―― ユーザーから見えやすい部分としては、dビデオやdアニメストアなどのコンテンツサービスがありますが、この現状はいかがでしょうか。
加藤氏 とても好調です。正直、ここまで伸びるとは思わなかったのですが、dビデオは約452万契約に達しており、国内最大規模の映像配信サービスになっています。また数字はビデオほど大きくないですが、ここにきてdアニメストアも急に伸び始めた。こちらは現在82万契約ですね。どちらも解約率がとても低く、お客様にとても満足していただいています。
これらエンタテイメントコンテンツの配信サービスは、docomo IDの事業の中でもキラーサービスにしていきたいと考えています。
―― dビデオとdアニメストアは私も使っていますが、コンテンツの豊富さ・充実度やDRM処理の巧みさなど高く評価しています。一方で、これほどよいサービスなのに、スマートフォンの端末に比べると、ドコモとしての訴求が足りないとも感じるのですが。
加藤氏 そこは反省点です。(dマーケットの)サービス訴求は今年の秋以降、強化していきたいと考えています。
―― エンタテイメント以外のサービスはいかがでしょうか。
加藤氏 ヘルスケアや教育などの分野は重点的に力を入れていきます。例えば、今年6月に開始した「カラダのキモチ」は、開始後1カ月で約5万8000契約を獲得しました。これは先行するルナルナに近いサービスのように見られていますが、トータルケアを重視してコンシェルジュ的な要素を入れるなど、ドコモらしさを作ることに腐心しています。
―― ドコモは積極的にさまざまな分野・市場に参入していますが、そこで「単なる後追い」のように見られたら、あまり意味がありませんからね。Amazomや楽天が参入済みのeコマースなどは、その代表的な例と言えますが。
加藤氏 そのとおりです。先行するサービスとの違い、ドコモらしさをきちんと作らなければならない。eコマースについては、実は(2013年3月に買収した)マガシークに期待しています。ファッションを軸にして、特徴的な、ちょっと面白いことをやりますよ。
―― マガシークに限らず、ここ1年半ほどの異業種提携や関連企業買収、JV (ジョイントベンチャー)の設立はうまくいっていますね。この取り組みは今後も続くのでしょうか。
加藤氏 異業種との提携やJV設立がしやすいというのは、ドコモの企業価値が持つ強みですね。これは最大限に生かしていきます。さまざまな(提携・出資・買収など)選択肢がありますが、柔軟にやっていきます。今年後半から来年にかけても新規案件は複数ありますので、ぜひ期待していただきたい。
―― スマートフォンの製品としては、今年の夏商戦は「ツートップ戦略」を導入しましたが、その手応えはいかがでしたでしょうか。
加藤氏 手応えはあります。順調だと評価しています。6月末時点で、(ツートップの)Xperia Aは約83万台、Galaxy S4は約40万台という結果ですから、きちんと成果を出しているといえるでしょう。
―― Xperia AとGalaxy S4で差が開きすぎていませんか?
加藤氏 やはりそう思いますか(苦笑)。当初からGalaxy S4はXperia Aの半分ほどの売れ行きというのは変わっていません。実際の販売状況で見ますと、Xperia Aはフィーチャーフォンからの買い換えのお客様を中心に人気がありますね。一方、Galaxy S4はどちらかというとハイエンドユーザー向けですから、市場が一般ユーザー層の買い替え需要にシフトしている影響が数字に表れたのだと見ています。
―― 今回のツートップ戦略は、フィーチャーフォンユーザーの買い替え促進や新規契約の獲得では効果が出ています。しかし、ドコモにとってもうひとつ重要な指標である「MNPでの顧客流出抑止」という点ではいかがでしょうか。
加藤氏 現時点では、MNPでの流出抑止ではあまり成果が上げられていません。そういった数字が出ると思います。ただ夏商戦はまだ続きますので、もう少し(販売施策面で)工夫をしていこうと思っています。MNPに関する効果の評価は、もう少し様子を見ていきます。
―― 今回のツートップ戦略でもMNPの顧客流出が劇的に改善されなかった場合、iPhoneを導入されますか。
加藤氏 iPhoneに関してはこれまでと同じで、魅力的な端末だとは思っていますが、具体的なことは何も言えません。ただし、ドコモの社内にもiPhoneの導入賛成派と反対派がいて、状況は刻々と変化しています。また市場環境も変化している。(そういった変化を)相対的に見ていかなければならないと考えています。
―― ツートップ戦略は今後も維持されるのでしょうか。
加藤氏 まず、スマートフォンの新端末が以前のように数十機種も投入されることはありません。そして、各商戦期のラインアップの中から、ドコモとしてお勧め機種を選定するという仕組みは維持します。ただし、その選定する機種が毎回必ず2機種になるかというと、そうではない。各商戦期の市場特性やターゲット層に合わせて、(ドコモが選定する新製品の数は)増減することになるでしょう。枠数に関しては、固定的なものではありません。
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