インタビュー
» 2010年03月11日 10時00分 公開

PCサイトからiモードサイトへの導線を短くしたい――docomo IDの狙い

NTTドコモが3月9日に発表した「docomo ID」は、OpenIDの技術をベースに、PCサイトとiモードサイトで共通のIDが利用できるようにした仕組み。PCとケータイの連携のハードルを下げ、利便性を向上させるのが目的だ。

[園部修,ITmedia]

 NTTドコモは3月9日、「docomo ID」を他社サイト(ドコモが運営していないサイト)でも利用できるように仕様を変更し、技術情報を公開した。

 docomo IDは、NTTドコモの契約者なら誰でも取得できるIDだ。iモード契約があれば簡単に取得できるほか、iモード契約がなくてもドコモショップなどで発行してもらうことができる。現在は主に料金確認や各種手続きなどが可能なドコモのサービスサイト「My docomo」や、機種変更用のケータイを手軽に購入できる「ドコモオンラインショップ」、スマートフォン向けの「iモード.net」などで利用されている。

 これを今回、OpenIDの仕組みを使って拡張し、ドコモ以外のPCサイトでもdocomo IDを使ったサービスへのログインを可能にした。docomo IDを使ったログインは、サイト側が対応に必要な設定や作業さえ済ませれば利用できる。もともとOpenIDの技術をベースに、一部ドコモ独自の仕組みを採用したものなので、対応自体もそれほど難しくなく、OpenIDに対応済みのサイトなら、本当に簡単に導入できるという。

 docomo ID導入の狙いはどこにあるのか。NTTドコモ コンシューマサービス部 ポータル戦略担当課長の笹部彰氏、コンシューマサービス部 ポータルサービス ポータル戦略担当主査の角谷行雄氏、コンシューマサービス部 ポータルサービス ポータル戦略担当の友谷浩之氏に聞いた。

最大の目的はPCサイトとiモードサイトの連携

 docomo IDには、大きく3つの特長がある。

  1. 1つのIDとパスワードで複数のサイトにログインできる
  2. PCもしくはiモードのどちらかで会員登録をすれば、両方のサービスが利用できる
  3. PCからiモードメールのアドレスに簡単にメールが送れる

 1つめの特長は、さまざまなサイトに1つの共通IDでログインできるようになること。OpenIDと同じ仕組みなので、サイト側は詳細な個人情報を取得せずとも、個人を認証することができる。ユーザー側から見ると、サイトごとにIDとパスワードを用意する必要がないため、ID忘れやパスワード忘れの心配が減る。

 2つめはPC向けサイトとiモード公式サイトとの連携が容易になること。docomo IDを利用すれば、ユーザーのiモードID(携帯電話番号とは異なるランダムな英数字)や、ユーザーがMy docomoに登録している携帯電話のUser-Agent情報(機種情報)が取得でき、PCサイトとiモードサイトのユーザー情報が簡単にひもづけられる。そのため連携サービスの提供も容易になる。

 3つめはケータイサイトのURLなどを、PCから簡単に送信できるようになること。docomo IDでログインしていれば、そのサイトから自分のiモードケータイにメールを送る場合に、メールアドレスを入力する必要がない。メールの送信はドコモのサーバを経由して行うので、サービスプロバイダはユーザーのメールアドレスを取得しなくてもメールが送れる。

Photo NTTドコモ コンシューマサービス部 ポータルサービス ポータル戦略担当の友谷浩之氏

 「iモードの有料モデルは、少額の月額課金なども可能で、成功している公式サイトも多数あります。最近はPCとケータイのサービスを連携させて展開しているサービスプロバイダーさんも多いので、iモードケータイとPCで共通のIDが利用できるようになれば、より使いやすくなるだろうと考えました」(友谷氏)

 PC向けに提供されているサービスと、ケータイ向けに提供されているサービスを連携させる取り組みは、すでに多くの情報サイトやサービスで進められている。しかし、現状ではPCとケータイで個別にユーザー登録をしてユーザー自身が自分で関連づけ作業をしたり、ケータイサイト側で取得したIDとパスワードをPCサイトで入力してひもづけたりと、手間がかかることが多い。これがサービス連携の際の壁になってしまっていたと友谷氏は指摘する。

 「多くのサービスプロバイダーさんが、PCサイトのユーザーをケータイサイトに誘導するのに苦労しているという点は以前から認識していました。QRコードを画面に表示しても、PCのディスプレイをケータイで撮影するのははばかられるようなシーンもありますし、ケータイにメールを送るにしても、いちいち手で入力する必要があると、迷惑メールを防止するために長いアドレスを設定している人などは入力が面倒な場合も考えられます。でもdocomo IDを活用していただければ、簡単にiモードケータイにメールが送れますし、PCサイトとケータイサイトで履歴を共有する、PCサイトからケータイサイトのURLを送信し、ドコモ ケータイ払いで商品を購入する、といったことも簡単にできます」(友谷氏)

 残念ながらdocomo IDの仕様変更と同時にサービスに対応したサイトはなかったが、現在音楽系サイトや情報系サイトなど、複数のサービスプロバイダーが興味を持ち、準備を進めているという。4月以降には、対応サイトも順次出てくるとのことだ。

スマートフォン対応はこれからの課題

 iモードIDを取得し、PC向けサイトのユーザー情報と連携させる、といった取り組みと聞くと、今後増加が予想される、iモードをサポートしないスマートフォンで、iモードの契約情報を有効活用するための布石か、とも考えたのだが、笹部氏は「現時点ではあくまでもPCサイトとの連携を目指したもの」と話した。

 「スマートフォンについても、対応していく必要があることは認識していますが、今回の取り組みはそこを狙ってのものではありません。まずはPC向けのサイトからケータイサイトへの導線を短くすることが目的です。とはいえ、具体的にはまだお話しできませんが、スマートフォン連携も必ず進めていきます」(笹部氏)

フィードバックを踏まえ、より便利なものに

Photo NTTドコモ コンシューマサービス部 ポータルサービス ポータル戦略担当主査の角谷行雄氏

 docomo IDは、もともと契約情報や料金情報などを確認する際に使うIDという性質上、使い捨てのIDといった感じではなく、大切に使っているユーザーが多いという。My docomoのユーザーは、現在500万人から600万人ほどで、「そのほかのサービスのユーザーもいるので、IDを持つ人はもう少し多い」(笹部氏)というが、今後docomo IDが使えるサービスが増えれば、ID保有者はさらに広がっていくことだろう。手軽にケータイと連携できる点は、大きな魅力と言える。

 ドコモとしては、今後もユーザーのニーズとサービスプロバイダーのニーズを取り入れ、サービス開始後に得られるフィードバックなども踏まえて、docomo IDの仕様を拡張していきたい考えだ。

 「ドコモは通信事業の経験やノウハウは持っていますが、PC向けのインターネットサービスの分野では専門家ではありません。ですので、まずは使ってくださるお客様やパートナー様からの話を聞いて、docomo IDをより使いやすいものにしていく必要があると思っています。こういう機能が欲しい、こうした方がいいのではないか、といったご要望もいただきたいですね」(角谷氏)

 PCとケータイを連携させ、ネットサービスをより使いやすく便利にしていく取り組みは、今後もますます増えていくことだろう。その1ステップとして、通信事業者がその仕組みを提供するdocomo IDは、注目に値するサービスであることは間違いない。

 現在、携帯電話キャリアだけでなく、固定網の通信事業者や家電メーカー、自動車メーカー、クレジットカード会社なども巻き込んで、ケータイとPCで共通のIDを活用し、さまざまな事業者のサービスをユーザーが自由に利用できるような環境を整備する研究も進められている。セキュリティの確保など、課題もあるが、安全かつ簡単にPCとケータイでシームレスに情報共有などができれば、活用の幅も広がり、ユーザーにもメリットは多い。今後この取り組みの輪がどこまで広がるのか、今から楽しみだ。

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