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» 2012年11月17日 11時55分 公開

当たり前のことをきっちりと:年度末に4000局が75Mbps対応、100Mbps/112.5Mbpsエリアも拡大――ドコモのLTE戦略 (2/2)

[田中聡,ITmedia]
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Xiエリアは“実人口カバー率”だと100%近くになる

photo 支所をカバーしていないため、一部はエリア化しているものの、人口カバー率が0%になってしまう市の例

 通信サービスがどれだけのエリアをカバーしているかを図る1つの指標として「人口カバー率」が使われている。しかしこの人口カバー率の算出方法が、通信キャリアやサービスによって異なるため、誤解を与える恐れがある。Xiの人口カバー率は市町村の役場・支所・出張所が所在する地点で通信できるかどうかをもとに算出している。一方、KDDIとソフトバンクモバイルの「4G LTE」では、500メートル四方単位のエリアでサービスが利用できるかどうかをもとに算出する“実人口カバー率”を用いている。2012年度末のカバー率はXiは75%、auの4G LTEは96%、ソフトバンクの4G LTEは91%を予定しており、この数字だけを比べればドコモが低いが、これは算出方法が違うため。岩崎氏によると、Xiエリアを実人口カバー率ベースで算出すると、「98〜100%近くになる」という。Xiエリア化されている市町村の中に、エリア化されていない役場が1つでもあると、人口カバー率は0%になってしまう。ドコモの人口カバー率は、実人口カバー率よりもエリア化の基準が厳しいわけだ。

 auやソフトバンクのLTEよりもエリアが狭いという誤解を与えないよう、ドコモも実人口カバー率を公表してほしい感もあるが、あくまで“人口カバー率”を提示していくという。「実人口カバー率の方が大きな数値になるのは事実だが、周波数帯をいただく際に、総務省には人口カバー率をもとに開設計画を示してきたので、これまでどおりの数値を出した方が良いと判断した。(人口カバー率の)定義をしっかりした上で出したい」(岩崎氏)

LTE←→3Gの“高速ハンドオーバー”は「当たり前のこと」

 尾上氏は、ドコモのLTE技術開発の取り組みを説明。2004年に“Super 3G”のコンセプトを提案してから、国内外のメーカーや通信事業者に働きかけてきた。3GPPの標準化活動にも積極的に関わり、3GPPへの提案数やLTE技術の必須特許数は通信事業者の中では最も多い。

photophotophoto LTE導入のためにドコモが果たしてきた役割
photo 2012年冬モデルは、LTEから3G、3GからLTEへの高速ハンドオーバー機能を全機種が採用している

 これまであまり表立って説明されていなかったが、快適にLTE通信をするための技術も導入している。その1つが“高速ハンドオーバー”だ。ドコモはXi開始時から、LTEから3Gへの高速ハンドオーバーを提供している。2011年夏モデルの一部機種では3GからLTEへの高速ハンドオーバーも可能になり、2012年冬モデルでは全機種が対応している(参考記事)。「W-CDMAとLTEの間は、ある意味1つのシステムなので、特別な名前は付けていない。KDDIさんは『オプティマイズド・ハンドオーバー』とうたっているが、3GPPの仲間同士だと当たり前の世界。当たり前のことをきっちりやっている」と尾上氏。また、ハンドオーバーの途中で端末に届かなかったデータを、移動先の基地局から自動で送り直すことで通信の中断を抑える“データフォワーディング”も導入している。これにより、通信速度が落ちる、YouTubeの動画再生中にフリーズする、といった事態を防げるという。

 高速ハンドオーバーにより、LTEエリア内で電話着信を受ける際に3Gへ切り替える「CSフォールバック」も速くなるのだろうか。尾上氏は「CSフォールバックするときに、いったんパケットをつかんでPS(Packet Switched)ハンドオーバーさせて3Gに落とした方が接続が速いケースがあるものの、直接は関係しない」とのこと。

 通信速度を向上させるために、LTEエリア内でハンドオーバーをする際に、3Gの電波を探すタイミングを減らし、データ通信の時間を確保する技術も導入していく。これにより、通信速度は下りは30%、上りは20%の向上が期待できるという。「すでに一部の商用ネットワークには試験的に導入している」(尾上氏)

 また、説明会では紹介されなかったが、基地局のチューニングにより、LTEエリア内で通信をしていないときはLTEの電波を無駄に探さない“通信のアイドリングストップ”は、他社同様にドコモも導入しているという。

photophoto 1つの基地局が複数の交換機と接続する「S1-Flex」という技術も取り入れており、1つの交換機が故障しても通信を継続できるようになる(写真=左)。LTEエリア内でのハンドオーバー時に、3Gの電波探索を減らすことで、スループットの向上が図れる(写真=右)

LTE-Advancedでは下り1〜3Gbpsを実現

photo 尾上誠蔵氏

 LTEは今後どのように進化していくのだろうか。ドコモはLTEを発展させた「LTE-Advanced」を2015年に実現するべく研究開発を進めている。LTE-Advancedの核となる技術が、複数の搬送波を束ねる「キャリアアグリゲーション」だ。現行のLTEでは最大20MHz幅しかまとめて利用できず、通信速度は下り最大300Mbpsだが、キャリアアグリゲーションによって最大100MHz幅をまとめて利用できるので、通信速度は1〜3Gbpsまで向上する。LTE-Advancedは既存または新たな周波数帯に導入でき、LTEとの互換性も持つ。LTE-Advanced以降については「これからもっと増えていくトラフィックをどうさばくか、新たに出てくる課題をどう解決するかを、標準化技術を開発しながら取り組んでいきたい」(尾上氏)

photophoto LTE-Advancedでは複数の搬送波を束ねるキャリアアグリゲーションにより、下り1〜3Gbpsものスループットが出るようになる
photo LTEのさらなる進化


 Xiユーザーが増えたため、ここ最近のXiはサービス開始当初ほどの通信速度が出ず、特に都心で歯がゆい想いをしている人が多いかもしれない。しかし75Mbpsのエリア化が進めば、こうした不満は徐々に解消されていくだろう。加えて、基地局のチューニングやLTEハンドオーバー時に3G電波の探索を抑える技術でさらに通信速度を向上させ、IMCSやフェムトセルを導入することで屋内のカバーエリアも増やす。LTEでは75Mbpsや100Mbpsなどの派手な部分が注目されやすいが、高速通信を支えているのは、こうした地道な努力や積み重ねてきた技術によるところが大きい。現在はユーザー数の少ないauやソフトバンクのLTEの方がXiよりも通信速度が上回るケースが多いが、長い目で見ればどうか。ドコモのさらなる“攻勢”に期待したい。

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