教育のIT化を再考する(2)小寺信良「ケータイの力学」

» 2014年02月17日 21時20分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 前回は教科書や教材の電子化の前に、ノートをIT化すべきという提案をした。かなりの反対論が出るのではないかと覚悟していたのだが、意外にすんなり納得した人が多かったようだ。ただ、タブレットでは手書きによる文字書きができないと思っている人も多いようで、手書きがなくなることを懸念する声があった。この点もふまえて、もうすこし具体的なイメージを検証してみよう。

 iOSやAndroidのタブレットでは、文字入力に画面上のキーボードを使うのが標準ではあるが、アプリによっては手書きでの文字書きに対応したものもある。例えば前回もご紹介したMetaMojiの「Note Anytime」では、画面キーボードを使った文字入力もできるが、手書きによる記述を書き込んだ後でも選択して移動やコピーができる。またいくつかの記述をグループ化して、移動、拡大、縮小することができる。

photo 手書き文字もベクトル化して編集できるNote Anytime

 ノートにペンで書いた方が速いだろうというなら、確かにそうだ。だが大量に早く文字を書き込むようなやり方が、勉強法として正しいのかは疑問だ。それよりも、書くだけ書いた後にサイズを変えたり位置を変えたりして整理できてほうが、復習という意味では効果が高いだろう。

 またNote Anytimeはクラウドサービスと連動しており、同一アカウントなら別の端末で開くことができる。これは、タブレットが誰のものか、というところと深い関係がある。例えば現在iPadを導入する学校も増えているが、これは協力大学や自治体の予算で導入しているため、管理は学校側が行なう。つまり生徒個人のものではないため、授業が終わったら学校に置いて帰る事になる。

 普通なら家庭学習ができなくなってしまうが、家庭では別のマシンで開いて、今日とったノートの整理をしながらもう一回頭に入れるという学習が可能だ。iOS以外にもAndroid、Windows 8版があるので、家庭にあるいずれかの端末で開けばいい。

 Microsoftの「Microsoft OneNote」も、似たような機能を持っている。こちらはOfficeのライセンスも付いているWindows PCならプリインストールされているし、iOS版、Android版もあり、SkyDrive経由で同期もできる。表組みなども使えるので、奇麗にまとめるには便利かもしれない。ただ手書きで文字を書くことはあまり前提になっておらず、図を書く機能を使って字を書くのみで、書いた後の編集機能が弱い。

photo iPad版MindPreviewは、プレゼンテーションツールにもなる

 調べ学習をしたり、考えをまとめるときには、Mind Map系のアプリが便利だ。これは各OS共通のアプリはないようだが、「FreeMind」というフリーのマインドマップが広く普及しており、このファイルフォーマットが事実上の互換フォーマットになっている。WindowsならそのままFreeMindを使ってもいいし、筆者は「XMind」というアプリをいつも使っている。iOSなら「MindPreview」というアプリがDropboxにFreeMind形式で書き出す機能があり、Androidでは「MindJet」が同じような機能を持っている。MindJetはiOS版もある。

端末論の終わり

 学校に導入する端末として何が適当なのかという議論は、いまだ決着が着かない。学校単位、地域単位で生徒1人1人にとなると、それなりにまとまった数になるため、大きな予算が必要だ。

 これまで学校への端末導入では、既存の電子教材との互換性を考えて、Windows PCかWindowsタブレットの導入が前提となるケースも過去にあった。その一方で、教育現場からはiPadが一番使いやすいという声もある。Andoridの導入率はそれほど高まってはいないが、端末の価格が一番安いのは間違いない。大量導入でのコストを考えると、ひとつの選択肢ではあるだろう。

 だがノートとして使う端末なら、利用するアプリがクロスプラットフォーム対応しているわけだから、端末はどれでもいいという事になる。さらに言えば、タブレットのサイズもどれでもいいという事になる。もちろん画面が大きい方が書きやすいだろうから、10インチ前後が基準にはなるだろうが、少なくとも全員が同じでなければならないという縛りは消えることになる。

 これは、タブレットは各家庭で用意するという流れにも繋げやすいのではないだろうか。経済的に厳しい家庭もあるだろうから、補助金などの手当は必要だろう。あるいはそういう家庭向けに、なんらかの標準端末を学校や自治体から貸与ということも考えられる。ただそれでも、学生全員分の端末を丸抱えするよりは低予算で済むはずだ。

 もちろん実際の運用となれば、授業中にゲーム立ち上げて遊ばないようにさせるとか、LINE大会が始まらないかといった懸念は当然あるだろうし、それをカバーするための何らかの仕掛けも必要になるだろう。学校へのケータイ持ち込みが禁止となった懸念が、そのまま当てはまるわけである。

 ただタブレットは基本的にWi-Fiでネットに繋がるものであり、学校側のルーターでパケットフィルタリングを設定すれば、制御は可能ではないかと思われる。もちろんタブレットにはWAN対応モデルもあるが、それは認めないといった対応は必要だろう。あるいはノートを取るだけなら授業中はネットに繋がず、ローカルで動かすのみという運用でも対応できる。

 日本はすでに、教科書の電子化からは完全に世界から出遅れている。文科省の計画通り2020年頃からの全面導入ということであれば、その間に先進国で紙の教科書を使っているのは日本ぐらいになっているかもしれない。それならば自分で書く、作るといった方向でIT化を強化すれば、世界のどこにもないユニークな教育が実現できるはずである。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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