5分で分かる、2007年上半期のモバイル事情(後編)(1/3 ページ)

» 2007年09月28日 20時33分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

コンビニ、交通を中心に利用シーンが拡大──おサイフケータイ

 2007年上半期は、おサイフケータイの利用シーンが急拡大したのも大きなトピックだ。コンビニエンスストアの対応が進み、身近な場所でおサイフケータイを使えるようになった。

 3月末にドコモのiDを全店に導入したローソンは、7月中旬からQUICPay、8月下旬からEdyに対応(5月14日の記事参照)。EdyやiD、トルカへの対応を進めるファミリーマート(5月28日の記事参照)は、首都圏全店にSuicaを導入する計画だ(4月10日の記事参照)

 EdyとiDを全店に導入しているam/pmは、首都圏の店舗にPASMOを導入し、サークルKサンクスは全店がEdy決済に対応。一部店舗でSuicaの取り扱いを開始したミニストップは、関東1都6県のミニストップ約900店にSuica/PASMO決済を導入した。セブンイレブンも4月に独自の電子マネー「nanacoカード&モバイル」を導入するなど(3月28日の記事参照)、大手コンビニチェーンでおサイフケータイを利用できる環境が整った。

コンビニエンスストアの電子マネー対応(2007年9月4日時点)
店名 対応電子マネー
セブンイレブン nanaco
ローソン Edy、iD、QUICPay
ファミリーマート Edy、iD、Suica、PASMO
サークルKサンクス Edy
ミニストップ PASMO
am/pm Edy、iD、Suica、PASMO

 交通系では3月18日、関東の私鉄やバスの乗車券として利用でき、電子マネー機能も備えるPASMOがスタート(3月18日の記事参照)。同日からモバイル版にも対応した。PASMOはJR東日本の「Suica」との相互利用が可能で、首都圏の電車やバスにおサイフケータイで乗車できるようになった。

 JR各社のICカード導入も進んでおり、JR西日本が「ICOCA」、JR東海が「TOICA」を提供。2008年にはJR北海道が「Kitaca」を、2009年春にはJR九州が電子マネー機能付きのICカード乗車券(7月27日の記事参照)を導入する予定だ。2008年春にはSuica、ICOCA、TOICAの相互利用が可能になり(5月16日の記事参照)、利用できるエリアが拡大する。

 おサイフケータイによる決済への対応は、ファストフードやガソリンスタンド、スーパーマーケット、ファミリーレストランなどに広がりつつあり、さらに身近な決済手段になると予想される。ただ一方で“利用登録が難しい”“機種変更時の手続きが面倒”などといった課題も残り(記事1記事2記事3参照)、キャリアやサービスプロバイダーでの対応が望まれる。

モバイル業界のビジネスモデル、見直しの時期に

 総務省「モバイルビジネス研究会」を立ち上げ、新たなビジネスモデルの検討を開始したのも2007年上半期の大きなトピックの1つだ。

 携帯の高速化やインフラのIP化の急速な進展、固定通信と移動通信の統合、他事業領域のプレーヤーの参入など、携帯電話市場が変革期にさしかかる中、これまでのビジネスモデルを見直し、市場の活性化を図ることを目的として発足した。

 主な検討課題は(1)ネットワークや市場構造など、市場環境の変化を促す要素の検証(2)モバイルビジネスの活性化を通じた新たな市場創出策の検討(3)市場環境の変化やモバイルビジネスの活性化を通じた新たな市場送出効果の検討 の3点で、具体的にはインセンティブモデルやSIMロックの是非MVNOによる新規参入促進とその約款化が主な議題として挙がった。

 インセンティブモデルは、本来は高価な端末をユーザーが安価に手に入れられるよう導入された販売方法。通信キャリアが“販売奨励金”という名目で端末価格の一部を負担し、その負担分を利用料金で回収するというものだ。これは、ユーザーには「最新の端末を安価に入手できる」、キャリア側には「新サービスをより早く展開できる」といったメリットをもたらし、日本の携帯サービスの急速な発展に貢献した。

 しかしその一方で、同じ端末を長期間利用する人にとって不公平が生じることや、インセンティブモデルが利用料金の値下げを阻むといった問題が指摘されるようになり、市場が新規契約中心から機種変更中心に移行したことも手伝って見直しの機運が高まった。

 SIMロックは、電話番号情報が書き込まれたSIMカードを、各キャリアが自社の端末と関連づけて販売する仕組み。日本のキャリアが提供するFOMAカード(NTTドコモ)やau ICカード(au)、USIM(ソフトバンクモバイル)を異なるキャリアの端末に差し込んでも利用できないのは、この仕組みが適用されているためだ。

 日本の端末は、キャリアが対応サービスの技術仕様を策定し、端末メーカーがその仕様に沿った形で開発を行い、キャリアに納品するという流れが一般的(7月31日の記事参照)。そして販売時にキャリアが一定額を負担し、その分を通信料金で回収しているというのは前述の通りだ。SIMロックがかかっていなければ、キャリアが負担分を回収する前に他キャリアの携帯として使われる恐れがあり、これを避けるために、日本では“SIMロックがあたりまえ”という状況が続いてきた。

 このように、携帯販売に関する日本のビジネスモデルは、販売奨励金制度とSIMロック、キャリア主導の端末開発といった、日本独自の制度が複雑にからみあって構成されており、オープンなビジネス環境を構築するにはほど遠い状況だと考えた総務省が、改革に乗り出したというわけだ。

 総務省は、モバイルビジネス研究会の最終報告書案を受け、「モバイルビジネス活性化プラン」を発表。オープン化の課題として、(1)端末と通信料金の分離や販売奨励金モデルの見直し (2)SIMロックの解除などの検討を進める販売プランの見直し (3)MVNOの新規参入の促進 (4)端末/ネットワークの両面からプラットフォームの連携を検討する、市場環境整備の推進 の大きく4点を掲げている。

 なお総務省は、端末と通信の分離プラン導入については、早急に対応するようキャリアに要請しているが、SIMロック解除については、KDDIがCDMA2000 1x EV-DO、他の携帯キャリアがW-CDMAを採用するなど通信方式が異なることから段階的に検討を進め、2011年をめどに法的に義務づける考え。MVNOの促進に向けては、省内に「MVNO支援相談センター」を開設して対応にあたる。

2.5GHz帯を巡り、熾烈な争い──ブロードバンド無線通信の免許交付

 電波の周波数再編に伴い、2社の通信事業者に割り当てられることになった2.5GHz帯。2つの枠を巡り、ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・モバイル、アッカ・ネットワークスが熾烈な争いを繰り広げることになった。

 この周波数帯を利用して、ウィルコムは次世代PHS、他のキャリアはWiMAXを展開する計画で免許申請の準備を進めていたが、総務省が既存の3Gキャリアの単独参入を認めない方針を打ち出したことから事態は一変(5月15日の記事参照)。3Gキャリアの参入策として認められた、出資額3分の1以下の事業体を経由した申請、いわゆる“3分の1ルール”に則った申請の可能性を探るべく、3Gキャリアが提携策を模索し始めた(6月22日の記事参照)

 割り当て方針案が発表された当初は、アッカ・ネットワークスとウィルコムが有力と見られていたが、各キャリアが相次いで申請に向けた提携策を明らかにする中、その行方は混沌としている(9月4日の記事参照)

 免許申請の受付は9月10日に開始され、まずはKDDIが提携策を発表。京セラ、米Intel、JR東日本、大和証券グループ本社、三菱東京UFJ銀行の計6社で共同出資会社「ワイヤレスブロードバンド企画」を設立し、免許を申請する意向を明らかにした(9月18日の記事参照)

 続いてイー・アクセスとソフトバンクが、ゴールドマン・サックス、テマセク・ホールディングス、NECビッグローブ、ソネットエンタテインメント、ニフティ、フリービットとの提携を発表(9月20日の記事参照)。事業企画会社の「オープンワイヤレスネットワーク」名義で免許の申請を行うとした。9月28日には、ウィルコムが単独で申請したことを発表している(9月28日の記事参照)

 なお、ドコモはアッカ・ネットワークスと提携して申請することを明らかにしているが(8月31日の記事参照)、その他のパートナー企業については明らかにしていない。

 総務省は、10月12日まで申請を受け付け、年内にも参入2社を決める予定だ。

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