方とはこうだ、ということを示したいですね。
―― これまでは「3M戦略」というビジョンだったものが、プロダクトやサービスとして具現化していくのが2012年になる、と。
田中氏 2012年に、フェイズ1〜フェイズ3まで、次々と(3M戦略の)形が出てきます。ここで他社に先駆けていきますので、ご期待ください。
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