“スマートフォン主流時代”にどう取り組むか――NTTドコモ 辻村副社長に聞く(前編):新春インタビュー(1/3 ページ)

» 2012年01月01日 07時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2011年は、モバイルIT業界にとっても激動の年となった。

 2008年の「iPhone日本上陸」から始まった国内スマートフォン市場の拡大は本格的な普及期へと突入し、2011年は"スマートフォン普及元年"とでもいうべき状況になった。各キャリアが投入する新製品の半分近くがスマートフォンになり、しかもモバイルIT業界のトレンドは「スマートフォンを中心に回る」ようになったことは記憶に新しい。

 モバイルIT業界の裾野が拡大しはじめたのも、2011年の特長だった。従来のBtoB市場だけでなく、BtoBtoC市場でタブレット端末や通信モジュールの活用が進み、通信キャリア自身が電子書籍や電子教科書、自転車シェアリング、放送事業に参入するといった動きも顕著になってきた。モバイルITの技術・サービスを活用した周辺領域のビジネスも広がりつつある。

 そして、年が明けて2012年。

 モバイルIT市場全体の成長と発展はどのようになるのか。また、今年の注目市場やビジネスはどのようなものか。新春特別インタビューとして、NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏に話を聞いた。

本格普及期の到来により、サポート体制の重要性が増す

――(聞き手 : 神尾寿) まずは昨年を振り返って、2011年をどのように評価されているか。この点をお聞かせください。

Photo NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏

辻村清行氏 一言で言えば、「スマートフォン時代が本格的に始まった」ということになるのだろうと思います。ドコモの近況でも、2011年度はスマートフォンの販売台数を850万台と計画しています。これは年間2000万台強の(ドコモの)総販売台数のうちの850万台ですので、スマートフォンの販売比率は約4割強になっている計算です。

―― 販売現場でも、昨年はスマートフォンの勢いが顕著でした。

辻村氏 ええ。ドコモショップを見ても、ほとんどの人が「スマートフォンはありますか?」と買いに来ていただいています。なかにはスマートフォンという言葉をご存じないのに、手でジェスチャーをして「こういうの(タッチパネルで操作するスマートフォン)をください」と買って行かれる人もいます。

―― PCを持たず、スマートフォンのことに詳しくない人までスマートフォンを買い始めましたね。

辻村氏 そういう意味でも、2011年はスマートフォンの本格普及が始まったのだと思います。

―― これまでスマートフォンは主に都市部の家電量販店を主軸に売れていて、ユーザーもある程度のリテラシーを持った方が中心でした。しかし最近は、ドコモショップでもスマートフォンへの移行の動きが現れているのでしょうか。

辻村氏 はい。確実に出てきています。我々が想定していた以上のペースで、スマートフォン化が進んでいます。

 しかし、このスマートフォン化の流れで課題も見えてきています。その筆頭になるのが、“ドコモショップでの接客時間が長くなっている”ということですね。フィーチャーフォンの場合にはお客様がすでに使い勝手に慣れていらっしゃいますが、フィーチャーフォンからスマートフォンへの買い換えでは使い勝手がまったく違います。ですから、初めてスマートフォンを購入するお客様には初期セットアップといった作業をお手伝いさせていただかなければなりません。結果として、接客時間が長くなっており、お客様をお待たせしてしまっています。

―― 購入時および購入直後のサポート問題は、2011年に顕在化した大きな課題ですね。特にドコモショップなどキャリアショップでは、初心者に対するサポートが重要になっています。手厚いサポートでお客様に安心していただきつつ、待ち時間を減らすという難しいオペレーションが求められます。

辻村氏 ドコモショップの業務フローを改善する取り組みはすでに始めています。ここでの基本的な考え方としては、顧客管理システムを用いる(新規契約や端末の買い換えなど)「契約手続き」の部分と、スマートフォンの初期セットアップやアプリの導入支援といった「初期利用サポート」の部分を切り分けていくというものです。全体的な業務改善を行い、しっかりとしたサポート体制を構築しながら、お客様をできるだけお待たせしないお店(ドコモショップ)作りをしていきます。

―― ドコモショップなどキャリアショップの体制強化は、今年はさらに重要になりますね。私は2012年はキャリアの総合力が問われる年だと考えているのですが、その中でも、幅広いお客様の「スマートフォンシフト」に対応するためのキャリアショップ強化はとても重要なポイントです。

辻村氏 2011年度の段階だけでも約4割のお客様がスマートフォンを購入されるわけですから、(キャリアショップの)サポート力が重要になるのは間違いありません。すでにスマートフォンの知識がほとんどない人までスマートフォンをご購入いただくようになっていますので、そういったお客様をきちんとケアするのは重要な課題です。

au/ソフトバンクのiPhone 4SにXiで対抗する

―― 直近では2012年春商戦が始まるわけですが、ここの展望についてもお聞かせください。

Photo

辻村氏 すでに発表済みの冬春商戦ラインアップは全体の半分以上がスマートフォンになっているわけですけれども、この中の4機種がXi対応です。春商戦では、このXiを強く訴求していきます。

―― 冬春商戦ラインアップでは3GのFOMAのみに対応したWithシリーズが用意されています。当初はこのWithシリーズがボリュームを狙う一般市場向けであり、Xiは一部のハイエンド層向けかと見ていたのですが、そうではない、と。

辻村氏 (2011年度の末となる)今度の春商戦で、スマートフォンの販売台数は累計で1000万台を超えます。約6000万人いるドコモユーザー全体の約6分の1がスマートフォンに移行するわけです。その点では、エントリー層向けのWithシリーズは重要です。

 しかし、その一方で、この冬商戦でXi対応スマートフォンを販売してみて、非常によい手応えを感じました。私自身、すでにXi対応スマートフォンを使っていますが、その感覚は固定通信でADSLからFTTHに移行したくらい快適なのです。Xiが持つこの快適さは、ドコモの大きな競争優位性になると考えています。

―― モバイルIT業界にとって、春商戦は多くの契約者が動く大商戦期。ここでドコモの競争優位性を最大化するためにも、“Xiに軸足を置く”わけですね。

辻村氏 我々にとって目下のライバルは、(KDDIとソフトバンクモバイルが販売する)Appleの「iPhone 4S」です。iPhoneはとてもブランド力が強く、それに対抗していかなければなりません。この対iPhone 4Sで考えた時の我々の強い競争力になるのが、Xiということになるでしょう。

―― なるほど。私自身、iPhone 4SとXi対応のAndroidスマートフォンの両方を使っていますが、スマートフォンの素地としてはiPhoneが優れている一方で、インフラ部分の性能や競争力ではXiがずば抜けていると評価しています。キャリア間の競争という観点では、ドコモがXi対応機の訴求を強化するのは正しい戦略と言えますね。

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