こだわりは分からなくていい――神原氏が「PLY」に込めた“層”の意味デザイナーに聞く「PLY」(2/2 ページ)

» 2009年10月05日 20時10分 公開
[田中聡,ITmedia]
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2層目に設けた“色のルール”

photo 電通テック クリエーティブ本部 デザインセンター 鈴木部 アートディレクター 森康成氏

 PLYのボディカラーはbrown、pink、black。この3色×5層の計15色は、1000色以上を紙に出力したものの中から厳選したという。「色には正解がないので、皆が好きだと思いそうな色のエッセンスを加えながら調整しました」(神原氏)。PLYのボディカラーを担当した電通テック クリエーティブ本部 デザインセンター 鈴木部 アートディレクターの森康成氏は、「5層でまとめてbrown、pink、blackを出せるよう、層ごとに塗料を変えました」と話す。「屋内と屋外で色の見え方が変わってくるので、どちらの環境でも5層のバランスが取れるよう調整しました」(森氏)

 コンセプトモデルの段階から採用が決まっていたというbrownは「木をイメージした」ものだが、本物の木を使ったり、木目を入れたりなど、ダイレクトに木を表現したわけではない。神原氏は「色だけで木の持つ優しさを表現できないか」を考え、「木をグラフィカルにデザインする」ことを心がけた。ただし「木の雰囲気を感じてもらいたいですが、必ずしも連想してくれなくていいと思います」と、色のこだわりを押しつける意図はない。神原氏が「自分が持つならこれ」というpinkは、男性が持っても違和感のない仕上がりになった。「単色だと男性が持つのは厳しいですが、ダークブラウンが間にあることで、女性的なピンクにはなっていません」

photo pinkの2層目にはダークブラウンを採用しており、ディスプレイの裏側の一部(タブとレール周囲)もダークブラウンになっている

 これら3色をよく見ると、ある共通の特徴があることに気付く。それは、黒に近い色を2層目に入れていることだ。これは「ルールを設けないと、3色並べたときに違和感がある」(神原氏)ことに加え、“スライドのレール”が大きく関連している。2層目の裏側、つまりディスプレイ裏側には、スライド開閉に使う黒色のレールが存在する。pinkの場合、2層目はダークブラウンを入れており、ディスプレイ裏側も、タブやレールの周囲をダークブラウンにすることで溶け込ませている。ここだけ黒く塗って統一しなかったのは、「レールの裏側は塗装がはげやすいため」だという。スライドの裏側まで色を均一にそろえるのは技術的に難しかったようだ。

“こだわったことが分からないこと”がこだわり

 層も含めてPLY全体で神原氏がこだわったのが、“こだわったことが分からないこと”だ。例えば、スピーカー部には6×5個の穴が空いているが、実際のスピーカーは丸形のため、右上と右下の穴はダミーになっている。PLYのスクエアなデザインを保つため、見た目は四角形のスピーカーにした。また、各タブに印刷された文字は、「1つの文字だけがハッキリ見えることのないよう」(神原氏)、タブごとに変えているという。

 樹脂の生地と塗装をほぼ同色にしているのも特筆すべき点だ。通常、生地色は塗装色よりも薄いことが多く、キズなどで塗装がはがれると薄い生地色が顔を出してしまう。PLYは塗装がはがれても分かりにくいので、キズ1つで端末の外観を大きく損ねることはない。

 これらのさり気ないこだわりは「分からなくてもいい」と神原氏は話す。「主張したいものではないので、気付かれなかったら“うまくいった”ということです」。一見するだけで目に飛び込んでくる層やタブキーがある一方で、PLYにはさり気ない工夫も凝縮されている。ケータイの歴史、物理的な層、そしてデザインのこだわり――これら1つ1つの要素がPLYの層を形成しているといえる。

photophotophoto 各タブに印刷された文字色は、均一に見えるよう微調整している(写真=左)。外部接続端子のカバーは、開けやすいよう広範囲に溝を設けている(写真=中)。凹凸があると「色を変えないといけない場合がある」(神原氏)ため、フラットなボディにもこだわった。スピーカーの一部の穴はダミーとなっている(写真=右)
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