5月12日と13日の2日間、パシフィコ横浜で開催された先端通信技術のイベント「ワイヤレステクノロジーパーク2009」では、各種講演やセミナーに加えて、実用化前の技術の展示も行っていた。
展示の多くはLTEのインフラや4Gの技術、コグニティブ無線などに関わるテクニカルな展示だったが、NTTドコモのブースでは、ケータイの未来の形を垣間見ることができる展示があった。
待受画面に家族や友人のイラストとステータスが表示され、ケータイを開くたびに身近な人の状況が何となく分かる──。そんなサービスのひな形が「眺めてつながるツール」だ。この眺めてつながるツールは、一見するとはやりのインスタントメッセンジャーサービスように見えるかもしれないが、変わっている点が1つある。それは、表示する内容を、つながっている人たちが自分でアップデートするのではなく、ケータイが自動的に予測することだ。
この眺めてつながるツールは待受iアプリで、あらかじめ登録してあるユーザーのライフスタイル(社会人、フリーター、学生など)と、位置情報や履歴情報から、生活シーンのさまざまなシチュエーション(起床、就寝、在宅中、仕事中など)やコンディション(疲労度、睡眠度など)を推定する。そして、独自のユーザー行動モデルと履歴情報の統計解析によって推定を行い、約15種類のシチュエーションやコンディションを判定して、画面表示に反映する。つまり、厳密に言うと実際にユーザーがやっていることと画面の表示は一致していない場合もままあるのだが、何となくその人が今取っていそうな行動を自動で表示してくれる。
画面に登録する人とは、相互認証をする必要があり、知らない誰かが勝手に自分を登録して見ているといった状態にはならないという。また、位置情報や履歴によってシチュエーションが判定できない場合は、ユーザーにステータスの入力を促すような場合もあるそうだ。ユーザー同士で自由にメッセージをやり取りしたり、マルチキャストで全員にメッセージを送ったりするコミュニケーション機能もある。
「ケータイを開くと、近しい人たちが“ゆるく”つながっている、そんな世界を待受画面に実現できたらいいと思っています」(説明員)
実現するためには、ユーザーの位置情報や行動履歴など、ライフログ的な情報を収集する必要もあり、解決しなくてはならない問題は少なくなさそうだが、なんとなく周囲の人とつながっている安心感が欲しい人には楽しみなサービスかもしれない。
ドコモが5月11日に発表した「モバイル向けサラウンド音声伝送技術」の展示もあった。この技術は、電話会議などで、複数人で同時に通話しながら会話をする場合に、音に広がりを持たせて個々の音声を聞き取りやすくしながら、送受信する音声データは圧縮してネットワークや端末の付加は抑えるもの。ヘッドフォンを使って擬似的に音に広がりを持たせ、全員がその場にいるかのような臨場感をもたらす。
この技術の特徴は、複数の音声の中から聴覚的に重要な成分のみをネットワーク上のサーバで判別、符号化し、端末で音声復号とサラウンド化の処理を同時に行う点で、聞き手は受けた音声信号を個々に自由な位置に配置できる。デモでは最大8つの音声を、前方180度の空間に30度刻みに配置できる様子を見せていた。
この機能を利用すれば、例えば飲み会の席でテーブルの左右で違う会話が始まったときに、それぞれの話を聞き分けられるように、Aというテーマの会話をしているグループを左側に、Bというテーマの会話をしているグループを右側に配置して両方を聞き分けたり、Bをテーマとした会話の音量だけを下げて、Aの話を集中して聞いたりといったことが容易に行える。もちろん会議のように、自分の前に全員を均等に並べて会話することもできる。
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