一般的な携帯電話の基地局と言えば半径数キロ圏をカバーする大規模なものだが、地下や大規模な建物の奥まった場所、ビルの谷間にある住居などでは電波が入りづらく圏外になってしまう場所もある。こうした場所をカバーする存在として期待されているのが、半径数十メートル程度を対象エリアとした「フェムトセル」と呼ばれる小型基地局だ。
Mobile World Congress 2009のパナソニック モバイルコミュニケーションズブースでは、家庭内ネットワークと連携するフェムトセルのコンセプトモデルを展示。パナソニックグループが得意とするデジタル家電と連携させることで、フェムトセルの新たな魅力を引き出そうというデモを行なった。
このフェムトセルは3G(HSDPA)通信に対応したものだが、より高速な通信が行えるLTEの利用も考慮されている。端末とフェムトセル間はHSDPAで通信するが、フェムトセルと通信事業者のコアネットワークとはブロードバンド網を介して結ばれる。当然、事業者が提供する通話や公式サイトへのアクセスといったサービスは暗号化やトンネリングを使ったセキュアな接続となるが、今回展示されたコンセプトモデルではケータイから一般サイト(勝手サイト)にアクセスする際には通信事業者のコアネットワークに接続せず、フェムトセルから直接オープンなインターネットに接続できる。こうすることで、動画ストリーミングなどのリッチコンテンツをケータイで見ても、(事業者の)コアネットワークへのトラフィックを抑えられ、回線全体への影響を下げられるという。
もう1つの特徴が、ネットワークカメラやAV家電などの家庭内機器にアクセスする機能だ。フェムトセルをハブとして無線LANやDNLAなどの家庭内ネットワークを結び、ケータイから自宅のセキュリティカメラの画像を見たり、サーバ内のビデオコンテンツを見ることができる。会場ではフェムトセル内の管理用Webサーバに各デバイスへのリンクを用意し、コンテンツを端末に表示するデモが行なわれた。
パナソニック モバイルの担当者によると「単に“小さな基地局”としてでなく、デジタル家電をつなぐハブとしてフェムトセルに新たな価値を持たせたいと思った」というのが、開発したきっかけだという。ただしこのフェムトセルはあくまでコンセプトモデルであり、商用化は未定。仮にある通信事業者が採用を決めても、その事業者がこれまで販してきたすべての端末と問題なく接続できるか試験を行なう必要があるなど、発売に向けて超えなくてはならないハードルは数多くあるという。
中でも、フェムトセルの利用が端末とフェムトセル間の通信は無料になるのか有料になるのか、どのような認証方法にするのかは通信事業者のポリシーに左右される。さらに、フェムトセルを使った場合とほかの基地局を使った場合でサービス内容や利用できる機能を分かるのであれば、フェムトセル接続に対応した端末の新規開発も必要になるという。
また認証に関しては、端末の回線とひも付けるためにフェムトセル専用のSIMカードを発行するケースも考えられ、このフェムトセルにはSIMカード用のスロットが備えられていた。また、ファームウェアの更新で機能を追加できるよう、サービス用のUSB端子も用意していた。
そのほかパナソニック モバイルブースでは、日本で発売されたNTTドコモ向けハイスペック端末の「P-01A」や厚さ9.8ミリと極薄の「P-04A」「P-05A」、ソフトバンクモバイル向けの「930P」、au向けの「P001」といった新端末を展示。また、パナソニック製デジタル家電を結ぶホームネットワークや、ノキアシーメンスネットワークと共同開発しているドコモ向けLTE基地局(2008年12月の記事参照)、パナソニック モバイルが参画するLiMo FoundationによるLiMo準拠端末、LiMoアプリケーションなどが展示された。
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