海外で写真付きメールの送受信やWeb閲覧が可能な端末が各キャリアから登場。海外で3Gサービスが立ち上がりはじめたのも2004年。W-CDMAで先行する日本の端末メーカーにとってもチャンスが訪れた年だ。
通話だけでなく写真付きメールやWeb閲覧も海外で──。こんな使い方に対応した端末が各キャリアからリリースされた。
この分野で先駆けたのは、2003年に海外でもパケット通信を行える端末「V801SA」(2003年11月の記事参照)をリリースしたボーダフォン。4月にはシャープ製のW-CDMA/GSM端末「V801SH」を発売(4月26日の記事参照)。冬の新3G端末は、6モデルがW-CDMA/GSM端末となり、海外でそのまま使える端末の現行ラインアップは8モデルに達している(9月28日の記事参照)。
通話は111の国と地域、SMSは108の国と地域、ボーダフォンライブ!は45の国と地域で利用可能。英国、オランダ、スペインから日本にテレビ電話もかけられる。グローバルカンパニーであることのメリットが対応国の拡充に生かされた格好だ。
KDDIは5月、韓国でのパケットローミングに対応した「A5505SA」(3月17日の記事参照)を投入。順次対応国を増やす計画だ。6月には通話のみに対応した「A1305SA」(6月22日の記事参照)もリリースしている。
通話は15の国や地域で利用可能。通信方式にCDMAを採用している国のみの対応となるため、対応する国は少なめだ。A5505SAユーザーは、サイパン、グアム、ニュージーランド、香港、タイ、中国、韓国の一部エリアでCメールを受信できる。
ドコモは12月に、海外でもiモードを使えるW-CDMA/GSMのデュアルバンド端末「N900iG」を発売した(12月16日の記事参照)。
115の国や地域での音声通話とSMSの送受信、26カ国でのパケットローミング、英国および香港との間でのテレビ電話に対応。ドコモはサービス開始にあたり、20の通信事業者とパケットローミングに関する協定を結んでいる。
キャリア | 対応端末 | 通話可能な国や地域 | パケット通信可能な国や地域 |
---|---|---|---|
ドコモ | N900iG | 115 | 26 |
ボーダフォン | V801SH、V801SA、902SH、802SE、802SH、702NK、702MO、702sMO | 111 | 45 |
au | A5505SA | 15 | 1 |
ドコモが海外のiモード展開を加速している。2004年にライセンス契約を締結した国はロシア(12月17日の記事参照)、英国、イスラエル、オーストラリアの4カ国。既に商用サービスを開始した国や地域はドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、スペイン、台湾、イタリア、ギリシャ、オーストラリアと9の国や地域を数える。
国名 | 事業者名 | 国内シェア |
---|---|---|
ロシア | Mobile TeleSystems | 1位 |
英国 | mmO2 | 3位 |
イスラエル | Cellcom Israel | 1位 |
オーストラリア | Telstra | 1位 |
海外のiモード加入者は2004年6月時点で300万人を突破(7月12日の記事参照)。中でも11月に85万契約を記録した仏Bouyguesの健闘ぶりがめざましい。iモード部隊を率いるブノワ・ルヴェ氏は、「成功の秘訣はドコモを徹底的に真似たこと」と話している(12月2日の記事参照)。
海外でもW-CDMAネットワークを使った3Gサービスが立ち上がり始めた。2004年8月末時点で、世界24カ国46ネットワークのUMTS/3Gサービスが稼働。加入者は全世界で1000万人を超えた(10月25日の記事参照)。
これまで日本や欧州での展開が目立っていたが(11月25日の記事参照)、アジアでも台湾やシンガポール、香港でW-CDMAの商用サービスがスタート(12月22日)。米国ではAT&TとCingularが(10月25日の記事参照)、オーストラリアではHutchison 3G Australiaがサービスを開始している(12月14日の記事参照)。
W-CDMA端末の開発で先駆ける日本の端末メーカーにとって、世界的な普及の兆しは大きなチャンス。NECは海外向け3G端末開発について開発体制の見直しを図るとし(10月28日の記事参照)、チップセットやOSについては他社プラットフォームを採用した製品も投入すると説明。海外向けのW-CDMA端末にはQualcommやEricsson Mobile Platformのチップセットを採用すると発表した(11月30日の記事参照)。
パナソニックモバイルも、海外3Gが本格展開すると見られる2006年までに、日本で培った技術を盛り込んだ3G端末を最適なタイミングで投入するための開発体制を整える(10月26日の記事参照)。
携帯向けコンテンツ開発で先駆けた日本のコンテンツプロバイダ。海外での需要は広がる傾向にあるようだ。
12月21日のモバイル・コンテンツ・フォーラムのセミナーでは、海外向けにコンテンツ配信を行っているプロバイダが市場動向を話した(12月21日の記事参照)。
米国を拠点に携帯向けゲームの配信を手がけるJAMDAT Mobileの岩田俊郎CEOは、「日本が思っているほど海外は遅れていない。欧米が“遅い、古い”ということではない。1〜2年後に追い抜かれないとも限らない」と市場が急速に成熟していることを印象づけた(11月26日の記事参照)。
米国での成功例として挙げたのは、着メロ配信でトップブランドにのし上がった「Faith」。モノクロ液晶端末が主流で、コンテンツが立ち上がらないといわれていた3年前に布石を打っていたことが実を結んだという。
また最近の米国通信事業者の傾向について、コンテンツプロバイダの新規参入に消極的だと説明。理由はコンテンツプロバイダが増えるとマネジメントに手がかかるためだという。参入を考えるなら「現地のコンテンツプロバイダとのタイアップがベスト」(岩田氏)
海外展開を考える際に注意すべきは、日本での経験を振りかざさないことだと岩田氏。「一緒にギブアンドテイクで展開しようという姿勢が大事。日本が……、日本では……といった物言いは通用しない」(同)。海外20超の通信事業者向けにコンテンツを配信するナムコの海外事業チームリーダー、大久保元博氏も同じ考えだ。「日本のビジネスは脇に置くほうがやりやすい。郷に入れば郷に従え」(大久保氏)
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