「ウォークマンケータイ W42S」、開発陣に聞く4つの“なぜ”

» 2006年06月26日 23時09分 公開
[房野麻子(聞き手:後藤祥子),ITmedia]

 ハード、ソフト、デザイン、機能のすべてを「音楽のために」作り上げたという「ウォークマンケータイ W42S」(記事一覧参照)。開発陣の思いを聞いた第1回に引き続き、インタビューの続きをお届けする。今回はW42Sを操作して感じた疑問点を開発陣にぶつけてみた。

なぜスライドボディなのか

 W42Sは、「音楽ケータイ」として登場した「W31S」(2005年3月の記事参照)と同じスライドボディを採用する。一方、海外のウォークマンケータイにはストレートボディのものも多い(記事1記事2参照)。W42Sをスライドボディにすると決めた理由は何だったのだろうか。

Photo 左からウォークマンケータイ 「W42S」、音楽ケータイ「W31S」、海外で発売された「ウォークマンケータイ W800i」

 「1つは、ユーザーが音楽端末として評価してくれたW31Sのイメージを踏襲したため。ウォークマンという名前だけでなく、形の面でW31Sを連想させることで、“音楽の端末だ”ということを認識してもらいたかった」(商品企画担当の岡本氏)

 2つめには、常に液晶画面が露出している点を挙げた。操作すればダイレクトに情報を確認でき、端末をいちいち開け閉めする必要がない。また、スライドボディはディスプレイのスペースを大きく取れる。W42Sの場合、画面を横使いすることで、GUIやイルミネーションの組み合わせで音楽を楽しめる。これを背面液晶が小さい折りたたみ型で実現するのは難しい。

 さらにもう1つ、スライドを閉じたときと開いたときに、2つの顔を持つという点を挙げた。

 「“開けるとケータイ、閉じると音楽プレーヤー”というメリハリを付けられる。ストレートのように常に同じ顔なのではなく、2つの顔を持っている。これはスライドボディならではの魅力」(岡本氏)

Photo W31Sの経験を生かして、改良した部分もある。「スライドボディはキーのエリアが狭くなる傾向があるが、W42Sではキーの1から3の上のスペースのぎりぎりまでダイヤルキー用に確保して使い勝手を改善した」(プロダクトデザインを担当した植田氏)
Photo 上のボディとダイヤルキー部分がはっきり分かれていたW31Sと比べて、開いたときにもフォルムに一体感があるW42S。「上筐体とダイヤルキー面の段差が滑らかに続くようにしたことで、指をスムーズに動かせる」(植田氏)。ダイヤルキーは上から見るとタイル状だが、横から見ると工場の屋根のような段がある。指で触れるとキーの境目が感じられ、誤操作を防げる

Photo メールやWebを利用しているときにも、曲名や音量をチェックできる。ミュージックシャトルで曲や音量を変えたとき、FMラジオの選局操作をしたときには、ピクトエリアに約5秒間、情報が表示される

なぜ、ATRAC3の楽曲と着うたフルが混在したプレイリストを作れないのか

 W42Sは、au Music PlayerでATRAC3も聞けるようになっている。メニューの中に「M.S.Musicライブラリ」という項目があり、「全曲再生」で、着うたフルとATRAC3を一緒に聴くことができる。ATRAC3の楽曲が入ったメモリースティックDuoを挿入すると、全曲再生リストの上位に端末本体に入っている着うたフルが表示され、スクロールしていくと下の方に外部メモリ内のATRAC3楽曲が表示されるので、両方を一度に通して聴くことが可能だ。ただし、残念ながらプレイリストにATRAC3を入れることはできない。

 「保存場所に関係なくプレイリストを作成できれば」と思わずにはいられないが、それに関して岡本氏はこう説明する。

 「プレイリストは端末本体だけの話ではない。ATRAC3と着うたフルとで、まったく同じことができるようにするのは、auが提供しているPC側のソフトやサービスに、すべて対応するということ。そのためには、auのサービスやソフトに手を入れなくてはならなくなる」(岡本氏)

 「あくまでも音楽サービスの中心はLISMO」とした上で、ATRAC3の再生に対応した理由を「楽しんでもらうための間口を広げるため」と説明する。

 「ATRAC3の再生対応は、シリコンオーディオを使ってきたユーザーにも楽しんでもらうための間口を広げた、という位置付け。“CDリッピングなどで録り貯めたデータが生かせないから”という理由で使ってもらえないのは残念。iPodやウォークマンを使ってきたユーザーにもW42Sを使ってほしい」(岡本氏)

 「着うたフルには、着うたフルなりの楽しみ方がある。街を歩いていて“この音楽が欲しい”と思ったときにダウンロードして、その場で聞ける手軽さは着うたフルの魅力。一方、従来からウォークマンに親しんでいただいている方には、ATRAC3のデータを携帯でも聴く方法を提供し、それぞれの楽しみ方に対応する」(UIとソフトウェア設計を担当した村松氏)

なぜ、ピンク、ブラック、ホワイトの3色なのか

 W42Sのカラーバリエーションは、スパークピンク、ヒートブラック、プリズムホワイトの3色。「音楽の世界をよりよく表現したい」という理由で選んだ3色のコンセプトを、コンセプトデザインとグラフィック担当のリン氏に聞いた。

Photo 左からスパークピンク、ヒートブラック、プリズムホワイト

 「この3色は、色の両面性にフォーカスして決めた色。ピンクはキュートな印象が強いが、ビジュアル系の音楽などではシックなイメージでも使われるなど“キュートだけどシック”という両面性がある。ライブハウスやコンサート、楽器ではギターなどでよく使われている色でもあり、音楽の世界ではよくあるカラーリング。女性向けというわけではなく、男性にも持ってほしい。

 黒は、ロックやヒップホップといった現代的なイメージがあるが、実はクラシックやジャズの色でもあり、音楽の世界では最も伝統的なカラー。W42Sは、再生する音楽のジャンルによってイルミネーションやGUIが変化するので、その都度、印象が変わる。“ポップにもなるし、クラシックにもなる”ことにフォーカスして選んだ色。男性には抵抗なく受け入れられ、女性でも個性的な人に選ばれると思う。

 プリズムホワイトには塗料に細かい粒子を使っていて、プリズムのような輝きを放つ。ネイルアートなどに使われるようなラメではなく、粒子が細かくてもっとさりげない。暗いところでかすかに光が当たると微妙に輝くのが狙いで、ミラーボールもイメージしている。白は無難な色といわれるが、セクシーな女性やファッショナブルな男性を連想させる色でもある。もちろん“買いやすい色”という意味もあり、すべてを兼ねている」

なぜ、キーロックスイッチはどこでもかけられないのか

 ストレート型やスライドボディ型の端末では、キーの誤動作を防ぐキーロックスイッチが重要な働きをする。ドコモの「D902iS」では、待受画面以外でもキーロックをかけることができ、スライドと連動したロック解除機能が搭載されていたが、W42Sでは、スライドオープン時に、キーロックを解除する仕様にとどめた。

 「閉じたときにロックする、という考え方もあったのだが、ユーザーによっては、逆に意図しない操作になってしまうことがあると判断した。閉じたときに、それはユーザーとして本当に“もうやらない”という意味なのか、単に“開いているとじゃま”だから閉じただけなのか、区別できない。ただ、“開くということは、使う意志がある”と判断できる。そこでキーロックを解除する、という機能を今回は選んだ」(村松氏)

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